バイブレーターの変化が「フォースタッチ」を生んだ

ink_pen 2015/5/8
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バイブレーターの変化が「フォースタッチ」を生んだ
GetNavi編集部
げっとなびへんしゅうぶ
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「新しくていいモノ」を吟味して取り上げる新製品情報誌。生活家電とIT・デジタルガジェットを柱に、モビリティから雑貨・日用品、グルメ・お酒まで、モノ好きの「欲しい!」に答える。

「週刊GetNavi」Vol.30-3

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通知に振動を使う「バイブレーター」は、いまや日常的な機構だ。ただし、同じ振動とはいえ、その機構は機器によってずいぶん違う。

 

もっともシンプルなのは、先端におもりのついたモーターを組み込み、その回転速度で振動の強さを調整するものだ。おもりは円柱を半分に切ったような形で、回転すると軸がぶれるため振動が発生する。実は、ゲーム機のコントローラーからスマートフォンまで、もっとも使われているのがこのタイプである。ゲーム機のコントローラーの場合には手元に大きめのモーターを使ったものが2つ以上入っており、スマートフォンの場合には、指先にも満たない極細のモーターが使われている。

 

こうした仕組みが広く使われている理由は、とにかくコストが安く、製造が簡単だからだ。モーターさえ用意できれば、回路もシンプルに、強い振動が実現できる。薄型のスマートフォンに組み込めて、十分な速度でおもりを回せるモーターを作るのはそれなりに大変だが、携帯電話の時代から膨大な量が生産されたため、価格も安く、使いやすいものになっている。余談だが、近年増えた、数千円の小型ヘリのラジコンに使われているのは、元々携帯電話のバイブレーター向けに開発されたモーターだ。携帯電話が生んだパーツの進化が、そんなところにまで影響したと考えると面白い。

 

一方、この種のバイブレーターの欠点は、振動の強さをコントロールしにくい、ということだ。「強い」「弱い」程度なら再現できるが、それ以外は難しい。これまでの用途であれば問題ないが、もっと微細なフィードバックを狙うなら、別の機構が必要になる。また、その機構上、劇的に薄いものを作るのは難しい。

 

そこで登場するのが、回転するモーターではなく、前後運動する、いわゆるリニアモーターを使ったバイブレーターだ。薄い板をリニアモーターで動かすことで振動を生み出す。回転軸が不要なのでより薄くできるし、振動させる速度もより自由に変更できるので、振動の強さの調整もしやすくなる。欠点はもちろん、高価になることだ。

 

MacBookやApple Watchでは、リニアモーターを使ったバイブレーターが使われており、タッチパッドやスクリーンの下にバイブレーターを組み込んで、操作と共に振動させることで、「押し込み感」などを再現している。リニアモーターによるバイブレーターはその構造上、水平方向にしか振動を発生させられない。しかし、位置とタイミングをコントロールして振動させると、人の感覚は容易にそれを深さ方向のフィードバック、すなわち“ボタンの押し込み”と勘違いしてしまう性質がある。それが、Appleの「フォースタッチ」技術の秘密である。

 

では、この技術はAppleしか持っていないものなのだろうか? そうでないとすれば、どんなところに使われる可能性があるものだろうか。そのあたりの考察は、次回Vol.30-4にて。

 

●「Vol.30-4」は5/15(金)ごろ更新予定です。

 

 

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