キャッチフレーズは「かわいいフリして、タフなやつ」。先代と同様、三菱の新型「デリカミニ」は、日産「ルークス」をベースにしながらも、まったく異なるクルマとして登場しました。特に4WDモデルはデリカらしく、個性がはっきりとしています。そんな新型デリカミニを南房総で試乗してきました。

発売1か月で受注1万台超え! 大半が最上位の「DELIMARU PKG」をオーダー
初代デリカミニが初めて披露されたのは2023年1月に開催された東京オートサロンでした。日産ルークスをベースとしながらも、前後のデザインをデリカ風にすることでまったく違う印象のクルマとして誕生したのです。これが三菱としてはかつてないヒットに恵まれ、その人気は今もなお続いています。
2世代目となった新型デリカミニのラインナップは、これまでと同様にエンジンがNA(自然吸気)とターボの2種類で、組み合わせるトランスミッションはCVTのみ。駆動方式も同じくFFと4WDの2タイプから選べます。
システムは前モデルからのキャリーオーバーとなりましたが、CVTの変速スケジュールを変更したことにより、過度な回転上昇を抑えてアクセルペダルに応じた回転上昇を実現。これにより発進性能が大幅に高められているとのこと。
また、従来のマイルドハイブリッド機構は外されましたが、ピストンのフリクション低減などによって従来並みの燃費を実現したということでした。
三菱によると受注状況も好調のようで、10月29日の発売から約1か月で1万台をオーバー。しかもオフローダーであるデリカミニらしく全体の53%が4WD。なかでも驚くのが「DELIMARU PKG」装着率で、なんと全体の67%にも及ぶというのです。
DELIMARU(デリ丸)と言えば、TV-CMにも登場している愛くるしいキャラクターのことですが、DELIMARU PKGのネーミングだけに、車両にそのキャラクターが反映されているのかと思いきや、残念ながら? 車内にその姿を見ることはできません。
DELIMARU PKGは、デリカミニの個性であるデリ丸の名になぞらえ、Google搭載インフォテイメントなどを備えた最上位パッケージモデルなのです。


カヤバ製「プロスムース」と大径タイヤの組み合わせが次元を超えた乗り心地を実現
今回の試乗ではターボエンジン+4WD仕様の「Tプレミアム DELIMARU PKG」が用意されていました。試乗前の説明会では新型デリカミニが急峻なオフロードコースを走行するシーンが映像で披露されましたが、これは新型デリカミニが初代よりも悪路での走行性能が向上していることをアピールするため。
軽自動車とはいえ、走りに関してはデリカミニも立派なデリカファミリーの一員であるというわけですね。
それだけにデリカミニ最大の注目点となっているのが、4WDモデルに与えられた専用の足回りです。ショックアブソーバーには、専用開発したカヤバ製「プロスムース」を採用。路面の凹凸を「いなす」能力を高め、軽自動車特有のピョコピョコとした跳ねが抑えられています。
また、4WD車には2WDより外径が約17mm大きい専用の165/60R15タイヤが装着されており、これがマイルドな乗り心地と160mmの最低地上高(FF比+10mm)へのメリットを生み出しているというわけです。


車内はインテリアの質感と使い勝手がともに大きく向上
外観は前モデルのコンセプトを踏襲しつつも、一段とかわいらしさが強調されている気がします。半円形状のヘッドランプを、前モデルよりも大型化したことが大きいのかもしれません。

前述したように、デリカミニにはオリジナルのキャラクターが存在しますが、その人気はとても高く、関係グッズを販売するとほとんどの会場で売り切れてしまうのだとか。まさに新型デリカミニは、このキャラクターをフル活用したデザインになったといえるでしょう。
車内に入ると前モデルと比べて雰囲気は大きく変わりました。まず広さ。実際の室内長はほとんど変わらないものの、運転席前のAピラーをより垂直に近づけることで広々とした空間を生み出しているのです。これは斜め前方の視界を広げることにもつながり、特に右左折時の安全性向上にも寄与するでしょう。
インテリアの質感向上も大きなポイントです。ダッシュボードなどに使われる素材は硬質パネルですが、その形状やシボの造り込みが巧みでチープさを微塵も感じさせません。
シートも身体にほどよくフィットし、格子柄と2トーンカラーを組み合わせたデザインは内装材と美しくマッチ。シートの実用性も高く、前席のヘッドレストを外して背もたれを倒せば、後席とつながって車中泊にも十分応えてくれる空間となります。

車内は使い勝手もかなり向上しています。収納ポケットは運転席前や助手席に配置され、特に助手席のグローブボックスは引き出すと、ボックスが下方向へ開くため開口部が広くなります。これが実に使いやすいのです。

エアコンの操作パネルも、タッチ式であることに変わりはありませんが、そのレイアウトを変更することで誤操作を最小限にとどめています。
また、後席は320mmのスライドが可能で、最後端まで下げると広大な空間が出現。それでいて、ヘッドレストが背もたれにほとんど食い込んでいないため、ヘッドレストを上に動かさなくてもゆったりと座れるのです。
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走り出しも中速域の加速も驚くほどスムーズで、クラスを超えた乗り心地を提供
さて、試乗コースはさすがにデモ映像で見たような、前輪が浮くような試乗コースはなく、千葉県鴨川市郊外の一般道路を走行しました。
スタートは思っていた以上にスムーズで、アクセルを軽く踏んだだけでスルスルッと動き出しました。その動きはとても車重が1tを超えているスーパーハイトワゴンとは思えない軽快さです。


試乗する前はマイルドハイブリッドがなくなり、アシストがない分、スタート時にもたつきが出るのではないかと予想していましたが、良い意味でそれは裏切られたといっていいでしょう。中速域に入ってもなめらかな加速感は継続され、ストレスを感じることはほとんどありませんでした。
ハンドリングも軽快で、スーパーハイトワゴンながらカーブでのロール(車体の傾き)も緩やか。接地感が強く、ワインディングを少しキツめに攻めても不安なく走り抜けることができました。
これは路面からの振動を抑えるのにも効果を発揮しているようで、荒れた舗装面を走行しても不快さはもちろん、路面からの振動も身体で感じることはほとんどありませんでした。この乗り心地の良さはもはや軽自動車とはとても思えない出来映えです。
今回は高速域での確認はできませんでしたが、三菱の資料によれば、フロントガラスに特殊遮音フィルムガラスを採用したほか、ドアパネル内に2層遮音シートを、さらにはドア下端にシーリングを施すなど徹底した対策を図っているとのこと。高速走行時の静粛性に期待できそうです。
そして、デリカらしさを感じさせたのが、ダッシュボードの真ん中に装備されたダイヤル式のドライブモード。パワー/エコ/ノーマル/グラベル/スノーの5つから選べ、路面状況に合わせた走りを楽しめるのです。この機能は2WDモデルにも装備されますが、効果的なのはやはり4WDモデルでしょう。トラクションを重視するならぬかるみに強いグラベルが、雪道ではトルクを押さえて発進できるスノーが最適となります。

それと、駐車時に補助となってくれる「3Dマルチアラウンドモニター」の搭載も見逃せません。この機能は前後左右に装備したマルチカメラを使って、車両の周囲をモニターする機能ですが、ポイントは車両の下が透けて見えるようにした「フロントアンダーフロアビュー」の搭載です。
この機能は後退する前にメモリーした映像を反映させたもので、厳密に言えば車両下の映像はリアルタイムではありません。しかし、安心感という意味では大きなプラスになると思います。
試乗したTプレミアム DELIMARU PKG 4WDの価格は290万7300円(税込)。ほとんどが標準装着となっている仕様ですが、フロアマットや多少のオプションを加えれば300万円は超えます。

「軽自動車で300万超え」ということに、時代の変化を感じざるを得ませんが、試乗して実感したのは登録車との差がもはや限りなく小さくなっていること。特にADAS関連では登録車でもコンパクトカーを凌駕するレベルで、新型デリカミニはこのクラスの価値を再認識するのに十分なポテンシャルを提供してくれるといって間違いないでしょう。
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写真/松川 忍



