Vol.154-1
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はGoogleの新たなスマホ「Pixel 10」の話題。AIを用いた機能を大幅に強化したというが、便利に使える点、そして他社スマホとの差を探る。
今月の注目アイテム
Google Pixel 10シリーズ
12万8900円~(Google Storeでの価格)

外見はほぼ同じも中身は大きく進化
8月28日、Googleは、日本で同社製スマホ「Pixel 10」シリーズを発売した。Pixel 10には4モデルあるが、今回発売されたのは二つ折り型の「Pixel 10 Pro Fold」を除く3種で、主軸製品は出揃ったことになる。
昨年モデルと異なり、今年のPixel 10はデザイン面での変化がほとんどない。若干カメラまわりのサイズが変わっていて、Pixel 9向けのケースがすべて使えるわけではない点に留意は必要だが、ざっくりと言えば「カラバリ以外はほぼ同じ形」と思って良い。
外見こそほぼ同じだが、Pixel 10は前モデルから大きく進化している。それも、単純に「CPUが速くなった」「カメラの画素数が上がった」という話とは違う。AIを軸にした機能が多数追加された点が大きな変化である。
例えば通話。英語などの言語を話す人と通話するために、通話音声の自動翻訳機能が搭載されている。Pixel 10に搭載される機能は単なる翻訳ではなく、自分の声を再現した音声で相手に伝える「マイボイス通訳」になっている。実際聞いてみると、自分の声で英語やスペイン語で話しているのが聞こえて面白い。
通話中に役立つもうひとつの機能が「マジックサジェスト」。こちらは、通話中の電話番号に関係するメールやメッセージをスマホ内から検索し、画面に表示してくれる機能。ホテルに予約情報を確認する場合、メールで予約内容を受信していると、そのメールや関連情報が「通話している画面」に表示されるようになっている。
どちらも、Pixel 10が使っている新しいプロセッサーである「Tensor G5」によるAI処理性能を活用したものだ。“AI処理を強化することで、クラウドに依存せず、プライバシーを守りながら素早く処理が行えるから実現できている”と同社は説明する。
機能で先行して差別化を図る戦略
AIの強化はカメラにも表れている。Pixel 9では8倍、9 Proでは30倍までだったデジタルズームが、Pixel 10では20倍に、Pixel 10 Proでは100倍に性能アップしている。どちらも、新たに生成AIで使う「拡散モデル」を使い、Tensor G5で画像処理をするため可能になったものだ。
ただ、結果としてPixel 10シリーズは“他のスマホと比べづらい製品”になっている。
まず、Tensor G5は“性能がアップした”とGoogleは言うものの、Qualcommなどのライバル製品に比べ、速度のベンチマークは遅い。特にグラフィックについては、他社のハイエンド機に比べると半分以下の性能しかない。同社が言うAI性能も、現状ベンチマークソフトではチェックが難しく、差が明確でない。
だが、Pixel 10シリーズが「良いAI機能を持つ」のは間違いない。Googleは機能で先行し、それを差別化の要因にしようとしているのだ。
Googleの狙いはどこにあるのか? AI機能に課題はないのか? そうした部分は次回以降で解説していく。
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