Nothing Phone(3a)が発売されてから数か月が経ちました。7月には新たなフラッグシップ機Nothing Phone (3)も登場し、国内販売が待たれる中ではありますが、実売価格5万円台というコストパフォーマンスの高さから、Phone(3a)はいまなお大きな注目を集めています。

本記事では、新搭載されたAIによる情報整理機能と、前世代機から大幅に進化したカメラ性能に注目し、日常使用の視点からその実力を徹底レビューします。
ユニークなデザインと独自UIは従来モデルを踏襲
まずは、外観や基本スペックを簡単におさらいしましょう。
- 外観&Glyphインターフェース
Nothingのスマホといえば、やはりその独特なデザイン性が特徴です。前世代のNothing Phone(2a)では、背面パネルにプラスチックが採用されていましたが、Phone(3a)ではガラス素材に変更されて、高級感が一段と増しました。
個人的には、付属のSIMピンもNothingの世界観に沿ったデザインに統一されている点に好感を持ちました。

そして、Nothing Phoneの代名詞と言えるのが、背面のGlyphインターフェースです。カメラ周囲に配置されたライトと音の組み合わせにより、着信や通知、音量の視覚的フィードバックなどを担います。
設定すれば、再生中の音楽のビートに合わせてライトが点滅するなど、遊び心も満載です。

しかし、正直なところ、Glyphインターフェースを日常的に活用する機会は限られていると感じました。そもそも、スマホを表向きに置いていれば通知が視覚的に見えるため、背面の光による通知が必須とは言えません。
最新機種であるNothing Phone (3)で同インターフェースは「Glyph Pixel Matrix」に刷新されたものの、少し前までは廃止の噂が根強く流れていました。Nothing製スマートフォンの大きな特徴ではあるものの、今後どうなるかは引き続き注目していきたいところです。
- Nothing OS

また、Nothing Phoneのもう一つの魅力が、独自UI「Nothing OS」です。全体的にシンプルかつ洗練された見た目で、通常のAndroidとは一線を画すデザインに変更できます。
しかし、操作感も大きく違うかといえばそうではありません。ベースはあくまでもAndroidなので、Androidユーザーなら直感的に操作できるはずです。
上の写真のとおり、初期状態ではアプリ名が表示されず戸惑いましたが、それもすぐに慣れました。落ち着いた色彩は、毎日使う道具として心地よく感じられます。
- スペックと2aからの進化点
基本スペックは以下のとおりです。
ディスプレイ | 6.77インチ フレキシブルAMOLED、解像度 1080×2392、 リフレッシュレート 120Hz、最大輝度 3000ニト |
プロセッサー | Qualcomm Snapdragon 7s Gen 3 |
メモリー / ストレージ | 8GB/128GBまたは12GB/256GB |
バッテリー | 5000mAh、50W充電(56分でフル充電) |
リアカメラ | 50MP(メイン)+ 50MP(望遠)+ 8MP(ウルトラワイド) |
フロントカメラ | 32MP |
OS | Nothing OS 3(Android 15ベース)、 3年間のOSアップデート、6年間のセキュリティパッチ |
防塵・防水 | IP64 |
サイズ / 重量 | 163.52×77.5×8.35mm / 201g |
その他の特徴 | Essential Space(AIによるコンテンツ整理)、 RAM Booster(最大20GBまで拡張可能) |
Snapdragon 7s Gen 3を搭載し、前モデルのMediaTek Dimensity 7200 Proから確実な進化を遂げています。最新フラッグシップと比べると性能は控えめですが、日常用途や軽いゲームなら快適に使えます。
また、ディスプレイの最大輝度が1300ニトから3000ニトへ大幅アップしたのもポイント。明るい屋外でも視認性が大幅に向上しました。
そして、Phone(2a)から進化したポイントで特に注目したいのが、新搭載のAI機能「Essential Space」と、カメラ性能です。Phone(3a)の個性を際立たせるこの2点を深堀りしてみましょう。
発展途上ながら可能性を感じるAI機能

Nothing Phone (3a)には「Essential Space」というAI情報整理機能が搭載されました。これは、メモやリマインダー、スクリーンショットなどを一括管理できるデジタルノートのような存在です。
これにアクセスするための物理ボタン「Essential Key」も本機から新たに加わりました。
右側面に配置されたこのボタンは、1回押すとスクリーンショット、2回押すと蓄積した情報の表示、そして長押しをするとAIによる音声認識が起動します。
情報の蓄積や整理という機能に目新しさは感じられませんが、それを“AIが自動で処理してくれる”点が、「Essential Space」の強みです。
PDF文書をキャプチャすれば自動で要点を抽出できるほか、写真なら画像の内容を分析して概要を表示してくれます。
そして、特に面白いと感じたのが、音声認識による情報整理です。
例えば「今日、卵と牛乳とチーズを買うのを忘れない」と話しかけると、AIがその音声を認識し、自動でTodoリストに追加してくれます。

未来を感じさせる興味深いサービスですが、現状、これらの機能を使うためにはアーリーアクセス登録が必要で、機能も発展途上なことは要注意です。
日本語認識の精度は不十分で、たとえば「請求書」が「成球症状」などと認識される例もあり、現状では実用にやや難があるというのが正直なところです。
カメラはトリプル化。望遠の描写が大幅進化
もう一つの主要進化ポイントはカメラ周りです。まず、Phone(3a)とPhone(2a)のカメラの比較を見てみましょう。
Nothing Phone(3a) | Nothing Phone(2a) | |
メインカメラ | 50MP、f/1.88 | 50MP、f/1.88 |
望遠カメラ | 50MP、f/2.0 | なし |
ウルトラワイドカメラ | 8MP、120º FOV | 50MP、114º FOV |
フロントカメラ | 32MP | 32MP |
ズーム性能 | 2倍光学ズーム 4倍インセンサーズーム 30倍ウルトラズーム | 10倍デジタルズーム |
本機から新たに望遠レンズを搭載したことで、ズーム撮影の幅が大きく広がりました。2倍の光学ズームは画質劣化がなく、デジタルズームは最大30倍まで対応しています。
なお、ウルトラワイドカメラは50MPから8MPへダウングレードされたものの、それでも画質面では十分実用的です。
それでは、作例で実際の仕上がりを確認してみましょう。なお、本機にはTrueLensエンジン 3というAI画像処理エンジンが搭載されており、リアルタイムで画質や明るさを調整してくれます。
そのため、以下の作例では細かな設定などは一切行わずに、シャッターを切るだけでどれだけ綺麗に撮影できるかを検証していきます。
・広角
下の写真は、1倍の画角で撮影をしたものです。焦点距離は24mmで十分広めの画角ですが、ビルの上部は収まっていません。

同じ位置から0.6倍、焦点距離15mmで撮影すると以下のようになります。若干の歪みはありますが、この広さで撮影できるとさまざまな局面で便利です。前述のとおり8MPですが、十分な画質です。

・望遠
続いて、3aの目玉である望遠側の画角です。まず、2倍の50mmで撮影したものが下の写真。こちらは光学ズームなので劣化はありません。

5倍120mmにすると以下のとおりです。デジタルズームでも大きな劣化は感じられず、補正もほとんど目立ちません。大体10倍(240mm)くらいまでは、十分満足できる画質という印象です。

一方、最大の30倍(700mm)になるとさすがに描写が甘くなります。以下の写真を見ると補正が強すぎて踏切棒がイラストのようになっていることがわかります。

また、同じ30倍でビルの屋上を写してみました。ここまで拡大できることは驚きですが、画質を見ると実用的とは言えません。30倍ズームはあくまでも“ロマン枠”と捉えたほうがよいでしょう。

新搭載の望遠レンズは、かなり遊べる印象です。もちろん、一眼レフやハイエンドスマホの望遠レンズと比較するものではありませんが、ミドルレンジスマホで最大30倍の望遠撮影を楽しめるのは大きな魅力といえます。
・ポートレートモード
次に、ポートレートモードで食べ物の写真を撮影してみました。細部がよく描写されていて、後ろの軽いボケ具合もいい感じ。一切設定をせずにこんな写真が撮影できれば十分だと思えました。

・夜間モード
暗所での撮影はTrueLensエンジン 3が力を発揮するポイントです。まず、ある程度街灯がある場所で建物を撮影してみました。
ブレもなく、かなり明るく撮影できています。一方、左の照明付近のフレアがやや強く出ているのは気になるポイントです。

暗所に強そうなので、より暗い場所で撮影してみることにしました。撮影場所は、足元に気をつけなければいけないほどの暗さでしたが、十分明るく写っています。補正により空の色が若干不自然とも思えますが、真っ暗な中でブレもなくこの写真が撮れるのはとても便利です。

Nothing Phone(3a)は「撮る楽しさを提供するスマホ」
Nothing Phone(3a)は、2aから全体的にスペックアップしていますが、特にカメラ周りの機能の進化が著しい一台です。
何よりも楽しいのが新搭載の望遠レンズ。上記のとおり、最大倍率の30倍はロマン枠ですが、これだけ幅広い画角で撮影できれば、さまざまな局面で役立ちそうです。
なお、洗練されたUIはデフォルトのカメラアプリでも発揮されていて、例えばフィルタを選ぶ画面一つとってもおしゃれに仕上がっているのも好印象でした。

カメラアプリで唯一残念なポイントは、シャッター音の大きさ。静かな場所での撮影に支障があるレベルなので、これはアップデートに期待したいところです。
もう一つの進化ポイントである「Essential Space」は、未来の片鱗というレベルではあるものの、その方向性には可能性を感じます。この機能が日本語でも高精度で動作するようになれば、スマホの使い方そのものが変わるかもしれません。
実売価格5万円台でこれだけのデザイン性と機能をバランスよく詰め込んだNothing Phone (3a)。7月にはフラッグシップ機の発表も予告されていますが、手頃な価格のミドルレンジスマホを検討している人、特に安価なスマホでもカメラにこだわりたい人には、ぜひ選択肢に入れてほしい一台です。
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