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2016/8/31 17:00

【明日は防災の日】「東京防災」がなぜ革新的だったか、改めて振り返る

2015年に東京都が発行した「東京防災」という本をご存じだろうか。「東京防災」は、かつてスイス政府が国民に配布した危機管理本「民間防衛」からヒントを得て作られた防災ブック。ネット上でも話題になったので、東京都民以外でも見たことがあるという人も多いかもしれない。

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この「東京防災」、都内の約700万世帯に配られたというスケールの大きさも異例ながら、その中身もいわゆる“お役所仕事”の域を越え、画期的な点が多かった。9月1日に「防災の日」を迎えるにあたり、もう一度「東京防災」を読んでみてはいかがだろうか。東京都民でなくても、現在ではKindleやkobo向けの電子書籍版や、PDF版も無料でダウンロードできるようになっている。

 

ここが画期的だった「東京防災」!

では、「東京防災」を振り返るにあたり、どの部分が画期的だったかを3点にまとめてみた。

 

【その1】パラパラマンガがあったり、読ませる工夫が随所にある

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↑東京防災P12-13より引用

自治体が作成する防災マニュアルや災害ガイドブックは、たとえイラストがふんだんに取り入れられていても、どこか教科書的なお堅い雰囲気がつきもの。ところが、「東京防災」は内容は真剣そのものだがイラストがコミック的で、デザインのセンスもよく、ページの右下にはマスコットキャラ「防サイくん」のパラパラマンガまで載っているほどの親しみやすさだ。300ページ以上という分厚い本ながら、スムーズに読めてしまう。

 

とりあえず予算をとったから、作って終わりというパターンに陥ることなく、防災に興味がない人にも読んでもらいたいという想いが伝わってくる。それが、この本の良さだ。

 

【その2】防災だけでなくテロ・武力攻撃といった具体的な内容に踏み込んでいる

ここで言う“具体的”というのは、数字やデータの羅列という意味ではない。「東京防災」で想定されているシチュエーションが非常に具体的なのだ。たとえば、「01 大震災シミュレーション」の「電車内」の項目。

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↑「東京防災」P30-31より引用

「強い揺れを感知すると電車は緊急停車するため、人に衝突したり倒れる危険があります。座っていたらカバンなどで頭を保護し、立っているときは姿勢を低くして身を守る」

 

オフィスの項目なら、「キャスターを固定していないコピー機などは、あらぬ方向に移動します。……キャビネットの転倒や飛散するガラスに注意しながら、物が「落ちてこない・倒れてこない・移動しない」場所に身を隠します」といった具合だ。

 

家にいるときに被災することを想定している人は多いと思うが、実際にはどのタイミングで地震が発生するかはわからない。こうした状況別のシミュレーションを少しでもしておけば、パニックに陥るリスクも減るだろう。

 

「04 もしもマニュアル」の章も、災害発生時に実際に使えるさまざまな知恵や工夫が図説付きで紹介されている。「心肺蘇生法」「骨折・捻挫の応急手当」といったケガ人への対処の方法から、「簡易トイレの作り方」「簡易ランタンの作り方」「乾電池の大きさを変える」といった避難生活で役立つ技まで、実用的な情報が豊富だ。

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↑「東京防災」P176-177より引用

 

さらに、この本は地震以外の災害にもページを割いている。大雨/暴風、集中豪雨、落雷、竜巻、火山噴火……。4年後の東京オリンピックを控え、ますますグローバル化する首都圏を象徴するかのように、「テロ・武力攻撃」「感染症」といった項目もあり、かなり踏み込んだ内容なのだ。

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↑「東京防災」P.164-165より引用

 

 

【その3】かわぐちかいじのオリジナルマンガ

「東京防災」の巻末には、「沈黙の艦隊」や「太陽の黙示録」でおなじみのマンガ家・かわぐちかいじ氏によるオリジナルマンガも掲載されている。

 

——「いつものカフェで ゆかり(*^^*)」。16時35分。オフィスでスマホのメールを見るひとりの会社員。「了解」と返信をしようとした矢先、オフィス中の携帯電話から緊急速報が鳴り響き「ドーン!」という強い縦揺れが来る……。

 

約15ページと分量はそれほど多くないが、マンガでビジュアル的に描かれると、やはり真に迫るものがある。電車が横転し、ビルの窓ガラスが砕け散り、電信柱が傾く。そこには呆然とする外国人旅行者や泣き叫ぶ親子の姿も……。こうした状況で、自分の命と大切な人の命を守らなければならないのだから、冷静に行動できる心構えが何よりも重要だろう。

 

文字で伝えるよりも、マンガのほうが何倍ものインパクトで多くの人の心に届く。今後、国や自治体がマンガで情報発信をしていくケースは増えていきそうだ。

 

熊本地震の経験から「東京防災」を見る

最後に、今年4月に起きた熊本地震を踏まえ、「東京防災」に付け加えたほうがいい点にも触れておきたい。

 

熊本地震では地震のあとに豪雨に見舞われ、地滑りや土石流が発生した。「東京防災」では、災害それぞれに対しての言及はあるが、複合して起こる災害にも注意が必要かもしれない。地震で河岸の土手が崩れたところに豪雨が襲ってきたら……。きりがないとも言えるが、少しは気に留めておきたい。

 

また熊本地震では、余震による家屋の倒壊を恐れて車中泊をしていた住民に、エコノミークラス症候群が相次いだというニュースもあった。「東京防災」には、エコノミークラス症候群についての言及はない。東京でも避難所ではなく自分の車で過ごすという選択を取る住民は多いはず。その場合、車でどのように過ごせばエコノミークラス症候群になりにくいか。そうした情報は有用だ。

 

これだけ話題になった「東京防災」を、過去のものにしてしまうのはもったいない。防災に関しての新しい知識や情報をマンガなどの形で追加して、「東京防災」に積み上げていくというやり方もいいのではないか。まずは、「東京防災」をまだ読んだことがないという人は、電子書籍版をダウンロードしてみてはいかがだろうか?

 

【URL】

防災ブック「東京防災」 http://www.bousai.metro.tokyo.jp/1002147/

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