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2016/11/28 14:00

犬の伝染病が人間にも感染する? 秋冬に多い感染症「レプトスピラ症」の恐怖

世間ではインフルエンザが猛威をふるっていますが、犬にも注意すべき感染症があるのをご存知でしょうか? 今回は、これからの季節に気をつけたい犬の感染症「レプトスピラ症」について解説します。

 

レプトスピラ症は、日本では古くより「秋疫(あきやみ)」の名で呼ばれているように、秋から冬にかけて増加することで知られている人獣共通の感染症です。中南米のブラジルや東南アジアのフィリピンやタイといった熱帯・亜熱帯地域を中心に流行が見られるため、日本ではその存在はあまり知られていませんが、現在も九州や沖縄などの温かい地域を中心に散発的に発症が見られています。

 

また、農水省の監視伝染病発生月報によると、全国で年間約20~50頭の犬で発症が報告されており、厚労省のデータによると東京では過去30年間で人の感染が40件(全国7位)確認されています。感染事例こそ少ないものの、都内で犬を飼われている方も決して無関係ではありません。

 

感染の原因物質は「ネズミの尿」

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レプトスピラ症は、レプトスピラという細菌の感染によって起こる感染症です。その最大の感染源となるのがネズミの尿で、菌を含んだ尿や尿が溶けた水をなめたり、傷がついた皮膚からレプトスピラが侵入することで犬に感染します。感染すると発熱や食欲不振のほか、血尿や嘔吐、下痢といった症状が発症。さらに強い腎機能障害や肝機能障害により、重症化するケースもあります。

 

また、白目部分や口の粘膜、おなかの皮膚が黄色っぽく変色する黄疸も主として見られる兆候のひとつです。レプトスピラ症は感染しても症状がまったくあらわれず、そのまま自然に治癒するパターンも少なくありません。しかし、そのような場合であっても排尿によって細菌をばらまき、知らぬ間に他の犬や人間に感染させてしまうことがあるので、特に多頭飼いをしているご家庭ではよりいっそうの注意が必要です。

 

予防はワクチン接種で! 水たまりも要注意!!

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レプトスピラ症の予防法は、ワクチンがもっとも効果的です。一般的な5種・6種混合ワクチンにはレプトスピラワクチンが含まれていません。そのため、毎日の散歩で草むらによく行く場合やレジャーなどで自然が多く残る場所に一緒に出かける際には、獣医と相談したうえで接種してあげてください。

 

ただ、ワクチンを接種したからといって完全に予防できるわけではありません。レプトスピラに多数の種類が存在し、種類によりワクチンがないものもあります。そのため、野ネズミの尿で汚染されていそうな土壌や川、路上の水たまりには犬を不用意に近づけないように気をつけましょう。

 

万が一感染してしまった場合も、抗生物質の投与で治療が可能です。ですが、腎機能障害や肝機能障害などを併発していることも多く、重症化することもあるため、やはりしっかりと予防することが重要です。

 

【URL】

品川WAFどうぶつ病院 http://waf-ac.com/

文/井上 ダイスケ