ライフスタイル
2023/4/6 19:00

「ヌン活」は家で楽しむ! 正しい紅茶の淹れ方からティーマナーまで、アフタヌーンティーの嗜み方

アフタヌーンティーといえば、イギリスの貴族たちからはじまった習慣。日本に上陸して以来、サンドイッチやスコーンなどを三段スタンドにのせたビジュアルが、女性たちの関心を集めてきましたが、近年その熱が高まっています。2022年には、「ヌン活」という新語が流行語大賞にも選ばれたほどです。

 

ホテルのラウンジやティールームで楽しむイメージが強いアフタヌーンティーですが、今回は「おうちでできるヌン活」の仕方を、アフタヌーンティー研究家の藤枝理子さんに教えていただきました。

 

「ヌン活」とは?

コロナ禍に入り、2020年ごろから使われはじめた新語です。ホテルやティールームでアフタヌーンティーを楽しむだけでなく、そのようすを「#ヌン活」というハッシュタグをつけて投稿するまでの流れが、いわゆる「ヌン活」となっているようです。

 

「これまでも人気のあったアフタフーンティーですが、 “ヌン活” という言葉が登場する前は、マダムたちの優雅な楽しみでした。それが4〜5年前からは “インスタ映えする” と、Z世代の間で流行りだしました。そこからコロナ禍になったことでお酒を飲みに行けなくなり、アフタヌーンティーがさらにクローズアップされていきました。ホテルのラウンジ空間は、ゆったりとした席の配置でソーシャルディスタンスが保たれ、衛生面でも安心感があります。そんなところからも、アフタヌーンティーが流行したのではないでしょうか」(アフタヌーンティー研究家・藤枝理子さん)

 

お茶を飲むだけではなかった! 「アフタヌーンティー」は暮らしのなかのアート

そもそもアフタヌーンティーとは、イギリスの貴族から発祥したヴィクトリア時代のサロン文化。日本では「三段スタンドにのったサンドイッチやケーキを食べて紅茶を飲むこと」という印象が強いのですが、実は日本でいうところの茶道のように、イギリス文化を味わう「道」なのだそう。

 

「たとえば茶道では、掛け軸や花を鑑賞し、茶室のしつらいやお道具など、総合芸術を味わいながらお茶をいただきますよね。単にお茶を飲んでおいしかった、というものではありません。アフタヌーンティーも同じで、建築様式やインテリア、家具の装飾、ガーデニング、食器、銀器などを愛でながら紅茶をいただく “暮らしの中のアート” なのです。イギリスの上流階級の方々は幼少期からアフタヌーンティーに触れ、ティーカップの持ち方やナプキンの扱いなどのマナーを学んでいきます。もちろん、そこまで堅苦しく考えると疲れてしまうので、そんな側面もあることを頭に入れておく、くらいでいいと思います。まずは楽しいことが大切ですよね」

 

「おうちヌン活」は、おもてなしにもぴったり

ホテルやティールームで楽しめるヌン活を自宅でひらくには、どのようにしたらよいでしょうか。

 

「正式なアフタヌーンティーには繊細な約束事や必要な道具がありますが、はじめから一度にあれこれ揃えてしまわず、少しずつ広げていくのがおすすめです。また、ホテルでのアフタヌーンティーにも一度足を運んでみると、こんなふうにすればいいのね! と雰囲気が掴めると思います。アフタヌーンティーは、ランチやディナー等のお食事でのおもてなしと比べるとハードルもグッと下がります。最近では、テイクアウトのアフタヌーンティーも販売されていますし、たとえばサンドイッチだけ手作りして、スコーンやケーキはお気に入りのパティスリーでセレクトしたものを並べるだけでも十分ですよ」

 

おうちヌン活のはじめ方
1.食器を揃える

アフタヌーンティー用に揃えたいアイテムは、「ティーカップ&ソーサー」「ティーポット」「ケーキプレート」「ナイフ」「ナプキン」の5つです。

 

「そのなかでも、まずはトリオ(カップ&ソーサーとケーキプレート)を揃えてみましょう。アフタヌーンティー用のティーセットは花柄でフェミニンなものがメイン。もともと女性同志の集まりから始まったものなので、どれも女性らしいかわいいデザインなんですよ。ちなみにフォーマルなスタイルにしたい場合は、必ず同じ柄の食器で統一します。また、後ほど説明しますが、ティーカップはハンドルに指を通さず、添えるようにつまむとエレガント。持ちやすい形を探してみるのもいいと思いますよ」

 

こちらは藤枝さんのコレクションから、ティーフォーワンと呼ばれる一人用のティーセット。別名「スナックセット」とも呼ばれ、トリオよりも手軽に楽しむことができるアイテムです。

 

こちらはティーフォーツーと呼ばれる二人用のティーセット。ポットとカップが一体になったタイプ。いろんな形やデザインがあるので、好みのものを見つけるのが楽しくなりそうですね。

 

おうちヌン活のはじめ方
2.ティーマナーを覚える

アフタヌーンティーにはマナーや決まりごとがあります。すべてをきちんと身につける必要はありませんが、教養のひとつとして知っておきましょう。

 

「マナーを覚えておくと所作がエレガントになりますし、 “あの人きちんとしているな” と思ってもらえるポイントにもなりますよね。いくつかのマナーだけは身につけておくとよいですよ」

 

おぼえておきたいマナー

1.ティーナプキンは輪を手前にして二つ折りで膝へ
ティーナプキンの扱いは、紙でも布でも同じ。輪になっている方を内側に向けて半分に折り、膝にのせます。

 

「口元を拭くときは、外側ではなく折った内側で拭きます」

 

2.ティーフーズには食べる順番がある
三段のスタンドにのっているティーフーズは、サンドイッチなど塩気のあるセイボリーをはじめにいただき、次にスコーン、甘いお菓子ペイストリーへと続きます。

 

「下の段から食べるのがマナー!と言われることもありますが、見た目を重視して盛りつけられている場合もあるので、しょっぱいもの→スコーン→甘いものと覚えておくのが無難です。ちなみにフォーマルなシーンでは戻るのもNGです」

 

3.ティーフーズは左手で食べる
ティーフーズは必ずスタンドから自分のプレートへ、一度取りわけてからいただきます。

 

「生菓子以外のフィンガーフードは、手でつまんでいただきます。カップを右手で持つので、フードは左手で。カップが汚れてしまったり、手についた油ですべってしまったりしないよう、左手を使います」

 

4.ティーカップのハンドルはつまむように持つ
カップは親指から中指までの3本で挟むように持ち、あとの2本は中指に合わせるように添えるようにするとエレガント。慣れないと滑ってしまったり不安定になったりしますから、少し練習しておくのもおすすめです。

 

「ちなみにハイテーブルの場合は、ソーサーには触れずにカップだけを右手で持ち上げていただきます。ローテーブルであれば、ソーサーごと持ち上げて胸の高さまで持って行き、カップは右手で持ちます」

 

おうちヌン活のはじめ方
3.紅茶を揃える

アフタヌーンティーのメインはなんといっても紅茶。ホテルのようにたくさんの種類の紅茶を準備しなくても、アフタヌーンティーが楽しめます。

 

「一種類でももちろん構いませんが、もし揃えられるならば、2〜3種類の茶葉があると、ティーフーズとのペアリングができて楽しいと思いますよ。ひとつはストレートで飲むと香りのよい中国系のダージリンや和紅茶。こちらはセイボリーとよく合います。もうひとつはミルクティーにするとおいしいアッサム系。ペイストリーと相性のよい紅茶です。ほかにもう一種類揃えるなら、スコーンに合わせたフレーバーティーがあると、より豪華なアフタヌーンティーになります」

 

【紅茶に関する豆知識】

・紅茶は緑茶と同じ葉っぱ
紅茶や緑茶、烏龍茶はそもそもすべてカメリアシネンシスというツバキ科の茶樹からできています。葉の発酵を止めたものが緑茶、完全に発酵させたものが紅茶、その中間にあたるものが烏龍茶になります。

 

・イギリス人はミルクティーがお好き
イギリスでは95%以上の人がミルクティー派。アッサム系のブレンドティーが好まれています。

 

おうちヌン活のはじめ方
4.紅茶のいれ方を学ぶ

それではいよいよ、紅茶のいれ方をレクチャーしていただきましょう。少量をおいしくいれるのは難しいので、一人分の紅茶をいれるときも、「2杯半分からはじめる」こと。イギリスでは350mlが一人分とされているそうです。

 

【道具】

・ティーポットとティーマット
・ティーストレーナー(茶漉し)
・砂時計(時間をはかるもの)
・ティースプーン
・紅茶葉
・ティーコゼー

 

1. ティーポットにお湯を入れてよく温め、湯を捨てる。

「お湯は半分より下くらいまで入れればOK。ポットを揺らして全体を温めてからお湯を捨てます」

 

2. ティースプーンで茶葉を入れる。

「ティーカップ1杯につき、ティースプーン1杯(約3g)が目安です。イギリスでは “ポットのための1杯” といって余分にもう1杯入れるのですが、それは硬水でいれるから。日本の軟水で紅茶をいれるときには必要ありません」

 

3. よく沸騰したお湯を注ぐ(ティーカップ1杯につき180mlを目安に)。

お湯の沸騰加減は、「100円玉程度の泡がポコポコ沸きあがるくらい」。小さな泡ではなく大きな泡が出るくらいにしっかりと沸かします。

 

「お湯の沸かし方は、おいしい紅茶をいれるのにとても大切なポイントです。沸騰が足りなかったり、沸かしすぎて空気が抜けてしまったりすると、お湯を注いだときに茶葉がジャンピングせず、エキスの抽出が不十分になってしまいます。沸騰して大きな泡がたったら、そこから20〜30秒ほど待って火を止めましょう。また、水は水道水を勢いよく出したものを使ってください。ペットボトルの水は酸素が少ない場合もあり、ジャンピングが起こりにくいのです」

 

4. ジャンピングを確認してから蒸らす。

茶葉のジャンピングを確認したら、ティーコゼーをかぶせて3分蒸らします。

 

「大きな茶葉の場合は1〜2分プラスしましょう。また、温度が下がるのを防ぐため、ティーマットを敷くことも忘れずに。Have a lovely tea time!」

 

茶葉やティーフーズを選ぶワクワク感を味わいながら、自宅でも優雅にヌン活を。忙しい毎日に自分をいたわり、癒してあげる時間のおともに楽しんでみてください。

 

プロフィール

アフタヌーンティー研究家 / 藤枝理子

英国紅茶&マナー研究家。サロンアドバイザー。大学卒業後、ソニー株式会社 ビジネス企画部に勤務。結婚後、紅茶好きが嵩じてイギリスに紅茶留学。帰国後は「自由が丘デポー39」にて 紅茶とお菓子のプロデュースに携わり、 東京初サロン形式の紅茶教室「エルミタージュ」を主宰。著書に 『仕事と人生に効く 教養としての紅茶』(PHP研究所) 『英国式アフタヌーンティーの世界』(誠文堂新光社) 『プリンセスになれる午後3時の紅茶レッスン』(KADOKAWA)など多数。
HP

 

『マンガで早わかり!アフタヌーンティー』(主婦の友社)
藤枝さんの新刊。アフタヌーンティーのマナーやおもてなしの仕方が漫画でまるごとわかる一冊。
https://books.shufunotomo.co.jp/book/b10030210.html

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」