ダイソンといえば、強い吸引力を武器に、コードレス掃除機の国内トップシェアをひた走るブランド。家庭用のイメージが強いですが、なんと、Solaseed Air(ソラシドエア)という航空会社の整備士が、業務で使用しているというウワサが耳に入ってきました。しかし、同社はなぜ、通常の業務用掃除機ではなく、ダイソンを選んだのでしょうか? そのナゾを解くため、羽田空港・新整備場駅近くのソラシドエア東京オフィスを訪れて整備士さんを直撃。導入の経緯をはじめ、どんな作業に使い、実際に使ってどうだったか? など、気になる点を聞いてきました!
限られた時間で飛行機を整備し、安全に飛ばすのが整備士の使命
ソラシドエアは宮崎県宮崎市に本社を持つ、地域密着型の航空会社。東京(羽田)-九州、沖縄-九州、神戸、中部、石垣を結ぶ空の便が充実しており、大手に比べ格安の料金で利用できるのが魅力です。それでは、早速、同社の整備士さんにインタビューしていきましょう!
「はじめまして。整備士の榊原美咲(さかきばら・みさき)です!」。おお、思っていたより若い! 聞けば、2016年入社で、実務に就いてまだ2年めとのこと。整備士になった動機を聞くと、「子どものころに乗った飛行機で、窓から見えた整備士さんたちを見て、『あの人たちカッコイイ!』と思ったのがきっかけです」とうれしそうに答えてくれました。また、整備士という仕事については「飛行機を安全に飛ばす使命感と責任感、また、それを行う技術と知識を持つプロフェッショナルな仕事だと思っています!」との熱いお言葉。その初々しい表情に、こちらも思わず笑みが浮かんでしまいます。ちなみに、整備士ってどんなことをするんですか?
「当たり前なのですが、整備士は機体を整備するのが一番の仕事です(笑)。朝、飛行機が出発する前に整備して、日中は便の発着の合間の30分ほどの時間で急いで整備。飛行機がすべてのフライトを終えて帰ってきた夜も、また作業をします。具体的には、パイロットから異常がないかヒヤリングしつつ、タイヤを点検・交換したり、エンジンに不具合があった場合はコンピュータで原因を調べたりもします」(榊原さん・以下敬称略)
「整備士の清掃」は企業理念から派生した独自の取り組み
あれ、業務内容に掃除が含まれていないみたいですが、ダイソンはどこで使うのでしょう? 聞けば、もともと整備士の仕事には機内の掃除は含まれていないそう。整備士が清掃を行うのは、ソラシドエア独自の取り組みのようです。では、その取り組みの内容と意図は何なのか? 企画の担当者である同社整備企画グループの佐野一斗(さの・かずと)さんが答えてくれました。
「『整備士が機内の掃除をする』という新たな取り組みを始めたのは、2017年の7月から。通常、客室の清掃は委託先の専門スタッフが行いますが、限定的に1日のなかで1時間程度、整備士が機内の清掃を行います。これは、当社の企業理念から派生したもの。当社は『空から笑顔の種をまく』を合い言葉に、お客様や地域の方々に親しみやすい航空会社を目指しています。ただ、整備士という立場で、それを実現するのは難しいですよね。そこで、整備士がより機体に愛着を持ち、お客様に快適な旅を提供するために、この取り組みを企画しました」(佐野)
なるほど、この取り組みは、整備士さんに「企業理念を自分ごととして捉えてほしい」という会社からのメッセージ。そして、いつもは表に出ない整備士の方々が、お客様のために「隠れたおもてなし」をする貴重な機会だったのです。確かに、床やシートを整備士さんたちが掃除したんだな……と想像すると、その存在がもっと身近に感じられますよね。
ダイソンAnimalproだと疲れずに掃除できてニオイや音も気にならない
そして、この取り組みに使われているのが、ダイソンの上位モデルのひとつ「Dyson V8 Animalpro(ダイソン ブイエイト アニマルプロ・以下Animalpro)」。こちらは、ダイソンの最新シリーズのなかでも、特にヘッドのかきとる力が強いタイプ。現在は羽田に3台、5つのステーションに1台ずつ、合計8台が配備され、整備士さんに使用されているそうです。では、実際に使ってみた印象を、榊原さんに聞いてみましょう。
「前に使っていた業務用のキャニスタータイプは、コードをいちいち付け替えるのが面倒でした。その点、Animalproはコードを気にせず、掃除したい場所がすぐに掃除できます。軽いので、私のような女性でも疲れずにずっと掃除を続けられるのもいい。あと、業務用は音もニオイもキツかったんですが、Animalproは全然気にならないんですよ。とにかく、すごくいいです!」(榊原)
普通のコメントに思えますが、さすがは整備士さん、観察眼が鋭い。例えばニオイの部分。実は掃除機からのニオイの原因は、排気に混ざった微細なゴミのニオイがほとんどだそう。その点、本機は2層15個のサイクロン機構「2 Tier Radial™ サイクロン」(ツーティアー ラジアル サイクロン)で強力な遠心力を発生させ、ニオイの原因となる微細なゴミをきっちり分離。0.3ミクロンもの微細な粒子を99.97%以上捕集したうえで、「最後のひと押し」として、排気口にポストモーターフィルターを設置しているとのこと。
豊富なアタッチメントを使い分け、機内の隅々まで掃除する
そして、音の部分でいえば、音響工学に基づく設計を採用し、運転音が従来機に比べ50%も低減。音質も改善し、耳障りな成分を抑えているそうです。榊原さんの指摘は、実に的を射ていたわけですね。ほかにも気づいた点はありましたか?
「アタッチメントが多いのがうれしい! いろいろな場所で使い分けができるから、コックピットなど、たくさんの機器があるデリケートな場所でも役に立ってくれています。例えば、足元にペダルがある場所は、ノズルを使って、グッと手を伸ばして吸引。操作パネルの上は、コンビネーションノズルのブラシ部分を延ばして使えば、スイッチ類を傷めず掃除できます。それから、お客様の座るシートは、かきとる力が強いミニ モーターヘッド。空気が出入りするダクトは、細長い隙間ノズルを使います。天井にあるダクトは延長ホースを使って掃除していますね」(榊原)
掃除を怠るとセンサーがうまく働かないことも
場所に応じてしっかりとアタッチメントを使い分け、念入りに掃除をしているんですね。ちなみに、もし掃除を怠ってしまうと、どのような悪影響が出るのでしょうか?
「吸排気のダクトが汚れてくると、お客様にも見えてしまいます。ホコリが詰まっているダクトから空気が出てきたときに、パーッとホコリが一緒に舞うかもしれないじゃないですか。それを見たらお客様も『うわー』って思いますよね。あとは、温度センサー。お客様の座ったときにちょうど真上のあたり、スポンジ状の部分に隠されています。もし、そこにホコリが詰まってしまうとセンサーがうまく働かなくなり、温度調節に悪影響が出て、お客様に不快な思いをさせてしまいます。整備の目線でいえば、そうした部分の細かいホコリもしっかり取ってくれるのがうれしいですね」(榊原)
自由自在に動くジョイント部分もお気に入り
加えて、「萌えポイント」と称する、榊原さんならではの気に入った点があるとか。
「私の『萌えポイント』はこのヘッドとパイプを接続している球形の部分なんです。この機構がいいですよね! 飛行機のシートの下は器物が多いので、本来はそこを掃除するとなると、自分が苦しい姿勢を取らなければいけません。でも、Animalproは、この球形のジョイント部分がグリグリ動くので、立ったまま手首を動かすだけでヘッドが届いてくれます。ここが一番の『萌えポイント』ですね(笑)」(榊原)
実は、この点もご明察。この球状の部分には「V-Ball™テクノロジー」と呼ばれる独自技術を搭載。小さい回転半径で素早い方向転換を可能とし、正確なコントロールを実現します。キャニスター型掃除機に使われている技術ですが、実は、Animalproにも搭載されているんです。
ゴミが取れる「エビデンス」と「現場のモチベーション」を考慮してダイソン導入を決定
では、ひととおりダイソンの魅力を聞いたところで、いよいよ本題。安価な業務用掃除機はいくらでもあったはずなのに、なぜ高価な家庭用のダイソンを選んだのでしょうか? 佐野さんに聞いてみました。
「当初は、通常の小型掃除機を使ったり、大きな業務用の掃除機を借りて使ったりしていたんですが。ダイソンが私のまわりで話題になっていて『使ってみたいな』という個人的な思いがありまして(笑)。Animalproを1台買って検証してみたんです。ウチの部では何かを始めるとき、まず検証してみて、エビデンス(証拠・根拠)を出すという文化がありまして。すると、業務用も吸引力はすごいんですが、実際に取れたゴミを計測して比べてみたらAnimalproのほうが取れていて。家庭用なのにスゴいなあと」(佐野)
かつては技術部でエンジニアをしていたという佐野さん。独自にデータを出すとはさすがです。そして、その厳しいエンジニア目線で見たうえで、そのお眼鏡にかなったのがダイソンだったというわけですね。さらに、「ダイソンだったら現場のモチベーションが上がると思った」と佐野さん。その辺り、榊原さんはいかがでしょう?
「たしかに、Animalproで掃除をすると、吸った汚れが目に見えるんですよね! 細かいホコリもたくさん取れるので、クリアビンのなかに、どんどん粉ゴミがたまっていくのが見えて。よしよし、これは取れてるなあと(笑)。仕事だというのを忘れてすごく楽しくなります。しかもワンタッチで、ゴミを一発で捨てられるから気持ちいい!」(榊原)
企画に必要な「違い」を出すため、目を引くボディも魅力だった
「現場が一番なので、楽しく掃除をできるというのはありがたいですね。また、こういった企画には、ある程度目に見える『違い』を出したい。その点、通常の業務用にはない、Animalproの目を引くボディも魅力でした。余談ですが、整備士だけでなく、オフィスワークの社員も、定期的に機内清掃に取り組むというイベントを行っていて。そういうときは、『ダイソンが使いたい』とみんなで取り合いになります(笑)。気持ちを盛り上げてくれて、きっちり成果も出してくれるんですね。導入して本当によかったなと思います」(佐野)
ちなみに、お二人のご自宅ではダイソンを使っているのでしょうか?
「持ってないんですー。Animalproを使う前に、コードつきのものを買っちゃっていて。あとから『こんないいのがあったんだ』と思って、少し後悔しました。これが家にあったらコードレスでラクだし、吸い方がぜんぜん違うし、毎日掃除するのになぁ、と(笑)」(榊原)
「私も本当に欲しいんですけど…うちで使ってるのは普通の掃除機ですね(笑)。実は、整備課長が自宅で使っていまして、『いいよー、ダイソンは』って言うんです。ダイソンのおかげで、整備課長は家で率先して掃除をしてるみたいですね。ダイソンなら、女性のみならず、男性でも楽しく掃除ができると思います」(佐野)
と、それぞれの思いを熱く語ってくれたお二人。お話を総合してわかったことは、Animalproが、まず佐野さんの企画者目線、およびエンジニア目線をクリアしたことで導入が決まったということ。実際に使用された現場では、榊原さんの整備士として、女性としての要求を完全に満たしたということになります。そして、いうまでもなく「飛行機の機内」は起伏に富み、デリケートな機材も多い過酷な環境。ここで十分に活躍できたということは、家庭でも間違いなく活躍できるという確かなエビデンスになります。また、「あそこは清掃に力を入れている」と顧客に印象づけるなら、宿泊施設や飲食店が導入してもいいですね。飛行機の整備士がお墨付きを与えたAnimalpro、ぜひみなさんも試してみては?