ヨシムラヒロムの一階通信 第十二階 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
連載「一階通信」ではエントランス部分から見える企業の顔を取り上げる。1階にエントランスがない企業も多々あるが、それはご愛嬌。受付や入口があるフロアを総じて「1階」と呼び、エントランスから企業を紐解く。今回は、インターネット上で多くのサービスを提供するDeNAを一階通信していこう。
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■2012年に開業した渋谷の新名所「渋谷ヒカリエ」
ショッピング、カフェ、ギャラリーが入った地上34階、地下4階の高層複合施設「渋谷ヒカリエ」。最新の流行が集まり、多くの人でにぎわっている。17階以上がオフィスで、ここには日本有数の企業が集まる。なんたって家賃が高いからね。そのなかで20階〜26階の7フロア、もっとも多くのフロアに入居しているのが、インターネットで多くのサービスを展開するベンチャー起業「DeNA」だ。
「渋谷ヒカリエ」の11階にゲートが構えられている。ここで手続きをしないと、オフィスフロアには上がれない。受付嬢から紙を渡され、そこに企業名や訪問先、自分のプロフィールを記入。ここで少しでも不慣れな言動や発言をしたら、受付嬢は冷笑するだろう。その面持ちに触れ、取材前からナーバスになりたくないのは当然のこと。「慣れてますよ。ワタシは優れたビジネスマンですよ」ってツラで手続きを済ます。今回は、名刺を見せるときに若干モタついたが、ギリギリセーフといったところだろう。
エレベーターに乗ってDeNAのある21階に上がる。扉が開きフロアに出ると、多くの社員が小走りで行き来しており、すぐさま熱気が伝わってきた。入って数秒で活気がある会社だと理解できる。そこから廊下を歩き、奥にあるエントランスへ。
■なにもかも想像以上だったDeNAの取り組み
DeNAのエントランスは、空間が贅沢に使われている。広いスペースの中央には、大きな鉢植えが置かれ、天井はダクトむき出し。ムダが一切省かれた、スタイリッシュな空間だ。そのなかで、一番の魅力はなんといっても景色だろう。壁一面ガラス張り、そこから渋谷区が一望できる。夢中で見ていると「天気が良いとお台場まで見えるんですよ」と広報の横山さんに声を掛けられた。
一段上がった打ち合わせスペースで話を伺う。ここには、36のイスと3つの大きなソファーが並ぶ。「すいません、大変申し訳ないのですが、DeNAの柱となっている事業ってなんですか?」と早速質問。スマホゲームの開発や球団運営と、色々なことを行っているのはCMを見ればわかる。しかし、全体像が把握できていない。「基本的な柱は、ゲーム事業、キュレーションプラットフォーム事業、オートモーティブ事業、ヘルスケア事業の4本からなっています」との答え。
席を離れ、エントランスに並ぶ成果物を拝見。最初に見たのは縦100センチほどの立方体で、6面にはDeNAのロゴが入っている。実は、DeNAの手書き文字風ロゴ、個人的にずっと気になっていた。勝手に社長が書いたのだろうと予想もしていた。だが残念、ハズレだったのだ。
なんと、ロンドンオリンピックのロゴデザインも担当したブランドコンサルタント会社「ウルフ・オリンズ」がデザインした代物。それこそ初見は、ただの手書き文字に見える。しかし、一度見たら絶対に忘れない秀逸なロゴデザイン。その裏には、論理的な根拠がたくさん詰まっているのだろう。
続いて、ショーケースを見て回る。女子に人気のキュレーションアプリ「MERY」、動画ストリーミングアプリ「SHOWROOM」、マンガアプリ「マンガボックス」とDeNAが開発した人気アプリが並ぶ。
その奥にあるのが3体のマネキン。右はDeNA Running Clubのウェア、中央は横浜DeNAベイスターズ、左は車椅子バスケットボールの香西宏昭選手のサイン入りTシャツを着用。ここから、DeNAがいかにスポーツに力を入れているかがわかる。
僕はまぁまぁのプロ野球ファンであるが、DeNAがベイスターズを買収したときは驚いた。「どうして、球団を買ったんですか?」と聞いてみた。「日本で12球団しか持つことができない資産を持つ価値は大きいんです。実際に企業認知や採用活動など金銭以外のメリットもありますし、あと少しで黒字を出せるのではというところまで来てるんです!」と横山さん。
前シーズン、前半戦を1位で折り返したベイスターズ。統計的には、90%の確率でクライマックスシリーズに出場できたはずなのに、それを逃して悪夢の最下位。「今年こそはクライマックスシリーズ行きたいんですよ!」と社員全員で応援中とのこと。
その隣にあるDeNA Running Clubのウェア。社員のクラブ活動かなと思っていたら大間違い、ニューイヤー駅伝5位に輝いた実業団チームだという。「総監督は瀬古なんですよ」。「瀬古って、あの天才ランナー瀬古選手ですか」と驚く。
同時に、世界的なランナーを呼びつけにすることにもびっくりだ。慣習で、同じ企業の人間は目上でも敬称をつけないことはわかるが、なんだか不思議。余計なことだと知りつつも「なんか、瀬古って呼びつけるのって奇妙ですよね」と言うと、「そうですよね、ただ仕事なんで許してください」と横山さん。
最後にそんな会話をした、DeNAの一階通信であった。
【DeNAの一階通信見どころまとめ】
①エントランスから見える景色
②DeNAのロゴマーク
③各種ユニフォーム