家電
2021/5/27 17:45

「ていねいに、うつくしく、こだわって。」──緻密なリサーチによりブランドカラーを鮮明に打ち出す「シロカ」に迫る!

手ごろな価格で性能十分な家電を多数手がける“バリューブランド”のルーツや、製品開発にかける想い、アプローチ方法についてインタビューを行う企画。今回は、シロカのヒット商品を紹介しながら、同社の成長の経緯とモノ作りの哲学に迫る!

※こちらの記事は「GetNavi」 2021年6月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

社名:シロカ

創業:2000年

本拠地:東京都千代田区

ヒット家電第1号:おうちベーカリー

2010年より家電事業に参入し、16年にシロカ株式会社へと社名変更。由来は白物家電。「ていねいに、うつくしく、こだわって。」をポリシーに、ユーザーのライフスタイルの充実を叶える機能とデザインを追求した製品を開発する。

 

【今回ピックアップする製品】

「健康」とコンパクトさにこだわった2020年の大ヒットモデル!

シロカ

おうちベーカリー SB-1D151

実売価格1万980円

身体にやさしい糖質オフパンや「米糀甘酒」などのヘルシーメニューを搭載。甘酒メニューはマルコメが監修し、「さらさら」「つぶつぶ」の2種類の食感が選べる。コンパクトサイズで設置場所を取らないのも好評だ。

SPEC●容量:1斤●消費電力:500W●自動メニュー数:20●焼き色:3段階●イースト菌投入:手動●具材投入:手動●予約タイマー:最大13時間●サイズ/質量:約W232×H253×D295mm/約3.6kg

 

↑シロカとニップンがコラボした糖質76%オフ食パンミックス(別売998円)。コレと水を入れれば誰でも手軽に糖質オフパンを作れる

 

↑上ブタに透明窓を備えており、コネの工程などを目視できて安心だ。パンの発酵具合も確認できるので、ついつい眺めてしまう!!

 

↑天面パネルでメニューを選んでスタートボタンを押すだけと操作は簡単。焼き色も「うすい」「ふつう」「こい」の3種類から選べる

 

【開発ストーリー】“憧れ家電”にフォーカスしてビジネスチャンスへ!

シロカが家電業界に参入した当時、ホームベーカリーは多くの人の憧れの家電である一方、あまり普及していなかった。同社はその要因を「価格」と考え、大手メーカーの3分の1以下の価格で製品化。本当に必要な機能を研ぎ澄ませて低価格を実現した。焼き上がりの味にもこだわってブラッシュアップを続け、大ヒットに。

 

↑2010年発売の初代モデルSHB-12W(当時価格6980円)。食パン2斤まで焼け、餅など13メニューを搭載した

 

↑2015年発売のSHB-712(実売価格1万4080円)。食パンの耳の硬さを調整できる。ジャムなど29メニューを搭載

 

【この人に聞きました】

シロカ 開発グループ マネージャー

小川大助さん

2016年入社。「すばやき」シリーズなどを担当。作る側のわがままにならない家電の開発を心がけている。

 

ホームベーカリーのヒットで家電業界に華々しく参入!

シロカは、シンプルなデザインと実用的な機能、リーズナブルな価格の家電で評判だ。自社ブランド第1号の家電であるホームベーカリーSHB-12W(2010年発売)が大ヒット。さらにその後コンベクションオーブンもヒットし、「シロカ=調理家電」のイメージを確立した。近年は扇風機や掃除機などのラインナップも広げている。

 

そんなシロカ製品のコンセプトは「やさしい家電」。調理家電なら「おいしさ」、季節家電なら「心地良さ」という〝中核価値〟を製品にしっかり備えることが重要だと、開発グループマネージャーの小川大助さんは語る。

 

「例えば最新作のすばやきトースターならば、ムラなくおいしく焼き上がる火力や水分含有率などを入念に研究して、製品開発につなげています」(小川さん)

 

また、もうひとつの定番人気モデルが電気圧力鍋だ。ボタンひとつで調理できる手軽さ、かわいらしいデザインが評判となり、のちの電気圧力鍋ブームの先鞭をつけた。

 

「ガス式圧力鍋は便利ですが、なかなか普及しませんでした。『ガス式圧力鍋は便利だけど蒸気がコワい』というイメージが最大の要因だったのですが、それを覆すため電気制御にして、安心して操作可能に。さらに、ポップなデザインにより、家庭に受け入れられるためのエッセンスを加えたのがヒットのポイントです」(小川さん)

 

【電気圧力鍋】

↑2017年発売のSP-D131。圧力調理のほか、無水調理やスロー調理など多彩な機能を搭載する。かわいらしいデザインも大ヒットの要因だ

 

【かまどさん電気】

↑伊賀焼の窯元・長谷園とコラボした炊飯器。人気土鍋「かまどさん」をそのまま電気化し、ツヤと甘み満点に炊き上げる。2018年発売

 

また、全自動コーヒーメーカーもコンパクトなボックス型デザインと味・香りへのこだわりがウケてロングセラーに。電気土鍋炊飯器のかまどさん電気は、“呼吸”する土鍋の性質を100%生かした加熱方法にこだわり、土鍋ごはん好きから圧倒的支持を集めている。

 

【全自動コーヒーメーカーカフェばこ】

↑累計販売台数50万台の全自動コーヒーメーカーの最新機種。手差しでも難しい蒸らしを自動化し、極上のコーヒーを手軽に味わえる

 

ロードマップに基づき商品企画を丁寧に具現化

シロカでは近年、商品企画の立案手法がより緻密になってきた。まず、カテゴリごとに「3年後にはこういう製品に進化する」「廉価版を発売する」などの中長期ロードマップを立てる。そのロードマップに則った企画を市場動向や新規機能とマッチングさせたり、商品化の際に絶対落とせない機能を複数挙げてその具現化について検証したりするなど、企画を細かく練っていくという。

 

「このやり方なら市場の声、お客様の声に寄り添った開発がいつまでにできるのかが初期段階である程度わかる。その結果、より『シロカらしさ』を商品に盛り込めるようになりました」(小川さん)

 

そんな製品開発の姿勢が最も顕著なのが、すばやきトースターである。内部構造や機能、ダイヤルのインターフェースを一新しており、特に構造に関しては特許を出願中。従来同社オーブントースターからかなり進化している。

 

「安いから欲しい」ではなく「多少高くても欲しい」家電に

2020年のシロカ製品で最も売れたのは、おうちベーカリーSB-1D151。ヘルシーメニュー搭載が特徴的だ。

 

「苦労したのは糖質オフパンメニュー。レシピの試作当初は強力粉を極力減らしたのですが、パンが膨らまずにおいしくなかった。そこで小麦タンパクの配合を変更。さらに本体の温度設定やコネの速度を試行錯誤しました。キッチンで邪魔にならないよう、小ささにもこだわっています」(小川さん)

 

「コスパが良い」と聞くと「安いから良い」という意味に捉えがちだが、シロカはそうは考えていない。

 

「私たちが思うコスパとは、『価格と価値』のバランスが取れているということ。いまは良いモノなら多少高くても売れるはずです。価格だけを追い求めると結局その市場はダメになる。『この機能があるからシロカでないと』と思ってもらえる〝ウリ〟を作っていくことが、これからますます重要になると思います」(小川さん)

 

【バリューブランドの真髄】新システムでトースターが劇的進化 斬新ケトルは“逆転の発想”がカギに

すばやきトースターは商品企画の仕組みを一新して開発された最初の製品。焼きムラの改善や、パンの中心部の水分含有率が一般的なトースターの2倍に増えるなど、従来機種より性能が一気に向上した。一方、おりょうりケトルは、ホテル用電気ケトルの故障原因の多くが「ケトル内でラーメンを作ったから」と判明し、逆に“ラーメンを作れるケトル”を着想した。

 

【すばやきトースター】

↑カーボンヒーター&熱風循環で外サクッ中もっちりのトーストになる。オートモードでクロワッサンも絶妙な焼き加減に

 

【おりょうりケトル ちょいなべ】

↑湯沸かしのほか、即席ラーメンの調理などに使えそのまま食べられる。単身世帯のミニ鍋としても人気だ

 

↑野菜や肉などの具材を入れて鍋料理もできる。鍋の底面に電源がないため、丸洗いも可能だ