ロジクール高級マウス「MX Master 4」レビュー。トラックボール派にも響く快適さとは?

ink_pen 2025/11/7
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ロジクール高級マウス「MX Master 4」レビュー。トラックボール派にも響く快適さとは?
小川秀樹
おがわひでき
小川秀樹

編集プロダクションで編集・ライターとしてのキャリアをスタート。ビジネス、旅行、スマホ関連、著名人インタビュー記事などを幅広く制作してきました。趣味は国内外の旅行。特に東南アジアの文化を好み、タイとミャンマーには3年間の在住経験があります。

2025年10月末、ロジクールがフラッグシップマウス「MX Master 4」をリリースしました。前世代の「MX Master 3S」からハード・ソフトの両面で刷新されており、高級マウス愛用者から注目を集めています。

筆者は「Microsoft Trackball Explorer」を皮切りにトラックボールを使い始め、今はロジクールのトラックボール「M575S」(約8,000円)を愛用しています。一方のMX Master 4は約2万円。本記事は製品をレビューしつつ、ライトな使い方をするトラックボール派の視点で、高級マウスに乗り換える意味はあるのかを検証します。

高級マウスならではの質感とカスタマイズ性

まずは外観をチェックします。外装は再生プラスチック製で、艶消しの質感が落ち着いていて好印象。また、ホイール部分の金属の質感が高級感を演出しています。

ボタン7つ、スクロールホイール2つが配置されていて、見ただけで多機能なデバイスであることがわかります。前世代機と比較すると、側面に大型の「触覚センサーパネル」が追加されており、さらに高機能化しています。

↑側面にある大きな「触覚センサーパネル」が最大の変更点。

それぞれのボタンには、専用アプリ「Logi Options+」でアクションの割り当てが可能です(左右クリックを除く)。アプリケーションごとに異なる設定ができることもあって、カスタマイズ性は筆者が愛用しているミドルレンジのトラックボールとは比較になりません。

↑「Logi Options+」のボタン設定画面。7か所のカスタマイズができる。

接続はBluetoothおよび「Logi Boltレシーバー」の2系統。いずれも即座に認識し、通常の使い方では遅延は感じられませんでした。

↑Logi Boltレシーバー。USB Type-Cに対応している。

センサー解像度は最大8000DPI。解像度を高く設定しておけば、4Kなどの表示領域が広いディスプレイでも最小限の手の動きでポインターを移動しやすくなります。さらに、ロジクールの「Darkfieldトラッキング技術」により、ガラスの上でも使用できることもメリットとされています。

現在使用しているM575Sと比較すると、ボタンの数や質感の差は歴然です。高価格な製品は、やはり高いだけの理由があるのだということを再確認できました。

一方、筆者は通常サイズのディスプレイを使用しており、そこまで高いDPI設定も使用しないため、センサーの恩恵はあまり感じられませんでした。また、トラックボールはそもそも設置場所を選ばない特性を持つため、「ガラス面でも使用可能」という機能も、乗り換えの動機として響くものではありませんでした。

↑左のM575Sはボタン4つ、スクロールホイール1つのみ。

基本動作に劇的な違い! クリックとMagSpeedスクロールの快適性

さっそく、実際にMX Master 4を筆者の仕事環境で使ってみます。はたして倍以上の価格差ほど価値があるだろうかと懐疑的な目を持っていましたが、実際に操作をすると、すぐにフラッグシップモデルとしての完成度を実感することになりました。

特にクリックとスクロールの快適性は、ミドルレンジモデルとはまったく異なる体験です。

・クリック感
「M575S」の場合、クリックは「カチッ」と押し込む感触ですが、MX Master 4は、クリックと言うよりも「タップ」に近い、非常に軽い操作感です。

最初は押している感じが乏しく戸惑いましたが、慣れてくるとM575Sではかなり力を入れてクリックしていたのだと気づかされました。長時間の作業においては、この指への負担軽減は大きなメリットになるでしょう。

・スクロール性能
今回、もっとも好印象だったのがスクロールホイールの性能です。本機種を含むロジクールの一部機種には「MagSpeedスクロールホイール」が搭載されていて、1秒間に1000行のスクロールが可能とされています。

筆者は長い文章を書く機会が多く、最近は仕事柄、生成AIとの長文の対話を行うことも増えています。これらの作業中、従来のトラックボールではスクロールホイールで大きく戻る動作をすると、指が疲れて苦痛だと感じていました。

ところがMX Master 4の場合、軽く回す動作をするだけで淀みなく回転し続けるため、長い文章でもあっという間にスクロールすることができ、非常に快適に感じます。

スクロールをより楽にしてくれるのが、モード切り替え機能です。デフォルトでは上面のボタンが「Shiftホイールモード」に割り振られており、これを押すことで、ホイールに軽めのストッパーがかかる「ラチェットモード」と、制限なく一気にスクロールできる「フリースピンモード」とを瞬時に切り替えられます。

この切り替え機能が絶妙で、普段は「ラチェットモード」にしておき、大きくスクロールしたいときにだけ「フリースピンモード」に切り替えるという使い方に慣れたら、元のM575Sのスクロールホイールにはもう戻れないと感じたほどです。

↑高速でスクロールすると自動的にモードが切り替わる設定も可能。

カスタマイズ性が大幅アップ! 新機能「Action Ring」

また、MX Master 4には多くのボタンがあり、そこにアクションを割り当てることによって、マウス一つでさまざまな動作が実行可能になります。

このカスタマイズ性をさらに高めるのが、新機能の「Action Ring」です。

デフォルトでは、側面の大きなボタン「触覚センサーパネル」が「Action Ringを表示」に割り当てられており、ここを押すことで画面上にリング状の8つのメニューが現れ、そこからさまざまなアクションを実行できます。要するに、ボタンの機能拡張版と言えるでしょう。

↑画面上に表示される「Action Ring」はこんな感じ。

もちろん、Ringのメニュー自体もカスタマイズが可能です。デフォルトでは、スクリーンショット、メモ帳起動に加え、AI起動などが設定されていますが、これらはLogi Options+で細かく変更できます。

↑「Action Ring」の設定画面。40以上の項目からアクションを選択できる。

また、PhotoshopやPremiere Proなど一部のアプリには専用のプラグインが用意されており、ひんぱんに使うツールを設定可能です。

高いカスタマイズ性があるため、写真、デザイン、動画を手掛けるプロなど、複雑な操作を多用するユーザーが使いこなせれば、大幅な効率アップにつながると考えられます。

一方、筆者のように、仕事で使うソフトはOfficeソフトが中心、画像編集ソフトも多少は使用する、というくらいの使い方の場合、この多機能性は少々オーバースペックかなと感じたのは正直なところです。

今後に期待の新機能?「触覚フィードバック」

もう一つの新機能が、「触覚フィードバック」。これは、特定の操作時や通知が来た際に、側面の触覚センサーパネルが小さく震えて指先に知らせてくれるというものです。

ロジクールのサイトより。

たとえば、前述のAction Ringは8つのメニューが近接しているため、選択時に押し間違いをしないかという不安が生じます。

ところが、リングメニューの項目上にポインターをのせた際に「ブルッ」という振動が起きることで、項目の選び間違いを防いでくれるという、操作の確実性を高めるサポートをしてくれます。

また、外部アプリでは現在のところ、Zoom、Lightroom、Photoshopに対応しており、それぞれ、以下のイベント発生時に触覚フィードバックが実行されます。

<Zoom>
・新しいチャットメッセージ
・会議で挙手
・参加者が入室

<Lightroom>
・最小または最大の調整スライダー
・クロップが最大幅/高さに達した
・ジェネレーティブ・リムーブ完了

<Photoshop>
・アライメントガイドに固定
・調整スライダーが最小または最大に当たる
・ジェネレーティブ・フィル・プロセス完了
・ラッチ完了
・コンテンツを考慮した移動が完了し、セレクションが移動
・スマートな選択が完了

上記を見ると、触覚フィードバックは主に、「通知」「時間のかかる作業の完了」「操作の確実性を補助する」という役割で使われていることがわかります。

今後、レンダリングに時間のかかる動画編集ソフトや、コンパイルに時間がかかるコーディングソフトなどにも対応が広がれば、多くのクリエーターが便利だと感じる機能になるかもしれません。こちらもAction Ringと同じく、プロクリエーターやハイアマチュア向けの機能だと言えるでしょう。

一般ユーザーにも高級マウスを勧められる理由

ここまでレビューしてきて、MX Master 4の優位性は「カスタマイズ性の高さ」と「クリック・スクロールの快適性」の2点に集約されることがわかりました。

このうち、Action Ringや触覚フィードバックがもたらす圧倒的なカスタマイズ性の高さは便利であるものの、Officeソフト中心の一般ユーザーにとっては若干オーバースペックで、持て余してしまう可能性は否定できません。

では、一般ユーザーに約2万円の高級マウスは不要かというと、「そうではない」と考えます。たしかに機能の一部はオーバースペックでも、カスタマイズ性の高さはやはり便利ですし、何よりクリックやスクロールの快適さが圧倒的だからです。

実際、筆者は今回のレビューを通じてMagSpeedスクロールホイールの快適さから完全に離れられなくなりました。現状のロジクール製品でMagSpeedホイールが搭載されているのは、本機種のほかに「MX Master 3S」やモバイルモデルの「MX Anywhere 3S」など一部のマウスのみ。MXシリーズのトラックボール「MX Ergo S」には非搭載です。

このクリック・スクロール性能のためだけに、長年のトラックボールユーザーという立場を捨ててでも、MXシリーズのマウスに乗り換えても良いのではと思うほどでした。

高価な製品ではありますが、長文のテキスト作成、行数の多いエクセルシート作成、AIとの長文対話などで不自由を感じている人は、ぜひ一度試してみることをおすすめします。

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