ゲーム&ホビー
2018/1/22 10:00

【大人も楽しめる10選】アナログなボードゲームは、子どもの教育にも使えるのか?(後編)

「頭が良くなる」とメディアに取り上げられる機会が増えた近代アナログゲーム。「ボードゲーム」として親しまれていますが、子どもはどのように楽しむものなのか。そんな疑問に答えるべく、前編では人気のボードゲームを、ボードゲームショップ「すごろくや」の代表・丸田氏と、療育アドバイザー・松本氏による解説付きで紹介しました。

 

前編はこちら

 

対象年齢が小学校中学年まで上がって、ゲームにも戦略性などが求められるものが増えてきました。さらに大人向けのゲームでも、子どもの学びになり得るのか? 両氏によるおすすめゲームを解説と合わせて追っていきましょう。

 

06.サイコロの絵柄を揃えて手に入れたパズル片で遊園地を作る「タイニーパーク」

 

↑「タイニーパーク」(実売価格:2,376円)。対象年齢は小学生中学年。プレイ人数は2~4人。プレイ時間は10分
↑「タイニーパーク」(実売価格:2,376円)。対象年齢は小学生中学年。プレイ人数は2~4人。プレイ時間は10分

 

アトラクションの柄が描かれたサイコロ5個を取捨選択しながら何度か振り、絵柄の組み合わせを作って、対応するアトラクションのパズルピースを獲得。自分のボードに配置していき、いち早く自分の敷地を埋め尽くすゲームです。

 

「タイルに描かれた絵柄の目をサイコロで出せば、そのタイルがもらえます。たとえば、サイコロがピザショップ、ピザショップ、プール、プールという目と同じタイルを取る。振り直しができる。2つはおいといて2つ振り直すということを考える。ルールがシンプルで面白い。見通しを持って遊ぶことが重要なゲームです」(松本氏)

 

「マス目をすべて埋めたら勝ちというルールで、毎回1枚しかタイルは取れない。そうすると、大人は大きい4マスのタイルを狙ってサイコロを振り直すんですが、子供はわからないから1マスのタイルを取りまくる。その結果、『1マスのタイルが足りなくなるんですけどどうしたらいいですか?』って問い合わせが山のように来た。なんでそんなことになるのかなって聞いてみるとうまく遊べてないんですね。海外では5歳からできるってなってるんですが、日本語版を作る際に6歳以上に変更したんです。対象年齢があてにならない実例ですね」(丸田氏)

 

07.迷路の形を変えてお宝をゲット「ラビリンス」

 

↑「ラビリンス」(実売価格:4320円)。対象年齢は小学校高学年。プレイ人数は2~4人。プレイ時間は30分
↑「ラビリンス」(実売価格:4320円)。対象年齢は小学校高学年。プレイ人数は2~4人。プレイ時間は30分

 

タイルを敷き詰めてできた迷路にあまったタイルを差し込んで、列ごとに迷路の形を変化させてコマを宝物の位置まで導くゲーム。

 

「ドイツでは、みんな知ってるくらいポピュラーなゲーム。ボードの端からタイルを差し込むと列単位で迷路が変わっていく。自分の色のコマを目的の場所にたどり着かせるためには、どこに差し込めばいいのかなってやっていくんですけど、最初は自分のことしか見えてないのが、だんだん俯瞰して見ることができるようになる。そうすると、僕って天才だなって気分を味わえる瞬間がある。ルールが簡単で2人から遊べるのもいいですね」(丸田氏)

 

08.即興セリフを聞いて、絵を探す漫画カルタ「ヒットマンガ」

 

↑「ヒットマンガ」(実売価格:1944円)。対象年齢は小学校高学年。プレイ人数は3~10人。プレイ時間は20分
↑「ヒットマンガ」(実売価格:1944円)。対象年齢は小学校高学年。プレイ人数は3~10人。プレイ時間は20分

 

吹き出しが空欄になった漫画のコマが描かれたカードを見て、読み手がセリフを考える。他の人は、そのセリフを聞いて該当するカードを探す異色カルタ。

 

「コミュニケーションの療育ということにダイレクトにヒットするカルタですね。読み手は漫画のコマの状況を見て、当てはまるセリフを考える。伝われば、読み手にも点数が入るんですけど、うまく伝わらないと、マイナス点のカードを取ることになる。読み手は伝わるセリフを考えるし、取る方もこの人はどのカードを見て言ったんだろうって考えます」(松本氏)

 

09.お題の印象から、正解の絵を推理する「ディクシット」

 

↑「ディクシット」(実売価格:4860円)。対象年齢は中高生~大人。プレイ時間は3~6人。プレイ時間は30分
↑「ディクシット」(実売価格:4860円)。対象年齢は中高生~大人。プレイ時間は3~6人。プレイ時間は30分

 

場に並べられた、抽象的なイラストが描かれたカードの中から、出題者が出したカードを見つけるゲーム。全員が正解すると出題者は点が入らないので、わかりやす過ぎず、わかりにく過ぎない、ちょうどいい出題をしなければなりません。

 

「お題を聞いて、それぞれプレイヤーがお題に近いカードを1枚ずつ出していく。その中から、出題者が出した曖昧なヒントを元にカードを当てていきます。たとえば出題者が、〝幸せな時間〟って言ったら、〝幸せな時間〟っぽいカードを他の人達も手札から出す。ですから実際に答え合わせしていくと、なんだーってなる。このゲームもぜんぜん面白さがわかんないって問い合わせがあったんです。ルールが間違ってるのかなって思ったら間違っていない。ただ詳しく聞いてみたら、〝はい、正解。次行きます!〟って次々に問題を出して遊ばれていたんです。なんでこうなの? とか、なんでこう思ったの?とか、なしでやると、そりゃあまったく面白くない。だからこのゲームも対象年齢が難しい。女のコだったら7歳ぐらいでもいけるんですけど、男の子は中学生ぐらいからですかね。花がキレイって思う、感性が大事ですよってよく言ってます(笑)」(丸田氏)

 

10.数の書かれたタイルをめくり並べていく「ケルトタイル」

 

↑「ケルトタイル」(実売価格:1500円)。対象年齢は中高生~大人。プレイ人数は2~4人。プレイ時間は15分
↑「ケルトタイル」(実売価格:1500円)。対象年齢は中高生~大人。プレイ人数は2~4人。プレイ時間は15分

 

裏向きのタイルを取って、色ごとに「昇順」または「降順」に並べていき得点を目指すゲーム。

 

「タイルを取ってしまうことによって不利になるケースがあるので、取らないで置いておくということもできる。ただ、自分にとって有利か不利かだけを考えて、ちょっと不利になるからと取らないでいると、相手の人がめちゃくちゃ有利になっちゃうってシチュエーションがよくある。相手に取らせないために、自分はちょっと損するけどここは取っておこうっていう他の人の動きを想定したうえで、自分が動くという練習としてすぐれている。相手の立場に立って考えるメカニクスというか、仕組みとしての面白さを伝えるのにオススメのゲームですね」(松本氏)

 

以上が、おすすめゲームになります。ボードゲームには、ただゲームを進行するだけでは本当の面白さが掴みきれない部分があるのですね。最後にお2人による「ボードゲーム×教育」をテーマにしたトークのダイジェストをお送りします。

 

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――お二人が考える「ゲームの本質」とはなんでしょうか?

「ゲームの本質は、遊び手に創造性が発揮されることにつきます。創造性って聞くと、いちから何かを作ることと考えがちですが、頭を使って自分の中で新しいことを考えるということは、すべてクリエイティブなんです。選択する要素に関して、創造性を発揮して選んでいく。選択肢の中から自分で考えて選び、解決のためにうまくやれたって体験を味わえるんです」(丸田氏)

 

「近代アナログゲームは非常に簡単なものから難しいものまで種類がたくさんあります。私はよく発達障害の子たちと遊ぶのですが、自分で〝考える選択肢〟が限られることで子どもでも遊びやすいゲームが多くある」(松本氏)

 

――デジタルゲームとの違いはなんだと考えていますか?

「デジタルのゲームは、コンピューターがジャッジをしてくれる。アナログのゲームはルールを守って、全員でゲームを成り立たせてるので、全員がその場を成り立たせることに重きを置いている。ルールのジャッジを自分たちでやらなければいけないんです。だから、例えばiPadでできるボードゲームとなった場合、もうルール、審判をコンピュータに任せてしまうので、それはボードゲームじゃないよねって話ですね」(丸田氏)

 

――ボードゲームでコミュニケーション力は身につきますか?

「ボードゲームがコミュニケーションツールかと聞かれたら違うって言っちゃいます。それはボードゲームの特色にしてはいけない。浅いコミュニケーションは形成されます。深い悩みとかそういったものに踏み込めるとはまったく思いません。うちで売ってるようなゲームは、手続きをやるなかで〝コミュニケーションができてる気になる〟もの。これはバカにしてるわけじゃなくて、それができるものってあまりないのでね。しかも子供と大人が一緒になってできる。その入り口としてはとてもいいんじゃないかと思います」(丸田氏)

 

――ボードゲームをやったことのない人に楽しさや価値を伝えるためのコツは?

「〝大人ならではの知的な能力を発揮しつつ、子供のように楽しめるものだ〟と説明することが多いですね。日本に昔からある囲碁とか将棋は、眉間にしわ寄せて遊ぶゲームです。子供のように楽しめないですよね。一方で人生ゲームみたいにキャッキャと楽しめるものはあるんですけど、大人の知的能力を発揮できてるものがなかなかないんですよ。そういう意味で両立させてるものがあることを伝えています。それと、もう1つよく使うのが、お寿司でいうと人生ゲームはカッパ巻き、ウノはかんぴょう巻きぐらいなんですよねって説明すると『マグロとか、あるんですか?』って聞かれる。そしたらありますよ!っていうね(笑)。全体の中で持っているイメージに対して、あなたは一部しかわかってないよっていうビジョンを与えてあげることで興味を持ってもらうようにしています」(丸田氏)

 

――子ども向けゲームを選ぶ際に大事な点はなんですか?

「迷ったら簡単なほう、簡単なほうを選ぶ。難しいけどできるかな? と思うと失敗します。難しいゲームもやってみると、ルールがあるから子どももわからないなりに、ある程度できてしまう。そうすると大人は子どももやれていると思ってしまいます。だけど本人からすると大人に付き合ってるだけってことになっちゃうんですね」(丸田氏)

 

「その子がどこまで考えているかを注意深く見るのが大事だと思います。いくつか遊んでみたあとで、今日どれが楽しかった?って聞いて、これって言ったのが、その子に合ってるゲームです」(松本氏)

 

「ひとつの指針として、海外ゲームの場合、パッケージに書いている年齢の7割はあてになりません。あくまでクラスの頭がいい子の対象年齢。なので1.5倍で見てほしい。8歳って書いてあったら、12歳以上と思ってもらっていいかも。6歳以下っていうものでいいゲームがいっぱいあるので、そういうものから遊んでみるといいですね」(丸田氏)

 

――子どもとゲームをする時に大人が気を付けるべきことはありますか?

「子供が失敗しそうなときに、○○ちゃんそうじゃないでしょ!って、失敗の手前で止めないでください。間違ってしまっても止めずに、失敗してから教えることが大事です。考えた上での失敗しか糧になりません。それに、ルールはどんどん変えてかまいません。自分たちのために使いこなせればいいし、ルールを改変してもいい。ルールってなんなの? アナログゲームに触れて、ズルってなんなの?っていう考えにいってくれたらいいなって思います」(丸田氏)

 

2人の「ゲームと教育」対談の第2回は2月24日(土)に高円寺「す箱」にて開催予定。くわしくは「すごろくや」のイベント情報をチェック。なお、今回紹介したすべてのゲームはすごろくやで取扱われています(一部、品切れ中のものもあり)。興味を持ったパパ、ママは子どもと一緒に、もちろん大人同士でも楽しんでください。