日本でサイクロン式掃除機が大ブレイクして、はや10数年――。家電量販店などではいまだ人気の家電ですが、実は最近、やっぱり昔ながらの紙パック式がいい、と回帰するユーザーも増えてきています。つまり今、掃除機の集塵システムは、サイクロン式と紙パック式に選択肢が二分しているのです。
果たして、どちらを選ぶのが正解なのか?
そこで、@Livingでは「スティッククリーナー」や「衣類スチーマー」などの記事でおなじみの“家電のプロ”戸井田園子さんに相談。サイクロン式&紙パック式掃除機の選び方からおすすめの最新モデルまで、最新掃除機選びのポイントを教えてもらいました。
最新トレンドは「軽量化」と「紙パック式の人気再燃」
「サイクロン式掃除機の代名詞といえば、この機構を発明したダイソンでしょう。登場したのは1980年代で、’90年から本格的に日本へ上陸し始めました。しばらくはなかなか“日の目”を見ませんでしたが、2000年代に一大ブームに。国内の家電メーカーもこぞってサイクロン式の開発でしのぎを削り、“最新モデルの最上位機種はサイクロン式”という図式が生まれました。
ただ、まったく新しい機構をもつ家電をイチから開発するには大きな投資が必要です。必然的に販売価格が高くなった上、パワーを重視したために本体が大型化する結果にもなりました」(戸井田さん・以下同)
それまで独壇場だったサイクロン式は、欲しい人にはひととおり行き渡ったこともあって人気が一段落。3~4年前から、昔ながらの集塵方式である紙パック式の需要が、再び高まっているといいます。三菱電機やパナソニックなど、メーカーも一早くそのトレンドに注目。およそ50年もの間積み重ねてきた知見を基に、紙パック式本来の持ち味だった“軽さ”に立ち返り、軽量化を図りました。
「サイクロン式の特長が“排気のキレイさ”だったこともあり、当初は紙パック式の方向性もそちらへ舵を切りました。フィルターを高性能化するために、紙パック式の大型化が進んでしまったんですね。そこへ『コードレススティッククリーナー』が登場したことで、大型化の流れには終止符が打たれることになったんです。紙パック式キャニスターが一転、軽量化へと移行し始めたわけです」
“軽い”という最大の特長を備えた紙パック式が、再び注目を浴びることになったわけですが、当然サイクロン式を愛用しているユーザーも大勢います。特に“吸引力”という点においては、どちらも甲乙つけがたい性能差になってきているそう。そこでいま一度、両モデルのメリット・デメリットを整理すべく、戸井田さんにまとめてもらいました。自分がどちらに向いているのか、まずは確認してみましょう。
サイクロン式のメリット・デメリット
・吸引力が持続する
・紙パックを購入する手間とコストがかからない
・ゴミが見えるので達成感を感じられる
・ゴミ捨ての際にゴミに触れる可能性がある
・ダストボックスのこまめな手入れが必要
紙パック式のメリット・デメリット
・紙パックごと捨てられて楽な上、手が汚れない
・最新モデルは掃除機本体が軽く小さい
・紙パックの購入費と買う手間がかかる
・ゴミが溜まってくると吸引力が落ちる
サイクロン式/紙パック式の失敗しない選び方
サイクロン式を買うなら手入れしやすいモデルを
「サイクロン式最大の良さである、“集塵力が持続できる”“排気とゴミが分離できる”点をハイレベルで実現しているモデルは、現時点では大手メーカーの上位モデルに限られます。まずは、しっかりと遠心分離が行われているタイプを選びましょう。また、手入れがサイクロン式のキモになってくるので、どのパーツが洗えるかは忘れずにチェックを。ダストカップだけが洗えるダイソンに対し、メカの細部まで丸洗いできる国内メーカーのモデルもありますし、排気フィルターの手入れの方法もさまざま。自分がどこまで清潔さにこだわるのか、意識することが大事です」
紙パック式を買うなら排気性能に優れた上位モデルを
「“ゴミに触らないで済む”のが最大のメリットですから、紙パックを取り出したときに、入り口の穴をシールドによって塞げるタイプのものを選びましょう。また、排気の性能は紙パック自体に左右されますから、本体の性能とバランスがとれている純正品が確実です。ただ、海外メーカーは純正紙パックの価格が高い傾向があるので、国内メーカーのほうがコストの負担は少なくて済みますね。100円ショップにも紙パックは売っていますが、排気性能にも影響するため、使用には気をつけた方がいいと思います」
さて、ここまでのサイクロン式と紙パック式の特徴が把握できたら、自分に合ったモデルを見つけるだけ。続いて、戸井田さんオススメのサイクロン式4種、紙パック式4種をご紹介します。長く愛用することになるであろう掃除機ですから、じっくり自らのニーズを満たすものを選びましょう。
家電のプロが選ぶ、サイクロン式掃除機ベスト4
「性能重視で手入れが楽。アタッチメントも充実しています」
三菱
サイクロン式掃除機 風神 TC-ZXG30P
実売価格7万円前後
「サイクロンボックス」を丸ごと水洗いできるタイプ。同梱のアタッチメントが充実しており、エアブロー機能用のノズル・2WAYロングノズル・アレルパンチふとんクリーンブラシなど、シーンに応じた掃除に対応する。自走式パワーブラシにはアレル物質を除去する”アレルパンチ植毛”を備えるなど、高次元の機能が詰まったフルスペックモデルだ。
「手軽さを求めるなら、価格も手頃なスティックタイプに」
シャープ
コードレス掃除機 RACTIVE Air(ラクティブエア) EC-A1R
実売価格4万円前後
パイプ部の素材にドライカーボンを採用するなどして軽量化を図り、総重量1.5kgという驚異的な軽さを実現。棚の上などの高所も楽に掃除できる。また、ラバー製の「ちょいかけフック」のおかげで、少し手を離したいときにカウンターなどにサッと立てかけることも。ダストカップはフィルターまで丸洗いできる。最上位モデル「EC-A1RX」(実売価格6万5000円前後)なら、バッテリーを2個付属する上、アタッチメントも豊富だ。
「トランスフォームさせたい! そんな男心もくすぐります」
日立
コードレススティッククリーナー パワーブーストサイクロン PV-BEH900
実売価格8万7000円前後
スティックタイプのクリーナーだが、複数のヘッドやノズルによる“変形”とも呼ぶべき多彩なアタッチメントを持っている。玄関、窓、床、棚の上はもちろん、クルマや布団、引き出しの中など、あらゆる局面に使える。電池はカセット式で、暗い場所でも見えるLED付き。男性好みのギミック感あふれる一台だ。
「トリガーを握るだけの“意思に追従する”気持ちよさ」
ダイソン
コードレスクリーナー Dyson V8 Fluffy+
実売価格7万8000円前後
言わずと知れた、サイクロン式、さらにスティッククリーナーを代表するダイソンの最新モデル。大小のゴミを同時に吸い取る「ソフトローラークリーナーヘッド」、最新の独自モーターでより強力になった吸引力が特徴。0.3 μmもの微細な粒子を99.97%以上捕らえる「ポストモーターフィルター」で排気もクリーンだ。稼働時間が10分程度短くなるものの性能はほぼ同等の廉価モデル「V7」(実売価格6万1000円前後)もある。
家電のプロが選ぶ、紙パック式掃除機ベスト4
「サッと出し入れできる手軽さが人気のモデルです」
パナソニック
紙パック式掃除機 Jコンセプト MC-JP800G
実売価格5万3000円前後
外装やノズルの素材に中空ガラス配合プラスチックを、モーターの素材にアルミを採用するなどし、本体重量はキャニスター型で業界最高水準の軽さを誇る2.0kg。従来モデルより長いノズルで身体に近いポジションをキープできるため、腰への負担が軽減した。目に見えない約20 μmのハウスダストも検知する「ハウスダスト発見センサー」を搭載し、掃除の成果を実感できるのもうれしい。
「手術室レベルのとにかくきれいな排気が持ち味」
日立
紙パック式クリーナー かるパック CV-PE700
実売価格6万5000円前後
排気の清浄さは驚異的。ドイツの第3者機関で認定された排気クリーン度99.999%とは手術室レベルだ。外装の素材にカーボンライトを採用し軽量化を図ったほか、気密性を高めた「ジェット吸引機構」で強い吸引力を実現する。ヘッドは上部からも空気を取り込むことで、床への張り付きを防止しながら、押しても引いてもしっかり集塵できる。
「軽くて低価格だから、ひとり暮らしやシニアに最適です」
三菱
紙パック式掃除機 Be-K(ビケイ) TC-GXG8P
実売価格2万8000円前後
本体素材に軽くて強いカーボン樹脂、軽量モーターを採用し、本体重量2.1kgを実現した。持ちやすい「フィジ軽グリップ」や取り回ししやすい大径車輪も相まった、機動性の高さもポイント。軽量かつ高性能を求めるシニア層にも適している。最上位「TC-GXG10P」(実売価格3万6000円前後)は、ヘッドのブラシを引き抜くだけで絡んだ毛が取れる仕組みも搭載する。
「ドイツで培われた、何十年も使える質実剛健モデルです」
ミーレ
Compact C2 SDCO 0 OB Clean Meister SDCO0
実売価格6万4800円
ドイツ製ならではの20年保証付きで、“最上のクオリティを求める人”向け。海外ブランドだけあって、ボディサイズやホースの長さは日本の家屋に対してやや大きく、取り回しには慣れが必要だが、作業半径は最大13mと、コンセントを差し替えることなくひと部屋掃除を終えられる。1000Wもの強力な吸引力に個性的なデザインも含めて、家電好きから根強く愛されている。
Profile
インテリア&家電コーディネーター / 戸井田 園子
大手プレハブメーカーのインテリア研究所でインテリアコーディネートを担当したのち、商品企画部へ。その際に習得した、商品の性能・デザイン・価格などを総合的に比較して優劣を見極めるテクニックを活かし、インテリア&家電コーディネーターとして独立。情報ポータルサイト「All About」のガイドをはじめ、テレビ・新聞・雑誌など各メディアで活躍している
■何気ない日常を、大切な毎日に変えるウェブメディア「@Living(アットリビング)」