TCLの「TCL Note A1 NXTPAPER」は、Makuakeで1.5億円の支援額を集めるなど、今もっとも注目を集めているデジタルノートだ。特筆すべきは、一般的なタブレット端末よりも“紙”に近い見え方と書き心地を備えていること。そこで本稿では、同じく紙のような書き味で高い評価を集めているFCCLの電子ペーパー「クアデルノ」と比較する形で、その特徴や使い分けについて紹介する。

写真入りの資料を見るか長文資料を見るかで快適さは変わる

電源を入れてまず感じるのは、見え方の違いだ。TCL Note A1 NXTPAPERは約1,670万色のフルカラー表示で、リフレッシュレートは120Hz。画面はペーパーライクフィルムを貼ったタブレット端末に近い見え方である一方、タブレット端末で感じるような反射やまぶしさ、指紋残りを抑えながら、くっきり鮮やかに表示される。
スクロールの滑らかさはタブレットそのもの。レスポンスがよく、ページをめくったときに電子ペーパーで起きがちな残像や読み込みの鈍さもない。


対してクアデルノはE Inkディスプレイを搭載しているため、もともとの画面がグレーがかっており、色が少し沈んだ表示となる。写真が多い資料の場合、液晶タブレットよりも細部が見づらいのが正直なところ。

しかし画面が発光しないぶん、目が圧倒的に疲れにくい。論文など長文の文字資料を読む人にとっては快適なツールとなるだろう。

書き心地は「するする」と「シュッシュ」。同じ“紙のよう”でも再現された質感は異なる
続いて、両機種の真骨頂でもある書き心地を見ていこう。

TCL Note A1 NXTPAPERの画面はさらさらとしており、ペンがするすると滑らかに走る。水性ボールペンなどインクフローの良いペンで書くのが好きな人はしっくりくるはずだ。
一般的なタブレット端末に書いているときのような、つるつるとしたガラスの上に書いているような違和感はゼロ。ただし筆記音はタブレット同様にコツコツとしている。

その点クアデルノは、画面に適度なざらつきがあるためペン先が引っかかり、上質紙や藁半紙に鉛筆やシャープペンで書いたときのように、シュッシュという音がする。書き心地も前述した紙と筆記具を使ったときに近く、書くという行為自体が好きで、それを五感で味わいたい人におすすめだ。




なお、どちらも書いているときのタイムラグはほぼなく、ちゃんとペン先に線がついてくる。
TCLは「デバイス」としての存在感あり。クアデルノはノート感覚で持ち運べる
続いて、持ち運びのしやすさについても触れておこう。

TCL Note A1 NXTPAPERは本体のみの場合、500mlペットボトルとほぼ同じ重さ。ディスプレイサイズが近いiPadの11インチモデルは477gのため、それよりも少し重い。それに対しクアデルノのA5モデルはほぼ半分の重量だ。

実際に使っていると、TCL Note A1 NXTPAPERはタブレットに近いサイズ感と重量で“デバイスとしての存在感”がある。機能においてもブラウザーアプリやメールアプリ、カメラアプリなどが使えるため、複雑な作業の必要がなければPCやタブレットの代わりとしても使える。

一方でクアデルノは、モノとしての立ち位置も紙の延長にある。A5サイズの場合、キャンパスノートを1冊持ち歩く感覚で携行できるし、TCL Note A1 NXTPAPERのようなアプリやカメラ、録音機能を搭載していないため、用途もノートテイクと資料の閲覧・書き込みが中心となる。外部通信が行なわれるのもソフトウェアのアップデートとデータの受け渡しのときのみだ。

機能特化型である点は好みが分かれるところだが、それゆえバッテリー持ちが良い点は強みだ。そもそもE Inkディスプレイ自体が、画面に変化が生じたときしか電力を消費しない省エネツール。1日の作業頻度にもよるが、フル充電状態であれば最長2週間もつ。持ち運びなどの取り回しの良さに関しては、純粋な電子ペーパーであるクアデルノに一日の長があると言っていい。

また軽いから当然だが、屋外などで立ったままメモをとる場合もクアデルノが向いている。もちろん手が疲れにくいというフィジカルな点も理由だが、そもそも屋外でインターネット回線がない場合、TCL Note A1 NXTPAPERはその強みであるAI機能を活用できないのだ。
ただし音声録音はインターネットなしでもできるため、音声を録音しながらメモを取っておき、ネットにつながる環境に移動してから、AIで文字起こしをすることはできる。

使ってわかったTCL Note A1 NXTPAPERとクアデルノの立ち位置の違い
両者の特徴である「紙らしさ」を中心に比較してきたが、ここからはTCL Note A1 NXTPAPERのもうひとつの特徴である「AI機能」に触れながら、両機種の立ち位置の違いを示したい。
結論からいうと、TCL Note A1 NXTPAPERは「作業効率を上げる手書きデバイス」で、クアデルノは「思考に潜るための手書きデバイス」だ。
TCL Note A1 NXTPAPERは、AI機能により自分だけでは思いつかないアイデアを生み出したり、作業を効率化したりといったことが可能で、いわば「自分とは異なる第二の脳を備えたノート」として使える。




ちなみに地味に便利だと感じたのが、手書きで数式を書くと答えを導き出してくれる機能。領収書の一部の商品だけを経費計上するために足し算をしたいときなど、ちょっとだけ計算したいという場面が意外とあり、非常に役立った。

対してクアデルノは、機能が書くことに特化しているぶん、圧倒的に書く作業に集中でき、思考を遮るものがない。外部の脳を使ってアイデアを広げるというよりも、自分の中に潜り込み考えを深めていく感覚だ。
昨今、書く瞑想とも呼ばれる「ジャーナリング」というノート術が流行っているが、そういった使い方にも向いている。またネットサーフィンや動画視聴、SNSの閲覧といった誘惑がなく没入できるという意味では、資料を読み込む作業や資格や語学などの勉強などにも役立つと感じた。


ここまで見てきたように、TCL Note A1 NXTPAPERとクアデルノは、同じ「書けるデバイス」でありながらその本質はまったく異なる。自分が求めているのは作業の効率化なのか、思考の拡張なのか、それとも集中なのか。それらを理解すれば、選ぶべき1台は自然と見えてくるはずだ。