ひとネタ一本勝負――。それは、素材と味に対する揺るぎない自信の証。飽きるどころか、むしろ独り占めしたくなる。そんな珠玉の駅弁をご紹介。
木枠に包まれた富山の伝統と誇り

源
ますのすし一重
2000円
買える場所:富山駅ほか
江戸時代、将軍に献上されたますのすし。その伝統を受け継ぎ明治45年から作り続けてきた。木枠に笹を敷き、ますを丁寧に押し固める姿に、100年前と変わらぬ職人の誇りが息づく。

【ここに美学アリ!】ますと酢飯潔くも完成された調和
脂ののったますを軽くしめ、ほどよい酸味の酢飯と重ねて押し固める。奥深いますの旨味とシャリを、笹の香りがふわりと包み込み、絶品。
潔いほど美しい一面の乳白色

神尾弁当
えんがわ押し寿司
1680円
買える場所:新潟駅ほか
蓋を開けると現れるのは、まばゆいほどに白く輝くえんがわの押し寿司。ほどよい酢加減のシャリとともに押し固められた寿司は、素材の味を楽しむためにシンプルにワサビと醤油でいただこう。

【ここに美学あり】口溶けのよいカレイのえんがわを贅沢に
使用するのは、カレイのえんがわ。1尾からわずかしか取れない希少な部位だが、脂肪分が豊富で、とろけるような食感が旨味の決め手だ。
甘えびの海に溺れる至福のえび三昧

旭川駅立売商会
たっぷり甘えび弁当
1390円(期間限定)
買える場所:旭川駅ほか
北海道で最も歴史ある駅弁業者のひとつ。旭川駅の発展とともに歩んできた、120年超の老舗が手がける。甘えびをはじめ四季折々の、地元食材にこだわった弁当が人気。素材の鮮度と味を最大限に引き出す職人の技も、長く愛されるゆえん。

【ここに美学あり】透きとおる甘えびの素材美が迫りくる
生食用の甘えびを使用することで、素材の甘みと食感がダイレクトに堪能できる、まさにえび尽くし弁当。北海道産米のふっくら酢飯との一体感も見事。
金の身と銀の皮目が交互に並ぶ市松模様

大船軒
伝承鯵の押寿し
1500円
買える場所:大船駅ほか
大正2年の発売以来愛され続ける駅弁史に残る名作。酢飯には赤酢入りの合わせ酢を、しめ鯵には専用の調味酢を使用する。銀と金が交差するように整然と並び、老舗ならではの職人技と美意識が宿る。

【ここに美学あり】計算し尽くした食感と風味のバランス
脂ののった皮目と、しっとりとした身を交互に配することで、味わいにメリハリが。食べやすく握ってから押すひと手間が、絶妙な食感を引き出す。
イカに込められたさまざまな物語

いかめし阿部商店
いかめし
990円
買える場所:森駅前柴田商店
1941年、函館本線・森駅の駅弁として誕生したいかめしは今や全国的に知られる名物弁当だ。やわらかく煮込まれたイカともっちりごはんの相性が抜群。駅前の柴田商店で購入できる。

【ここに美学あり】噛むほどに染み出すイカと米の一体感
もっちりと炊き上げた米が、イカの旨味と甘辛ダレを吸い込んで一体化。噛むほどに味がにじみ出る滋味深さが、素朴ながらも心を打つ。
ツメ肉まで誠実に蟹づくしの贅沢弁当

アベ鳥取堂
山陰鳥取 かにめし
1600円
買える場所:鳥取駅ほか
明治43年創業、昭和27年から「元祖かに寿し」を手がける鳥取の名店・アベ鳥取堂。地元の味と真摯に向き合い続けてきた同店が、カニひとすじで仕上げた鳥取を代表する自信作だ。カニ型容器は環境にも配慮。

【ここに美学あり】カニの旨味を一折りに凝縮
ふっくら炊いたカニの炊き込みごはんの上に、秘伝の味つけのほぐし身とツメ肉を贅沢に盛りつけ。甘み、香り、食感が複雑に絡み合う、カニ弁当の傑作。
※「GetNavi」2025年9・10月号に掲載された記事を再編集したものです。
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