Vol.154-3
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はGoogleの新たなスマホ「Pixel 10」の話題。AIを用いた機能を大幅に強化したというが、便利に使える点、そして他社スマホとの差を探る。
今月の注目アイテム
Google Pixel 10シリーズ
12万8900円~(Google Storeでの価格)

Googleは自社のスマーフォン「Pixel」向けに自社設計プロセッサー「Tensor G」シリーズを採用している。今年のハイエンドモデルである「Tensor G5」では、製造委託先をTSMCに変えた。
最大の狙いは消費電力低減だ。
スマホへの不満点はバッテリー動作時間に集中している。AIの利用が増えると、単純なアプリ動作とは異なる「目に見えない処理」が増え、消費電力は増していく。現状はまだ、特定の仕事をさせた時に負荷が高まる程度だが、今後は“AIが利用者のためにデータを解析し続ける”ような処理も増えていくだろう。そのなかで不満が高まらないようにするには、これまで以上に消費電力を減らす必要が出てくる。
Googleが公開しているスペックでは、Pixel 9ではバッテリー動作時間を「24時間以上」としていた。だがPixel 10では、それが「30時間以上」になった。実使用ではここまでの差にならないかもしれないが、大きな進化であるのは間違いない。処理性能を上げた上でバッテリー動作時間を伸ばしているのは、バッテリー搭載量の改善に加え、消費電力低減の効果が大きい。
一方で、課題はGPUだ。
Tensor G5では採用しているGPUコアは、G4までで採用していたARM製の「Mali」をベースとしたものから、Imagination Technologies製の「PowerVR」ベースに変わった。そもそもPixelは、ゲーム向けのGPU性能にはこだわらない設計であり、他社ハイエンドスマホに比べて性能が劣る。それがPixel 10では、さらに差が開いた。これはGPUの性能が低いからというより、OSを含めたソフトウェアの最適化が進んでいないため……とも考えられる。
どちらにしろ、AppleやQualcommのプロセッサーがGPU性能を上げているなかで、Googleは明確に違う路線を継続している。少なくとも、グラフィックに凝ったゲームを多くプレイする人に、Pixelは向いていない。
プロセッサーの中で強化されたのもAI処理を行うTPU。こちらは最大6割の強化とされており、Appleなどのプロセッサーより強化の幅が広い。Googleはこれを生かしてAI機能を作っていると主張しており、事実、多数の機能が新たに搭載された。
ただしGoogleの場合、AI機能は“クラウドとオンデバイスの組み合わせ”で実現している。すべての処理をPixel内のプロセッサーに依存しているわけではない。そのため、Pixel 10用の機能として発表されたものであっても、後日、これまでのPixelシリーズでも、ソフトウェアアップデートで利用可能になる場合が少なくない。“新機種でしか使えない”ものが明確でないことは、Pixelを選ぶ上で戸惑う点だ。
Pixel 10シリーズだけに限定されるであろう機能としては、カメラ関係の機能がある。Pixel 10 Proシリーズで採用された「100倍Pro Resズーム」は、AIとカメラ用の処理系であるISP強化のセットで実現されており、過去機種への搭載は難しい。
では、他のAI機能はどう考えればいいのだろうか? その点は次回のウェブ版で解説する。
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