偽・誤情報を見破れるかお試しあれ! LINEヤフーなどIT企業がつくった教材の大賞を発表

ink_pen 2026/2/24
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偽・誤情報を見破れるかお試しあれ! LINEヤフーなどIT企業がつくった教材の大賞を発表
久保田 遼(GetNavi web編集部)
久保田 遼(GetNavi web編集部)

「世界中の新聞や雑誌に目を通すこと」が公私混同の趣味で、各国の情報から次なるトレンドを探す毎日。GetNavi webでは国際機関の海外広報支援などを経て、現在は主にデジタル海外ニュースを担当。その傍ら、2024年にKBR News Agency合同会社を設立。海外の多角的な視点を日本の読者の日常生活に接続することがミッション。修士号(英語教育学)。

最新のスペックとチップを搭載したスマートフォンやタブレット、パソコン……。みながうらやむような最新のガジェットを手に入れたら、気分は最高ですよね。でも、ユーザーの“OS”が古ければ、それらは宝の持ち腐れどころか、脆弱性を抱えた状態かもしれません。

そんなふうにユーザーの情報リテラシーもスペックの一部とみたら、どうやったらその力を高めて、闇バイトや偽・誤情報などに騙されないようにいられるでしょうか? 先日「DIGITAL POSITIVE ACTION AWARDS 2026」が選出した、ICT(情報通信技術)リテラシーを高める5つの教材を見てみましょう。

産官学の総力を結集したDIGITAL POSITIVE ACTION

総務省、大学研究者、テック・通信・教育のトップ企業が結集した、官民連携の意識啓蒙プロジェクト。デジタル空間をより健全でポジティブな場所に変えるため、最新のICTリテラシー(ICTなどを適切に活用する能力)の普及と、それを支える教材の実装を加速させることを目的としています。会長は慶應義塾大学法科大学院の山本龍彦教授。公式ウェブサイトはこちら

↑今回のアワードには総務省や大学の研究者、受賞企業の代表、審査員など錚々たる顔ぶれが集まりました。

5つの受賞教材

【School賞】教育現場で役立つ学生と教員向け教材

スマートニュース株式会社 スマートニュース メディア研究所SNSのアルゴリズムを体験しよう—アルゴリズムに「自分がなってみる」—

SNSの「中身の見えにくい」表示ロジックを、利用者が自らアルゴリズムになりきって情報の取捨選択を行うことで理解していく体験型教材。

学校現場の先生の中には「メディアリテラシー教育に関心はあるが、教え方が分からない」という悩みを抱えている人が少なくないそう。

そんな現状を受けて開発されたこの教材は、興味のある情報だけが届く便利さの一方で生じる情報の偏り(フィルターバブル)を可視化し、アルゴリズムというシステムの視点から情報との距離感を考えさせる仕組み。フィルターバブルは、言葉で説明するだけでなく、生徒自らがアルゴリズムになりきって「体験」することが重要とスマートニュースメディア研究所は言います。

ちなみに、同研究所は先生が授業で実践できる教材を開発し、ウェブサイトで無料公開中。実際に活用した学校からは「アルゴリズムのメリット・デメリットの両方が分かった」「自分に届かない情報があることに気づいた」といったポジティブな感想が寄せられているそうです。

兵庫県立大学 環境人間学部の竹内和雄教授のコメント

これまでの大人が作った教材は「覚えろ」「分かっておけ」という押し付けが多い傾向にありました。そのような「昭和の価値観」から、AIが普及する「令和の時代」に移り、子どもたちが自分たちで答えを発見していく主体的な学びが重要になっています。この教材は文部科学省が掲げる「主体的・対話的で深い学び」といった考え方にも通じる素晴らしい取り組みです。


【Home賞】家庭でのICTの使い方に役立つ親子向けの教材

子どもが学校から帰宅してランドセルから健康診断の結果を取り出し、「背が伸びた」とか「視力が落ちちゃった」とパパ・ママと会話するように、日常生活でこの課題に接してほしい。そんな思いから、Yahoo!ニュースと朝日新聞は健康診断を比喩にした「ニュース健診」を立ち上げました。

内容は「読み解く力」「見分けようとする力」「発信しようとする力」の3つのコースに分かれたシンプルなクイズ形式。クイズには、実際に能登半島地震の際にSNSで拡散されたデマ情報など、現実に起きた事例を使用。親子で一緒に取り組めるように設計されています。

開始2週間で100万人以上が参加し、大きな反響があったそう。全体の平均回答率は66%だった一方、最も回答率が悪かったのは「生成AIを使ったデマ画像の見極め」。回答率は40%だったそうです。

慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所 水谷瑛嗣郎准教授のコメント

2児の父としての目線を含めて選考しました。人間は自分が情報と向き合う能力を客観視する機会が普段なかなかありません。このニュース健診は、短時間で手軽に自分の能力を客観的に見直す機会になるという点で非常に素晴らしく、面白い試みだと評価しました。


【Digital Use賞】スマホなどのデジタル機器やサービスの活用に資する教材

教育のICT化が進み、スマホデビューも低年齢化。利便性が高まる一方、保護者の不安も増大していることから、ソフトバンクは通信キャリアとしての知見と、教育のプロであるベネッセの知見を合わせ、親子のスマホデビューに対する不安を払拭させるプロジェクトを発足させました。

このウェブコンテンツは、親子で対話しながら理解を深めるためのプラットフォームとして以下の3点を意識しています。

  • 自分ごと化できるコンテンツ: キャラクターや場面設定にこだわり、自分のこととしてリアルに感じられる
  • 対話の創出: 大人からのルールの一方的な押し付けや模範回答の提示ではなく、親子で一緒に考えて学ぶ形
  • 成長への伴走: スマホデビューはゴールではなくスタートであるため、使い続ける中で出てくる新たな悩みに対し、毎年コンテンツを拡充してサポート

このコンテンツを体験した子どもの87%が「スマホを持ちたくなった」と回答しており、正しく理解し対話をすることで、不安をワクワクに変えることができたとソフトバンクは確信しています。

情報通信消費者ネットワークの長田三紀代表のコメント

ちょうど私の小学6年生の孫がスマホデビューの年ごろなので、その立場から見てみて、非常に良い教材だと感じました。その理由の1つは「なぜ」を理解させる構成があるから。 「~してはいけません」という提示ではなく、「なぜそうしなければならないのか」をきちんと理解できるように作られています。もう1つの理由は寄り添う姿勢。「他の人はどうしているのか」という疑問にも親切に対応しています。


【Safety賞】偽・誤情報などからユーザーを守ることに役立つ教材

偽・誤情報という大きな問題に対し、Googleは1人ひとりのユーザーのリテラシーをいかに育てるかも大事な課題であると考え、今回のキャンペーンを実施したと言います。

リテラシーの啓蒙活動は、どうしてもユーザーから「めんどくさい」「お説教みたいだ」と感じられたり、関心の高い人にしか届かなかったりという課題があります。

そこで、普段からユーザーが見ているクリエイター(例: ヒカキン、QuizKnock)に自身の言葉で語ってもらうことで、「ほんとかな?が あなたを守る」というシンプルで覚えやすいメッセージを自然に届けることを重視。

3年継続したことで、クリエイター自身がこの取り組みの重要性を理解し、台本を書いて発信してくれるようになったり、ユーザーからも「この人が言うなら聞こうと思った」といった好意的な反響があったりしているそうです。

東京大学大学院工学系研究所 鳥海不二夫教授のコメント

多くの教材では、学習者側に「学ぼう」という強い意志が必要ですが、ほんとかな?が、あなたを守るは、普段見ているお気に入りのクリエイターを通じて、自然に楽しく目に入ってくるという点が画期的。がんばって見ようとしなくてもリテラシーに触れられる仕組みを高く評価しました。


【大賞】遊びの力をフル活用した教材

ネットやデジタル技術を使いながら、社会で安全かつ責任ある行動が取れる力「デジタルシチズンシップ」を推進するマイクロソフトが、Minecraft(マインクラフト)を使ってつくった教材。

ある調査で多くの生徒がAIの安全で効率的な使い方に関して、大人からのガイダンスやサポートを求めていることが分かり、その声を開発につなげたと言います。

生成AI時代を見据え、その使い方やリスクへの向き合い方を、ストーリー仕立ての学習ワールドで体験的に学ぶことが狙い。プレイヤーはAIの出力をうのみにせず、情報の根拠や信頼性を考えながら判断していく場面に直面します。

AIを「なんでもしてくれる魔法」ではなく、人間が責任を持って活用方法を決めるべき強力な道具として理解することで、実践的なリテラシーを育みます。

DPA山本会長のコメント

Minecraftを用いたCyberSafe AIの取り組みは、子どもたちが楽しみながら主体的に学べるという点が非常に印象に残りました。デジタル・ポジティブ・アクションとは、デジタル技術を過度に恐れるのではなく、「究極的にはそれらをポジティブに使いこなそう」という考え方を重視する取り組み。この教材を通じて、子どもたちが楽しみ、没入しながら自然と必要なスキルを身につけていく姿は、まさに本プロジェクトの目標と合致しています。これからのリテラシー教材のモデルケースの1つになるのではないかと考えています。


編集部員が試してみたところ…

今回のアワードを取材した編集部員が、実際にニュース健診2024をやってみました。

最初はスラスラ解けていたのですが、「見分ける力」というカテゴリーにある記事の見出しに関する問題で立ち止まりました。問題をよく読み、「これかな?」と答えたところ、恥ずかしながらミス(思わず「悔しい!」と心の中で叫びました)。また、フェイク画像の真偽を見分ける問題では、表示された画像をしばらく何度も見返して「どれが本物なの?」と本当に迷いました。

↑アワードのトークセッションではAIが生成したフェイク画像を見抜く問題が出題されました。正解はどっち?

このような体験が、ICTリテラシー教材の魅力でしょう。上記5つの受賞教材は現在も公開中。DPAのサイトにはほかにもいろいろな教材があり、教材のレベルと対象の世代の2つの軸でマッピングされていたり、ラベルが貼られたりしていて、ちょっと知的に散歩をするようなサイトになっています。

【取材後記】ICTリテラシーとは?

DPAの山本会長は著書『アテンション・エコノミーのジレンマ<関心>を奪い合う世界に未来はあるか』で、アテンション・エコノミーという「怪物」に打ち勝つ戦略を有識者たちと対談しながら模索しています。

今日、私たちはアテンション・エコノミーの中に存在しています。デジタル空間には膨大な量の情報があるのに対して、私たちが払えるアテンション(関心)と時間は「圧倒的に希少」です。そのため、私たちのアテンションは経済的価値を持ち、プラットフォーム企業と広告主の間で取引されていると山本会長は述べています。このようなエコシステムに私たちはどっぷり浸かっているのです。

ICTは空気のように当たり前のインフラとなり、単に効率的で便利な手段として利用されがちです。身体から切り離されたデジタル空間で、私たちはプラットフォームに挑発され、消費されるだけの計算可能な資源(データ)へと駆り立てられていないでしょうか?

受賞教材が共通して掲げる「楽しい」「遊び」「自分ごと化」というキーワードは、忘れつつある身体感覚を取り戻すことを意味しています。優れたハードウェアとソフトウェアは、私たちの身体を拡張するもの。リテラシーとは本来、新しい世界やつながりを開示する創造的な行為です。ICTリテラシーとは、いわばデジタルという広大な空間を人間が自由に歩むための“新しい身体作法”なのかもしれません。

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