イギリスのテックカンパニー、Nothingから新しいワイヤレスヘッドホン「Headphone(a)」が発売されました。上位モデル「Headphone(1)」のコンセプトを受け継いだスタイリッシュなデザインと、カジュアルな使い心地を探求した弟妹モデルです。新製品のファーストインプレッションを報告します。

オーディオも得意なNothingの新定番ヘッドホン
Nothingのプロダクトといえば日本国内でもスマートフォンが注目されていますが、同社初のコンシューマー向けプロダクトは左右独立型のワイヤレスイヤホン「Nothing Ear(1)」でした。オーディオにも力を入れているわけです。ワイヤレスヘッドホンは昨年発売したHeadphone(1)以来のモデルになります。
上位モデルであるHeadphone(1)は実売価格39,800円(税込)ですが、今回のHeadphone(a)は27,800円(税込)と値ごろ感がアップしています。カラーバリエーションはブラック、ホワイトのほか、明るいピンクとイエローの4色展開。イエローのみ4月中に販売開始する見込みで、それ以外の3モデルは3月13日に発売されました。ちなみに、ピンクは3月上旬に海外で発表された新作スマートフォン「Phone 4(a)」とカラートーンを合わせています。


今回筆者が試したのはホワイトのHeadphone(a)です。
スクウェアシェイプのハウジング(イヤーカップ)などは上位モデルとデザインの共通性を持たせていますが、実機はより軽やかな印象を受けます。Nothingのプロダクトが共有するデザインポリシーである「トランスペアレンシー(透明性・透明感)」を引き継ぎながら、ハウジングのベース部分にはスケルトンパーツをあしらっているのも特徴でしょう。ただし、上位モデルのデザインで最も印象的だったハウジング側面の「2つのドット」は省略。代わりにハウジングのトップ部分をキーカラー1色に統一して、形状にも柔らかみを持たせています。

ちなみにHeadphone(a)は樹脂素材がメインで、Headphone(1)のようにハウジングにアルミニウム合金を使っていません。この変更もあって、本体の質量は310gと、上位モデルより19gほど軽くなっています。
加えてヘッドバンドのアーム部分には強靭なガラス繊維を混ぜており、軽さだけでなく耐久性を追求しています。低反発ウレタンとPUレザー(ビーガンレザー)のイヤーパッドは柔らかく、耳の周囲に優しくフィットする印象。一方で海外ブランドのヘッドホンにありがちなのですが、ヘッドバンドが長さを調節してもやや短く、頭の大きな筆者の場合はギリギリで耳全体を覆いきれるぐらいのサイズ感です。購入を検討する段階で、一度試着してみることをおすすめします。
また、本体はIP52規格の防塵防滴性能を備えています。汗や水しぶきがかかっても、拭いてケアすれば故障を避けられるでしょう。


なじみやすいサウンドと操作性
ユーザーインターフェースは従来モデルと同様、タッチセンサー方式ではなく押し込み式のボタン、ローラー、パドルといった物理コントロールを採用しています。役割が異なるボタンが複数あるというのは結構便利で、近年のワイヤレスイヤホンでしばしば採用される「タッチセンサーの複数回押し」のような操作方法よりも早く慣れる手応えがあります。直感的な音量調整やANCモードの切り替えが可能となり、誤操作も抑制できそうです。
サウンドの核となるドライバーユニットは40mm口径のダイナミック型。振動板をチタン合金でコーティングしたカスタムドライバーを搭載しています。合わせてマグネットの強化、およびボイスコイル線の太径化が施されており、これによりパワフルで厚みのある低音域の再現を可能にしたとNothingはうたっています。

また、ドライバーの背後の空気室を大型化しながら音響特性を最適化したことで、薄型のハウジングでありながら低音域の力強さも確保しているとのこと。ワイヤレスオーディオはLDACのコーデックに対応しており、ハイレゾオーディオ再生をサポートしています。なお有線ケーブル接続時にもハイレゾリスニングが楽しめます。
LDACに対応するサムスンのGalaxy S26 Ultraに接続して、Apple Musicで配信されているハイレゾロスレス音源を再生しながら、Headphone(a)のサウンドをチェックしました。Headphone(a)とのLDAC接続を確立するためには、「Nothing X」アプリから「デバイスの設定」を開き、「高音質オーディオ」の中で「LDAC」を選択します。

実際にいくつかの楽曲を試聴してみると、ボーカルや楽器の音像がとても立体的で、音の輪郭線は繊細でありながら力強さがあります。全体的に、中高音域の華やかさに特徴がある印象です。クラシックのオーケストラ、ポップス系のライブ盤などの楽曲で音場の広がりも確認しましたが、ステージの情景を不自然に広げない素直さは好印象である一方、上位モデルに比べると音の消え入り際の余韻はやや淡泊です。音場表現力の豊かさには上位モデルとの差が出ました。

低音域を不用意に強調する印象はありません。むしろジャズのアグレッシブな演奏を聴くと、低音のイメージが少し細身に感じられました。骨太なロックやEDMを再生する際にはアプリのイコライザー機能で、少しベースラインのバランスを調整してもよいかもしれません。
アプリには、低音強調モードや8つの音域の設定値を自由にカスタマイズして好みのバランスを保存できる「8バンドイコライザー(EQ)」機能もあります。LDAC再生時にもイコライザーが使えるところがユニークです。
ちなみに、設定をカスタマイズしたEQの値を保存して、Nothingのコミュニティベースである「Nothing Playground」 にアップロードするとコミュニティ上で紹介される可能性があります。逆に、他の人がアップロードしたカスタム値をNothing Xアプリにダウンロードして継続的に使用していくことも可能です。

加えて、Headphone(a)はアクティブノイズキャンセリング(ANC)と外音取り込みの機能を搭載するワイヤレスヘッドホンです。ヘッドホンを装着するユーザーの周囲環境のノイズを内蔵マイクで検知して、AIアルゴリズムに連動して最大40dBのノイズ低減を図る「Adaptive ANC」を装備しています。
Nothing XアプリからアダプティブANC(「アダプティブ」と表記)をオンにしておけば、あとは良い意味で「搭載されていることがわからない」ぐらい、自然にベストな静音環境をつくり出してくれます。地下鉄の車内、カフェなど、ヘッドホンを身に着けて過ごす場所を変えても、自然な消音バランスに整えてくれるので、コンテンツのサウンドに深く入り込めます。
ただし、外音取り込みの方は内蔵するマイクに由来するものなのか、オンにすると少し周囲の音を「拾いすぎる」感触があります。“サー”っという微量なノイズが被さってくる感覚がありました。この点は上位モデルの方が完成度も高いように思います。
軽快な操作性とロングバッテリーが魅力のスタンダードモデル
本製品のデザインや音質以外の特徴として、バッテリーの持久力が優れていることが挙げられます。ANCオフの状態では最大135時間(約5日間)、ANCオンの状態でも最大75時間の連続再生が可能です。2026年3月時点で発売されている、ノイズキャンセリング機能を搭載するワイヤレスヘッドホンの中ではトップクラスのスタミナ性能です。5分間の急速充電で5時間の再生が可能になるので、実用面での利便性も高いと思います。
その他の機能として2つのモードが選べる「空間オーディオ」、モバイルゲームを遊ぶ際に役立つ120ミリ秒の「低レイテンシーモード」や、ペアリングしたスマートフォンの「カメラシャッター」を操作できるリモコン機能なども揃っています。
最新モデルのHeadphone(a)は、Nothing独自のデザインコンセプトを受け継ぎ、軽快な操作性と内蔵バッテリーのタフネスをバランスよく実現したワイヤレスヘッドホンです。音質にもっとこだわりたい方には、イギリスの老舗オーディオブランドであるKEFがサウンドを監修した上位モデル、Headphone(1)もおすすめします。定価の価格差が1.2万円あるので、上位モデルとの実力差が散見される箇所もありましたが、例えばANCの消音効果についてはHeadphone(a)も上位モデルに引けを取っていないと思います。
ファッショナブルなデザインも含めて、Nothingによるワイヤレスヘッドホンの良きスタンダードモデルとしておすすめします。