家電
2019/6/19 17:30

躍進を続ける「中国家電」のヒミツとは? 現地のITライターが中国のモノ作りを分析!

PCやスマホだけでなく、テレビや生活家電に至るまで、中国メーカーの躍進が止まりません。かつて、中国製品は「安かろう悪かろう」の代名詞的存在でしたが、現在は「安くて良い」を地で行くのです。今回は、そんないま注目すべき中国メーカーたちを徹底的に解説します。

 

私が解説します!

ITライター

山谷剛史さん

2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国IT業界記事や中国製品レビュー記事を中心に執筆します。

 

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<参考:中国主要メーカー設立年年表>

70年代には地方政府の主導で国有企業や郷鎮企業と呼ばれる中小企業が多く設立されました。80年代末頃になると民間企業が増え始めます。

 

2001年に中国がWTO(世界貿易機関)に加盟。その後、深センでのモノづくりが盛り上がり、新進メーカーが多数登場しました。

 

Androidの登場が中国のモノ作りを加速させた

近年、家電やスマホなどで中国メーカーの飛躍がめざましいですね。中国メーカーが躍進した背景について、中国を拠点に現地のITトレンドを取材するライターの山谷剛史さんは次のように分析します。

 

「中国の製造業は、かつては小規模な部品メーカーなどが中心でした。現在のような先進メーカーが活躍する市場に転換するターニングポイントだったと私が感じているのは、Xiaomiのスマホが注目された2012年です。この年以降、中国のスマホの性能の良さがマニアに認知されるようになりました。これがその後、OPPOやファーウェイが画像処理AIへ積極的に投資し、高画質なカメラを武器に、シェアを急速に拡大した現在につながっています。

 

中国の製品全体を見ても、Androidの登場は大きな転換点だったと感じます。それ以前の中国製品は粗が多かったのですが、Androidの普及によって、アプリやサービスの修正やバージョンアップが容易になりました。つまり、部品を調達してAndroidを入れれば、安くて動作の安定した製品を作ることができるようになった。これで中国のモノづくりが大きく発展しました」(山谷さん)

 

では、今後の中国市場はどのように成長していくのでしょう。

 

「スマホなどのモノにはすでに頭打ちの感があり、新しいメーカーが割って入ったり、急成長したりということはなさそうです。そして、モノに代わって新たなサービスが続々と登場しています。今後は、WeChatやアリペイによるミニプログラム(クラウドアプリ)が伸びると考えています。これらは、アプリをインストールする手間なく利用できる利便性が支持されています。また、スマホを基盤とするサービスである生鮮食品や食事デリバリーの領域や、オンラインの教育・医療サービスなども、今後成長していくのではないでしょうか」(山谷さん)

 

↑2010年創業のXiaomiは、翌2011年よりスマホの販売を開始。高性能かつ低価格な端末で、中国のスマホ市場を牽引してきました

 

↑ミニプログラムのひとつである「WeChatミニプログラム」。インストールの手間なく様々なサービスを利用できます

 

急成長ぶりは数字にも現れている!データで見る中国経済の成長

中国経済の成長ぶりはデータからも見てとれます。輸出額の割合では2007年以降世界トップを走り、イノベーションの創出元となるユニコーン企業も多数集まるなど、世界経済を牽引する存在に成長していることがわかります。

<参考:国別のユニコーン企業数>

「ユニコーン企業」とは「評価額10億ドル以上の未上場企業」を指し、イノベーション創出の鍵として期待されます。中国は米国に次いで多く、62社が集まります。

2018年3月時点、CB Insightsレポートより

 

<参考:主要国の世界輸出に占める割合>

世界の輸出額全体に占める各国の輸出額の割合は、中国が右肩上がりの成長を続けます。2007年には米国などを抜き世界1位となりました。

経済産業省「通商白書2018」より

 

これだけは知っておきたい中国メーカーの”いま”

製品を目にすることはあっても、中国メーカーを取り巻く背景は意外と知らないという人も多いかもしれません。まず知っておきたい情報を整理してみましょう。

 

【Point 1】深セン・北京などを中心に新進メーカーが集結

中国の家電・デジタル製品メーカーの集まる地域としては、「アジアのシリコンバレー」として広く知られるようになった広東省深センがまず挙げられます。また、大学や研究機関が数多く集まる首都・北京もスタートアップを生みだす地域として注目されています。そして、山東省青島市には、1992年から産業開発区が置かれ、技術開発の拠点となってきました。なお、中国最大の経済規模を誇る広東省には、深セン以外にも多くのメーカーが集まります。

 

<深セン>

★ファーウェイ ★DJI ★ZTE ★Anker ★YIテクノロジー ★テンセント

比較的歴史が浅く、急成長を遂げた企業が多い。1980年代に創業し、比較的長い歴史をもつファーウェイやZTEもこの地が発祥です。

 

<北京>

★レノボ ★Bytedance ★DiDi ★Xiaomi

深センに並ぶイノベーション創出地。PC業界の巨人・レノボや、中国スマホの牽引役ともいえるXiaomiも北京で生まれました。

 

<青島>

★ハイセンス ★ハイアール

国家による「青島ハイテク産業開発区」が設置され、ハイテク企業が集まります。ハイセンス、ハイアールは、いずれもここが拠点です。

 

<広東省(その他)>

★マイディア ★ネットイース ★OPPO

中国の地域別経済GDPで首位の広東省には、家電のマイディアや、ポータルサイトのネットイースなどの業界大手も拠点を置きます。

 

【Point 2】 躍進メーカーによる統合や買収が激化、日本のメーカーとの関わりも強い

成長する中国メーカーには、買収や事業統合を積極的に実施しているところも多くあります。2016年に東芝の白物家電事業を傘下に収めたマイディアは、ドイツのロボテクス企業のクーカを買収。日本のロボット大手・安川電機とも業務提携するなど、従来の生活家電分野だけでなく、成長が予測されているロボット事業にも力を入れています。また、日本のPCメーカーとしてなじみの深いNECおよび富士通のパソコン事業は、現在はレノボとの合弁会社として運営されています。米国のスマホメーカー・モトローラも同社の傘下です。このように中国のメーカーは各国のメーカーとのつながりを強め、存在感はますます大きくなっています。

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