家電
炊飯器
2018/4/3 20:14

新興メーカー「シロカ」の苦闘は実るのか? 「居候」と呼ばれた男が「極上の土鍋炊飯器」に至る壮絶な4年間

「外装が溶ける」「おこげができすぎる」など「家電化」には大きな苦労が

シロカでかまどさん電気の開発を担当した佐藤一威(さとう・くにたか)氏は、極めて原始的だった最初の試作品からのヒーター部の変遷を見せてくれた。最初期の試作品は、陶器で熱を遮断するように周囲にはガラスウールを、中にニクロム線の電熱線を配置したもの。しかし、まったくうまく炊けなかったという。

↑シロカでかまどさん電気の開発を担当した佐藤一威氏(右)。左が安尾雄太副社長

 

↑最初期の試作品

 

次に紹介した試作品では、ヒーターの熱を効率的に与えるために苦心し、何とか炊けるようにはなったものの、「ただ炊けるだけで、味はまずかった」と佐藤氏は語る。200VのビルトインタイプのIHクッキングヒーターなどに比べ、100Vと貧弱な家庭用電源で効率的に熱を土鍋に与えることばかり考えたため、外装が溶けるといったトラブルにもぶつかったという。

↑電気圧力鍋のような形状をした試作品。「IHに比べて熱効率が悪いので、電気の熱のロスがないようになんとか土鍋に熱を伝えようと考えました」(佐藤氏)

 

もうひとつ、最も苦労したポイントのひとつが「おこげができすぎてしまう」ことだった。土鍋の周囲を包むようにヒーターを配置したことで、温めやすくなったはいいが、土鍋自身の蓄熱性が高いため冷めにくい。そのため、火が通り過ぎてしまうのだ。佐藤氏はその点を踏まえ、現在の形に近い試作品(下写真)を作成した。ヒーター部の下部にファンを配置したのだ。

↑佐藤氏が手に持っているのが、現在の製品に近い形の試作品だ

 

「通常の炊飯器には保温のためにファンを付けていますが、こちらは風を送って全体を冷却するためにファンを設け、均等なすき間を設けてこれ自身も冷却するという構造を作りました。これでなんとか白米をおいしく炊けるようになりました」(佐藤氏)

 

予熱を入れることでようやくお墨付きをもらう

こうして白米をおいしく炊けるようになったものの、「今度は試食する中で、『これはかまどさんの味じゃないだろう』と散々怒られたのです」と佐藤氏は続ける。

 

「次に苦労したのが、お米を浸漬する、沸騰させる、蒸らすという炊飯プログラムの工程を、土鍋にどう最適化するかということです。直火炊きと同じようにしようと思ってガス火で炊いた温度特性を取り、それをそのまま再現したのですが、うまくいきませんでした。ガスの力と電気の力ではガスの方がエネルギーがあるので、家庭用電源では及びません。そこで、かまどさんとは別の発想が必要になりました」(佐藤氏)

 

その発想とは、土鍋に予熱を入れること。これも、最も苦労したポイントのひとつだ。

 

「IHのように急激に沸騰工程まで持っていきたいのですが、土鍋はそもそも温めるまでに時間がかかるので、ヒーターを弱めに入れて温める予熱工程を入れました。これは、寒い日に(土鍋内の)お米の温度と外の温度が乖離すると、土鍋が温まらないでお米が温まってダレてしまうため。その土鍋と中の温度の乖離をなるべく抑え、均一にするのに苦労しました。そして、ようやく(今年の)1月末に『かまどさんと同じ味になった』とようやくお墨付きをいただいたところです」(佐藤氏)

↑かまどさん電気でご飯が炊き上がったところ

 

本機の登場で「極上のご飯体験」を得る選択肢が増えたのは間違いない

プレスツアーでは、かまどさん電気で炊いたご飯が提供された。そのご飯はつややかでハリがあり、しっかりとした歯ごたえがありつつもモチモチ感も感じられる。最近はやりの圧力IH炊飯器で炊いた柔らかめの炊き上がりとは違い、ひとつひとつの粒感があり、冷めてもおいしく食べられるのが特徴だ。大手メーカー各社のプレミアム炊飯器が10万円を超える価格で販売されていることを考えると、直販価格7万9800円(税抜)という価格も決して高くはないのかもしれない。土鍋を洗ってから、毎回乾燥させなければならないというひと手間はかかるものの、人気の土鍋ご飯をボタン1つで炊ける手軽さは大きな魅力だ。

 

ただ、かまどさん電気では炊飯以外の調理ができないという点が残念に感じられる。「鍋とヒーターを組み合わせた炊飯器」という意味では、鋳物ホーロー鍋とIHヒーターを組み合わせた愛知ドビーの「バーミキュラ ライスポット」がかなりコンセプトとして近い。しかしバーミキュラ ライスポットの場合、炊飯だけでなく無水調理(水を使わず、食材や調味料の水分だけを使って調理する方法)や煮物、炒め調理、低温調理などさまざまな調理に利用できる。実売価格もまったく同じ7万9800円(税抜・ライスポット ミニの場合は6万4800円)とあって、大きなライバルになるのではないだろうか。

 

とはいえ、他社のプレミアム炊飯器もほとんど炊飯以外の調理機能を搭載していないので、調理機能がない点はかまどさん電気だけの弱点というわけではない。かまどさん電気の登場によって、我々消費者にとってはまたひとつ「極上のご飯体験」を得られる選択肢が増えたことは間違いないだろう。

 

長谷園×siroca

かまどさん電気 SR-E111

●価格:7万9800円(税抜)●サイズ/質量:約W30×D30×H26.1cm/約7.6kg●炊飯モード:白米(炊飯・おこげ)1〜3合(おかゆ) 0.5〜1合、玄米(炊飯)1〜2合(おかゆ) 0.5〜1合、雑穀米(炊飯)1〜3合(おかゆ) 0.5〜1合●炊き分け:炊飯3種(かため・ふつう・やわらか)、おこげ3種(こいめ・ふつう・うすめ)、おかゆ2種(ふつう・やわらか)●消費電力:1300W●操作方式:タッチパネル●タイマー:炊上り時刻セット方式●付属品:取扱説明書、レシピブック、ブランドブック、しゃもじ、しゃもじ置き、米カップ、水カップ、手ぬぐい、鍋敷き

 

【おまけ】

話題の炊飯土鍋「かまどさん」はこのように作られる!

長谷製陶では工房見学も行われたので、その模様も紹介しよう。

↑土を練る工程。製品によって練る回数が異なるという

 

↑練った土を型の中に入れ、回しながら形を整えていく

 

↑土鍋を削って形を整えているところ

 

↑土鍋に取っ手を取り付けているところ

 

↑土鍋に釉薬を付けているところ

 

↑窯で焼き上げたらできあがりだ

 

↑こちらは昭和40年代まで使われていたという、16個の窯が連結された「登り窯」

 

↑こちらは4個の窯が連結された登り窯。年に1回だけ使われるという

 

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