この10年、掃除機は大きく進化した。主役はキャニスター型からコードレススティックに変わり、ロボット掃除機も世帯普及率が3割近くまで伸びている。そして今注目されているのが、ゴミを吸い取る吸引ではなく、床拭き掃除ができる製品だ。拭き掃除専用のロボット掃除機や、拭き掃除機能を備えた吸引タイプのロボット掃除機などが数多く登場している中、もう一つの選択肢が、回転モップを備えたスティック型の拭き掃除機である。
2021年11月1日にアズマが発売したLTMsブランドのコードレス水拭きモップクリーナー「Water CyCleaner(ウォーターサイクリーナー、以下サイクリーナー)」(実勢価格1万4800円/税込・以下同)も拭き掃除ができる製品。実際に借りて使ってみたので、その実力と使い勝手を紹介しよう。
高コスパ家電を手掛けるファブレス家電メーカー
最初にアズマについて紹介しよう。同社は埼玉県に拠点を置く家電メーカーで、ドン・キホーテなどの量販店やホームセンターなどのPBブランド家電の企画開発で実績がある。同社が新たに立ち上げたのが「LTMs(リトマス)」で、第1弾の製品が今回紹介する「Water CyCleaner」だ。なお、LTMs以外にも調理家電を展開する「NATUUL(ナチュール)」を同時に発表している。
このサイクリーナーは、回転するモップをヘッドに配置した拭き掃除専用の掃除機。いわゆるコードレススティック掃除機に近いフォルムを採用し、腰をかがめることなく拭き掃除ができる。本体サイズは、幅約304×奥行き約180×高さ約1210mmで重さは約2.4㎏。約3時間の充電で、約25分の連続使用ができる。ヘッドには2つのモップローラーを 取り付けることができ、電源を入れるとこれが1分間に約400回転しながら拭き掃除をしてくれる仕組みだ。
なおモップローラーは計4つ付属しているので、2つずつ交換しながら使うことができる。付属の専用台座にはモップローラーの収納部があり、使い終わったモップローラーを立て掛けて乾燥させることが可能だ。
1分間のアイドリング後に拭き掃除が可能に
早速掃除を始めよう。本体スティック部にタンクを内蔵。タンクはきれいな水を入れた「浄水タンク」と、 掃除後の汚れた水を集めた「汚水タンク」の二重構造になっており、準備としては浄水タンクに水を入れて取り付けるだけだ。
とはいえ、浄水タンクからの水は少しずつモップローラーに流れてくるため、すぐには水拭きができない。電源を入れたら、1分ほど洗浄・収納ベースの上でモップローラーを回転させ、しっかりと湿らせる。 モップローラーが十分に湿ったら掃除開始だ。
本体はモップローラーの回転に合わせて自走する仕組みなので、 その動きについて行くのもよし、後ろに引っ張って床を往復しながら掃除してもいい。汚れたモップは、ヘッド部分に内蔵されているワイパーにより絞られ、その汚水が汚水タンクに吸収される仕組みだ。1〜2回、床をモップローラーで掃除するとツヤっとして水拭きできたのがわかる。あとは部屋中の床を拭き掃除していけばいい。
便利だったのは、コーヒーや醤油など、水気のあるものを床にこぼしたときだ。実際に床に100mlほどのコーヒーをこぼしてみた。通常なら雑巾などを持ってきてコーヒーを吸い取り、その上で水拭きする必要がある。しかしサイクリーナーがあれば、1〜2往復するだけ。こぼれたコーヒーをしっかり拭い取り、さらにきれいに水拭きできた。掃除するのにタンクに水を入れたり、約1分間のアイドリングが必要なので、いつでもサッと使えるとまでは言えないが、手軽さは感じられた。使った後に水をセットしてあれば、素早く使えそうだ。
使い終わったあとはスタンドの台座で洗浄
水拭き掃除が終わったら、モップローラーのメンテナンスを行う。スタンドの台座は洗浄スペースとしても使え、そこに水(約100ml)を入れてサイクリーナーをセット。3分間回転させることでモップローラーが洗える仕組みだ。ただし、3分のタイマー機能などは備えていないのでスマホなどで計測しながら行うといい。
モップローラーの掃除が終わったらヘッドから取り外して、台座の横に立てかけて乾燥する。このとき汚れが強いようなら別途洗面所などで水洗いするといい。
この他、ヘッド背面のフィルターとフィルターカバーを取り外して水洗い。タンクを外して汚水を捨て、これも水洗いしてお手入れは完了だ。フィルター周りは毎回洗う必要はなさそうだが、ローラーヘッドと汚水タンクのお手入れは毎回やっておきたい。
サイ クリーナーでの水拭き掃除を何度か試してみたが、床のザラつきが取れるのは非常に快適。また、キッチンやダイニングなど、食べこぼしや調味料がこぼれたりするエリアがきれいになるのは便利だった。
注意点もある。まず、タンクには水以外入れられず、床用洗剤などは利用できない。そして当然のことながらゴミの吸引はできず、床に残るのだが水拭きした後だと濡れて掃除機で吸いにくくなってしまうので、 吸引掃除は事前に行う必要があるようだ。
また、本体サイズが大きい分、設置スペースもそれなりに必要だ。コードレススティック掃除機を使っているならそれがほぼ2台分になると思えばわかりやすい。台座には充電機能はなく、その都度コネクタを差す必要もある。
使い終わった後のお手入れにやや手間がかかる印象ではあるが、たまに行う拭き掃除と考えたら許容範囲。小さい子がいる家庭や犬を飼っている家庭で、床の汚れが気になっているなら活躍しそうだ。また、リビングだけでなく、廊下や寝室など広いエリアを拭き掃除したい場合にも適している。
同様に水拭き掃除ができるお掃除家電として、ケルヒャーの「フロアクリーナー」やCCPの「コードレス回転モップクリーナーNeo+」がある。同一環境で比較したわけではないが、ケルヒャーとの大きな性能差や使い勝手の差は感じなかった。高級感はケルヒャーが上だが、コストパフォーマンスでは、サイクリーナーが上回っている印象だ。かたやCCPは横回転なので、動きが大きく異なる。また、水タンクなどもなく、回転以外は自動ではないため、広いエリアを掃除したいならサイクリーナーが向く印象だ。
となると、一番のライバルは市販の使い捨てフローリングモップだ。手軽さではかなわないが、あちらはランニングコストがかかる。フローリングが広く、効率的に拭き掃除ができる製品を探しているなら、サイクリーナーは選択肢に入りそうだ。