Vol.155-3
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はメタのスマートグラスについて触れる。過去何度か登場しては普及せずに消えたスマートグラスが多いなか、メタの取る普及への戦略は何か。
今月の注目アイテム
メタ
Meta Ray-Ban Display
799ドル(約12万3000円※。日本での発売は未定)
※1ドル=約154円で換算(2025年10月31日現在)

多数の企業がAIに関連する機器を作り始めている。スマートフォンが定着したいま、その次に来る製品を皆が探している……という事情はあるだろう。
スマートグラスなどの製品がスマホを代替するものになるか、というと正直難しい部分はある。全員が使うスマホに対し、スマートグラスは“メガネをかけていない人”に使ってもらうのが難しい。その上でどこまで役に立つものを作れるか、というのがポイントになってくる。
それでも、メタのAIグラス群は、現状でヒットしているスマートグラスの最有力候補ではある。
同じような製品として「ヘッドマウントディスプレイ(HMD)」タイプのものがある。各社はAIグラス・スマートグラスに注力しており、没入的な体験に強いHMDタイプに及び腰になっている印象を受ける人は多そうだ。
メタの「Meta Quest」やアップルの「Apple Vision Pro」があり、先日グーグルも、サムスンと組んで「Galaxy XR」をアメリカと韓国で発売した。だが、この種の製品は後ろ向きな報道が目立つ。メタは今年Questシリーズを発売しなかった。Vision ProはM5版が発売されたものの、デザインや価格に変更はなかった。Galaxy XRについても、Vision Proより安価ではあるが、1800ドル(約28万円※)と高価であり、出荷台数自体も多くはないようだ。
※1ドル=約154円で換算(2025年10月31日現在)
では、本当にスマートグラスへと方針を変えたのか?
これは少し違うように思う。
本来、理想的なスマートグラスを作るなら、Meta Quest 3・Vision Pro・Galaxy XRのように「視界全部に情報を表示できる」のが理想だ。だが、そのためのディスプレイやレンズなどの機構をメガネのサイズにするのは難しい。将来的に、画質はいまのHMDほどではないが視野を覆う技術ができる目処は立ってきたが、それが実現するのは数年先。商品として気軽に手に取れるようになるのは2030年頃かもしれない。
それまではHMDタイプが有望だが、「いろいろな場所で使う」にはやはりメガネ型が望ましい。AIグラスが注目される中ではまずメガネ型を作ろう……という流れが強くなっているのだろう。メガネ型でディスプレイを搭載した製品は、視野の一部、狭い範囲に情報が表示されるというものが多い。Meta Ray-Ban Displayもその例に漏れず、右目のみ・視野は20度程度とかなり狭い。
HMD型は、将来のために開発継続が必要だ。また、AIグラス向けのソフト開発にも、HMD型でのテストが必要になる。そうしたことを考えれば、しばらくは双方が並走しつつ開発・製品化が進むのではないか……と予想できる。 では、メタバースというサービス自体はどうなるのだろうか。その点は次回の次回解説する。
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