ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載「クルマの神は細部に宿る。」今回は、ホンダの商用軽バンN-VANのEV(電気自動車)バージョン、N-VAN e:を取り上げる!

Honda
N-VAN e:
269万9400円〜291万9400円
SPEC【e:FUN】●全長×全幅×全高:3395×1475×1960mm●車両重量:1140kg●パワーユニット:電気モーター●最高出力:64PS(47kW)●最大トルク:162Nm●WLTCモード一充電走行距離:245km
【これぞ感動の細部だ!】ピラーレスドア

わずか3モデルしか備えていない貴重な便利構造
助手席から後席までつながる大開口を実現したセンターピラーレス構造が採用されています。実際のところ、助手席側のピラー(柱)は助手席ドアの内部に収納されているのでボディ強度は保たれています。他の軽自動車でこれを採用しているのは、N-VANとダイハツ・タントのみ。大きな荷物を積む人にとって便利で貴重な構造です。
【GOD PARTS 01】雨どい

荷物を濡らさない工夫
商用車ベースのN-VAN e:には、ルーフの周囲に雨どいが付けられています。雨天時などにサイドガラスの視界をクリアにしたり、荷物の出し入れをする際に雨が垂れてくるのを防いでくれます。働くクルマならではの使える装備です。
【GOD PARTS 02】ナットホール

荷室で見つけた謎の穴
荷室の側面から天井にかけて、無数のビス穴が空いています。コストカットのためにネジを減らしたわけではなく、これはフックやアクセサリーパーツを取り付けることためのもの。独自の工夫を施して荷室を好きなように使うことができます。
【GOD PARTS 03】仕切り板

安全性を高める細かな配慮
運転席足元の左側に謎の仕切り板があります。足クセの悪い人が左足をはみ出さないためかと思いきや、どうやらこれは、助手席を格納して荷物を置いた際に、フットスペースへ荷物が侵入するのを防ぐためのもの。細かな配慮に感心します。
【GOD PARTS 04】ステアリング

好ましいシンプルデザイン
3本スポークだったN-VANと違い、N-VAN e:のステアリングは2本スポークになっています。直進位置で垂直になる真下のスポークがなくなったわけですが、シンプルになって良い感じです。
【GOD PARTS 05】シフトセレクターボタン

シフトはボタンで変える
ボタン式のシフトセレクターが搭載されています。シフトレバーがなくなり、インパネはスッキリして、N-VANより小物入れも増えました。さらに、窓の開閉スイッチもドアからこちらへ移されています。
【GOD PARTS 06】ドア内張

クセ強デザインがびっしり
N-VANではよくあるデザインだったドアの内張も、N-VAN e:では独特なデザインが採用されています。縦方向のスリットがひたすら並べられていますが、個性が強くてユーモラスです。なおこの模様は、ボディ後方の荷室までずっと続いています。
【GOD PARTS 07】フラットフロア

前から後まで広く平らな床
燃料タンクを前席下に配置して荷室の床を低くしています。さらに助手席と後席をダイブダウン(前に倒して床面収納)すれば、フラットな空間がつながって広大な荷物スペースが誕生します。一般の人では持て余すほどの広さです。
【GOD PARTS 08】室内照明

荷室に灯りをつけましょう
とにかく荷室にこだわったクルマということで、天井には前から後まで合計4個も室内灯が装着されています。ボディサイズの小さな軽自動車であれば、室内灯は1個のみというモデルも少なくありませんので、これは豪華です。
【GOD PARTS 09】給電口

充電はフロントから
N-VANとの外観で大きな違いとなっているヘッドライト間の黒い樹脂パーツに給電ソケットがあります。向かって左は普通充電用、右は急速充電用で、オプションの外部給電器があればここから電気を取り出すことも可能です。
静粛性より走りと実用性!N-VAN e:の魅力とは
安ド「殿! 今回はホンダの商用EV、N-VAN e:です!」
永福「うむ」
安ド「殿は現在、ガソリンエンジンのタントを所有されてますが、比べていかがですか」
永福「タントより断然速くて快適だ」
安ド「ですよね! EVらしく出足からグンと加速しますし、キビキビ走って気持ち良いです!」
永福「床下にバッテリーを敷いているぶん、重心も低くて安定している」
安ド「良いことずくめですね!」
永福「充電の手間を除けばな」
安ド「でもN-VAN e:は、航続距離も結構ありますよ。満充電状態での航続可能距離は、173kmと表示されました!」
永福「いや、条件が良ければもうちょっと走るだろう」
安ド「たしかに、試乗後90%まで充電したら、190kmになりました!」
永福「200kmくらい走れると思うぞ」
安ド「ご近所の足としては十分じゃないですか!」
永福「その通りだ。しかし人間は欲深い。年に1回でも遠出する可能性があると、やっぱガソリン車にしておこう、となる」
安ド「殿もですか?」
永福「もちろんだ。クルマは、どこまでも走っていけるからこそ自由の翼なのだ」
安ド「なるほど!」
永福「とは言ってもこのクルマ、現時点ではEVとしてナンバー1に近いな」
安ド「そうですか!」
永福「EVは本来、エコであることが使命。N-VAN e:は、デカいバッテリーを積んだ高級EVとは正反対で、実際エコだし値段もリーズナブルだ」
安ド「補助金を入れれば、ガソリンエンジンの軽と同じくらいで買えますね」
永福「走りも良いし、内装も機能的でオシャレだ」
安ド「ガソリンエンジンのN-VANは普通の商用車ですが、N-VAN e:は特別感があります」
永福「ルノーの初代カングーの香りがあるな」
安ド「たしかに! 見た目もN-VAN e:のほうが微妙にカッコいいです!」
永福「見た目はほとんど同じだろう」
安ド「いえ、ヘッドライト間の黒いパーツとか、バンパー下の方のあしらいとかが少し違います!」
永福「普通の人には見分けがつかん。それより私が残念だったのは音だ」
安ド「え? EVだけに静かじゃないですか」
永福「商用車だから遮音性が低く、低速走行時の車両接近警報音が車内でも丸聴こえだ。あんなに聞こえるなら、もうちょっとかわいい音にしてもらいたい」
安ド「割と小さいことにこだわりますね!」
永福「うむ」
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。
安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。
※「GetNavi」2025月8月号に掲載された記事を再編集したものです。