ヘルスケア
2019/6/18 21:00

白血病治療に新たな光! 「液体のり」に秘められたスゴイ可能性

学校や家庭、オフィスでお馴染みの液体のり。勉強や仕事で活躍する文房具のひとつですが、そんな液体のりが白血病治療の救世主になるかもしれないという驚きのニュースが国内外で報じられました。この事実は、研究者たちの間ですら「目からウロコ」とセンセーショナルな発見だったそう。でも、液体のりを病気の治療に役立つとは一体どういうことなんでしょうか?

 

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アルブミンの代わりになる

白血病の治療で鍵となるのが、「造血幹細胞」と呼ばれる細胞です。造血幹細胞は骨髄のなかで盛んに細胞分裂を行い、赤血球・白血球・血小板に成長します(これを「分化」と呼びます)。つまり造血幹細胞は、血液細胞を供給できる細胞ということ。血液疾患である白血病の根治には、骨髄移植で造血幹細胞を移植することが大切になると言われているのですが、高齢化社会を背景に、今後ドナーが減少していくことも考えられるため、造血幹細胞を培養して増やす技術の開発が求められているわけです。

 

この課題に取り組んできたのが、東京大学医科学研究所とスタンフォード大学などの共同研究チーム。彼らはマウスから造血幹細胞を採取して、それを培養、増殖させる方法を模索してきました。造血幹細胞の培養には現在、ウシの血清成分である「アルブミン」というたんぱく質が使われています。しかしアルブミンを精製する際、どうしても微量の混入物が残ってしまい、それにより造血幹細胞が分化して血液細胞に変わってしまうほか、細胞の老化も誘導することを突き止めました。そこでアルブミンの代わりとなる成分の必要性が求められてきたのです。

 

あらゆる成分で培養が可能かどうか試され、そのなかに、液体のりの主成分であるポリビニルアルコール(PVA)もありました。細胞培養にはとても高価な培養液が使われることがあり、造血幹細胞は新たな細胞に分化するという特殊な能力をもつ幹細胞とあって、高価な培養液でないと培養は難しいと、多くの研究者が思っていたのかもしれません。しかし、そんな予想に反して、安価なPVAで造血幹細胞の老化を抑えながら1か月以上という長期間増幅させることができると発見したのです。

 

のりの応用に高まる期待

家庭用サイズなら1個わずか100円ほどで購入できる液体のり。そんな液体のりの成分が、造血幹細胞という人間の身体に重要な細胞を育てることに役立つだなんて、驚きでしかありません。この研究結果は、科学誌ネイチャーにも掲載され世界中の研究者にも驚嘆をもたらしたと言われています。

 

次の課題は、この発見をどう応用するか? ドナーから造血幹細胞1個を分離採取できれば、それを増幅させて複数の患者の治療に利用できる可能性があるそう。白血病の患者やその家族への新しい光となっていくことに期待していきたいものです。