本サイトでは、主要メーカーのハイエンド炊飯器のなかでも人気の高い5機種を集め、徹底的に比較・検証した記事を連載してきました。今回は、パナソニックの「Wおどり炊き」を取り上げます。本機は8項目に及ぶテストの末、味、操作性、メンテ性など、多くの面で優秀と判明。以下で詳細をチェックしてください!
「Wおどり炊き」に「加圧追い炊き」を加え、甘みとモチモチ感がアップ
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パナソニック
実売価格9万7980円
IHの通電切り替えで激しい熱対流を生み出す「大火力おどり炊き」と、釜内を加圧状態から一気に減圧し激しい対流を生み出す「可変圧力おどり炊き」を組み合わせた「Wおどり炊き」を搭載。熱と水分を米に均一に行き渡らせ、ふっくらモチモチの銀シャリに炊き上げる。炊飯工程の終盤にさらに加圧して釜内を高温にする「加圧追い炊き」機能を新たに採用し、ごはんの甘みとモチモチ感がさらにアップした。50銘柄の銘柄炊き分け機能を搭載するほか、釜内を高温洗浄できる「お手入れ機能」も新採用。
SPEC●炊飯容量:0.5〜5.5合●炊飯1回あたりの消費電力量:160wh●保温1時間あたりの消費電力量:14.4Wh●加熱方式:6段全面IH●内釜:ダイヤモンド竃(かまど)釜●サイズ/質量:W266×H233×D338mm/7.0kg
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「Wおどり炊き」徹底レビュー テストその1 食感・味の傾向は?
最も上質な炊飯ができるコースで炊き上げ、その香りや味、食感を比較しました。お米は岩手県産ひとめぼれ(無洗米)を使用。コシヒカリの強い味わいと、ササニシキのさっぱりした味の中間にあたる、バランスの取れた味のお米です。米は3合で炊飯。今回は機種の味の傾向を知るために、中庸(ふつう)の食感設定を選択しました。
また、食感と食味は炊きたてに加え、冷やごはんと冷凍・再加熱したものについてもチェックしています。冷やごはんは、炊きたてをラップに包んでおにぎりにし、室温で5時間ほど冷ましたものを試食。冷凍ごはんは、炊きたてをラップに包んで冷凍庫で冷凍し、1日経ったものを電子レンジで温めました。
<炊き上がり>
みずみずしさがあり、食感・味ともにバランスが良好
銘柄炊き分けで「ひとめぼれ」の無洗米を選び、「銀シャリ」コースで銘柄米ごとの「おすすめ」コースを選んで炊飯。おすすめコースでなく「かため」「やわらかめ」を選ぶこともできます。約50分で炊き上がったごはんは、炊きたての濃厚な香りのなかにみずみずしさも感じられ、食欲をそそります。
ひと口食べてみると、柔らかすぎず固すぎず、しっかりとした弾力とほどよい粘り気があります。甘みが強く、さらに米本来のみずみずしいうまみも感じられ、味のバランスも良好だと感じました。
<冷やごはん(おにぎり)>
しっとり感が加わり、米粒それぞれが水分の層をまとったイメージに
本機はWおどり炊きの技術に加え、追い炊き時に「220℃IHスチーム」を投入。これが米の表面に浮き出たうまみをコーティングするのだとか。この“うまみの膜”により、冷めても水分が逃げず、おいしさがキープできるのだそうです。
実際に食べてみると、冷やごはんもモチモチした食感で、さらにしっとりした食感が加わりました。とはいってもごはんがべタついたり、柔らかくなったりすることはなく、弾力のある米粒それぞれが水分の層をまとっているイメージです。近年の「Wおどり炊き」は冷やごはんもおいしいと評判ですが、最新機種でもそのおいしさはしっかり継承されています。
<冷凍・再加熱>
見ためは「惜しい」が、食感と味は炊きたての状態に極めて近い
さらに、冷凍ごはんをレンジ加熱すると、ベタつきがほとんどありません。5機種の中でも食感と味が炊きたての状態にかなり近いと感じました。
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「Wおどり炊き」徹底レビュー テストその2 食感炊き分けの幅は?
その炊飯器で「最もしゃっきり硬めの食感に炊き上げるモード」と、「もっとももちもちに炊き上げるモード」で炊飯。それぞれの食感の違いを見ることで、その機種が実現できる食感の幅を確認しました。
「しゃっきり」モードでも「もちもち」モードでも食感のバランスの良さが光る
本機は「銀シャリ」モードで10種類の食感が選べます(「少量」モード含む)。一方銘柄炊きを選ぶと、各銘柄に合った炊き方にチューニングした「おすすめ」と「かため」「やわらか」の3種類のうちから食感を選ぶことになります。今回は銘柄炊きではなく、通常の「銀シャリ」モードの中から「よりしゃっきり」と「よりもちもち」を選びました。
「よりしゃっきり」で炊いたごはんは、その名の通り粘り気が少なく、口の中でホロっとほどける食感に仕上がりました。ただ硬さは、三菱電機「本炭釜」の「ふつう」の食感選択で炊いたものより、かなり柔らかいです。弾力が強すぎるのはイヤだけれど、ごはんが硬いのも苦手、という人には最適でしょう。甘みは、「ふつう」の食感設定で炊いた場合より控えめに感じました。
一方、「よりもちもち」で炊飯した場合は、やはり粘り気がかなり強くなっていました。ただ、これは意外だったのですが、口の中に入れると適度にほぐれてくれます。モチモチなのにほぐれる感覚もあり、適度に柔らかい炊き上がりになっていました。「よりしゃっきり」の場合もそうでしたが、両極端な食感のなかでも、バランスが良く食べやすい仕上がりになるのがパナソニックの特徴といえます。
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「Wおどり炊き」徹底レビュー テストその3 少量炊飯の炊き上がりは?
これまで同様、米は岩手県産ひとめぼれ(無洗米)を使用。米1合を標準(ふつう)の食感設定で炊飯し、3合炊きしたときのごはんの味・食感との違いをチェックしました。
ふっくら感は減り、しゃっきり感がアップした
本機は10種炊き分け機能の中に「少量」モードを搭載。このモードは銘柄選択をした場合は使えないので、3合炊きのチェックと同様の「銘柄無洗米/食感:おすすめ」モードでなく、通常の「白米・無洗米/少量」モードで炊飯しました。
香りに関しては、炊き立てごはんの香りが豊か。米の持つみずみずしい香りはやや弱くなりました。食感は、3合で炊飯時に比べ、ふっくら感が後退し、口の中でほぐれる感じが強まりました。弾力も、3合を炊いたときと比較するとやや後退。ただ、少し時間が経つと食感が柔らかくなり、もちもち感も少し強まりました。
ごはんの味は、最初は3合で炊いたときより甘みが弱く感じましたが、食べるうちにどんどん甘みがアップ。また、香りの評価では「みずみずしさが後退」と書きましたが、口に入れてみると、甘みの中に米のみずみずしい風味がしっかり感じられました。
ちなみに、本機は、「銘柄無洗米/食感:おすすめ」モードでも1合炊きをしてみました。こちらのほうが食感が柔らかくてもちもち感が強く、甘みが最初から強めに感じられました。一合炊きでもちもち系が食べたいなら銘柄選択&「食感:おすすめ」モード、しゃっきり系が好みなら「少量」モードと使い分けるのがいいでしょう。
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「Wおどり炊き」徹底レビュー テストその4 保温性能は?
最もオーソドックスなモードで、3合炊きしたごはんを24時間保温。炊飯6時間後の味と食感とニオイ、24時間後の味と食感とニオイをチェックしました。
24時間経っても濃厚なごはんの甘みに驚き
保温6時間後のごはんは、やや柔らかさが増してきた印象。もちもち感がやや落ちてきたように感じました。ただ、甘みは相変わらずすっきりとして雑味がなく、保温したごはん特有のイヤなニオイも感じられませんでした。
保温して24時間経つと、保温時特有のニオイがわずかに感じられました。食感はかなり柔らかくなり、モチモチ感もなくなっています。ただ、味は意外に臭みがなく、まだまだ甘みがしっかりしています。
本機は炊飯時だけでなく、保温時にもスチームを定期的に供給して、ごはんの潤いを保つのが特徴(スチーム保温)。具体的には保温開始から約6時間後と約12時間後にスチームを自動投入するようになっています。そのため、ごはんが乾燥して硬くなることはありませんが、柔らかくなるのは避けられません。特に24時間保温すると食感の劣化は顕著。長時間保温するより、やはり炊き立てを冷凍・再加熱するほうがおすすめだと感じました。
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「Wおどり炊き」徹底レビュー テストその5 操作性/メンテナンス性は?
「操作性」に関しては、炊飯設定する際の液晶パネルの見やすさや、ボタン操作のしやすさをチェック。特に、目的の炊飯設定にするまでの工程に注目し、取扱説明書を見なくても炊飯設定がスムーズにできるかどうかを確かめました。「メンテナンス性」に関しては、炊飯後に洗うパーツの数や洗いやすさ、フレームに付いた汚れや露の拭き取りやすさをチェックしました。
<操作性>
多彩な銘柄炊き分けを階層表示でスムーズに設定可能
炊飯設定は、左側にある「お米」ボタンと「炊き方」ボタンでそれぞれのメニュー画面に入り、右の上下ボタンで希望の設定を選んで「決定」ボタンを押します。
「お米」メニュー画面には「白米/無洗米/玄米/銘柄白米」などのメニューがあります。銘柄炊き分けをする場合は、「銘柄白米/銘柄無洗米」から炊飯する銘柄を選びます。本機は米の品種50銘柄の炊き分けができますが、選択する際はまず「あ行」「か行」などから入るので、目指す銘柄に素早くアクセスできます。
大きめの液晶パネルはバックライト式のフルドット液晶で文字がはっきり見え、文字自体も大きいです。
また、本機は待ち受け画面で「決定」ボタンを押すと各種機能の表示画面に入ります。ここには釜内のお手入れ機能があるほか、「かんたんガイド」を選択すると、炊飯時の電気代の表示やごはんをおいしく炊くコツなどを表示。取扱説明書なしにこれらの情報を得ることができるのは便利です。
ちなみに、本機は炊飯の際、「水容器」に水を入れてセットする必要がありますが、特に使い始めの頃は、この水のセットを忘れることが多いです。その場合、アラームなどで水の入れ忘れを教えてくれると、より親切だと思いました。
<メンテナンス性>
減圧弁搭載と軽くて丈夫な内釜で手入れは快適
洗うパーツは内釜、内ぶた、蒸気口カセット、水容器の4つ。よく汚れるのは内釜と内ぶたで、3合の炊飯では蒸気口カセットには水滴がつくだけ、水容器も汚れはほぼありませんでした。蒸気口カセットと水容器は、通常の炊飯後ならサッと水洗い、たまに洗剤で洗う程度で大丈夫そうです。また、内ぶた裏が調圧ボールでなく減圧弁になっているのは洗いやすいと感じました。
内釜は軽く、洗う場合もとてもラク。また、つゆ受け部などのフレームはステンレス製でフラットなので、拭き掃除も快適です。一方、水容器の上のパッキン部分は、水が溜まっているので毎回こまめな拭き取りが必要です。
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「Wおどり炊き」徹底レビュー テストその6 独自機能/設置性は?
「独自機能」は各炊飯器に搭載されている、ごはんのおいしさにつながる独自の機能や技術、炊飯のバリエーションを広げる機能などをチェックします。また、使い勝手向上やお手入れの省手間につながる便利機能も見ていきます。
「設置性」に関しては、横幅と奥行き、重さを確認します。また、炊飯中の蒸気の出方もチェック。さらに、設置性を高める独自の工夫があれば、それもチェックしていきます。
<独自機能>
50種類もの銘柄に対応する炊き分け機能が魅力!
「Wおどり炊き」や「220℃IHスチーム」、新技術の「加圧追い炊き」でごはんの甘みを引き出し、柔らかく弾力ある食感に仕上げる本機は、充実した炊き分け機能も大きな特徴。銘柄炊き分けは50銘柄に対応し、全国各地の銘柄を食べ比べしたい人には極めて魅力的な1台といえます。
また、「銀シャリ」モードでの食感炊き分けは、圧力をかける時間や投入するスチームの温度などの調整により、10種類の炊き分けが可能です。銘柄炊き分けを選んだ際も、「おすすめ」「かため」「やわらか」の3種の食感に炊き分けられます。
「銀シャリ」モードには、0.5〜1.5合の少ない量をおいしく炊く「少量」モードも搭載されています。ひとり暮らしや夫婦二人暮らしなどで、炊飯量の少ない家庭には便利な機能。ちなみに、筆者は1合を「少量モード」と「銘柄炊き分け/おすすめ」で炊飯しましたが、「銘柄炊き分け/おすすめ」のほうがよりもちもち・柔らかな食感に仕上がりました。様々なモードで試してみて、自分の好みに合った食感を見つけるのも本機の楽しみのひとつです。
そのほか、玄米や雑穀米、発芽米、分づき米の炊飯にも対応。特に玄米は、食感をよりもちもちに炊き上げるモードも搭載しています。ちなみに、パナソニック「Wおどり炊き」シリーズで評価が高いのが、保温中に蒸気を供給してごはんのパサつきを抑える「スチーム保温」機能です。
お手入れの面では、釜内を煮沸するだけでなく「Wおどり炊き」の加圧・減圧の技術を使ってニオイを除去する新機能を搭載。ニオイの低減効果が従来より約28%アップしたそうです。
内釜には軽くて丈夫な「ダイヤモンド竃釜」を採用。釜を構成する素材の中に中空セラミックスの添加量を約30%アップし、断熱性が約10%向上しました。
<設置性>
比較的コンパクトだが蒸気をそれなりに放出するため設置場所を選ぶ
横幅26.6cm、奥行き33.8cmと多機能にしては比較的コンパクトな設計。重量は7.0kgと、5機種のなかでは中間の重さです。ただし、炊飯中の蒸気はそれなりに出るので、レンジ棚など狭い空間や、梁が低い対面式キッチンのカウンターなどに置くと、炊飯器の真上が濡れてしまうので、注意しましょう。
取っ手の軸の部分にしゃもじをセットするポケットが付いているのも、意外に便利です。
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【テストのまとめ】
バランスのよいごはんに炊き上げ、多数の銘柄炊き分けに対応
上質炊飯の「銀シャリ」コースで炊いたごはんは、ふっくらしつつも柔らかすぎず、弾力と甘みに富んだバランスのよい炊き上がりです。冷やごはんはもちもち食感にしっとり感も加わり、おにぎりやお弁当に最適。冷凍ごはんの再加熱では、炊きたての味と食感がほぼ復活しました。1合炊きは「少量」モードで炊くとさっぱり食感に。銘柄炊き分けの「おすすめ」モードのほうがふっくらもちもちの食感になりました。
食感炊き分けは10種類。最も「しゃっきり」に炊くとほどける食感ながら硬さは柔らかめ。最ももちもちに炊くと粘りは強いが、ほどける食感も出てくるなど、どんな食感に炊いても食べやすさを感じます。また、50銘柄の炊き分けも魅力で、各銘柄のなかで3種類の食感炊き分けもできます。
保温の検証では、6時間経つとややモチモチ感が減退するものの、甘みがすっきりして雑味のない、おいしいごはんでした。
本機は液晶パネルが大きく、表示も階層式でスムーズに設定できます。米の銘柄の特徴やごはんをおいしく炊くコツをパネルに表示できるのも便利。内釜が軽くお手入れも快適で、圧力式炊飯器の割には内ぶたの手入れもそれほど面倒ではありませんでした。
独自機能は銘柄炊き分けや10種類の食感炊き分けなど、前述した通り。また本機はスチーム用の水容器を装備し、保温中にスチームを投入してごはんのうるおいを維持。「再加熱」ボタンを押すと、ごはんに炊き立ての食感が戻ります。
以上をまとめてみると、以下の通りです。
●ご飯のバランスを重視する人。どんなメニューでも食べやすく炊き上げる
●多くのお米の銘柄を試したい人。50種類の銘柄炊き分けに対応
●お弁当や冷凍ご飯をおいしく食べたい人
●メンテナンスがラクなほうがいい人。内釜が軽く、減圧弁の採用で洗いやすい