アシックスは、シューズに使われている材料を容易に分別し、リサイクルできるようにしたランニングシューズ「NIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)」を4月12日から発売開始しました。これに先立ち行われた発表記者会見では、商品情報や開発背景について語りました。
シューズリサイクルの3つの問題点を解決するNIMBUS MIRAI
商品名の「NIMBUS」はラテン語で「雲」を意味し、アシックスではランニングシューズの最高峰ブランド「GEL-NIMBUS(ゲルニンバス)」に由来します。「MIRAI」には、“持続可能な世界が当たり前となるべく、次世代のランナーと一緒に考えて行きたい”という思いを込めて名付けられました。
NIMBUS MIRAIは、シューズの各部位にリサイクル素材を採用し、アシックスを代表するクッション性を重視した高機能モデルとして開発されました。従来と同等の品質や性能を保ちながら、廃棄時にシューズの回収サービスを設け、環境保全への意識改善に取り組む方針です。
フットウエア生産統括部マテリアル部⻑の上福元史隆氏は、開発経緯について「シューズは世界で年間約239億足が生産されているが、そのうちの使用済みシューズ95%以上がリサイクルされず埋め立てられるか焼却処分になる」というデータを紹介しました。その理由に「アッパーとソールを分離できないこと」、「シューズのアッパーは複合素材でできていること」、「回収とリサイクルできる環境が整っていないこと」の3つの主な理由を挙げ、「NIMBUS MIRAIは、サステナブルと高い機能性を両立させた最上位シューズである」と説明。また開発期間には約3年7か月を要したことを明かしました。
これら3つの問題を解決すべく、まず取り組んだのはアッパーとソールが分解可能な接着剤の独自開発です。「使用時に従来と同等の接着強度を保ちつつ、熱を加えれば簡単に剥がせるようにしたことで容易に分別してリサイクルすることができます」と上福元氏は語ります。
素材について、パフォーマンスランニングフットウェア統括部デザイン部の安藤良泰氏は、「通常数十種類あるアッパー素材は本体、補強部、ハトメなども全てポリエステル系繊維の単一素材でできており、そのうち75%以上が再生ポリエステルを使用しています。素材を単一にすることでパーツ分解の作業を削減し、高い精度で再生が可能になる」と説明しました。
また、素材にポリエステルを選んだ理由について、上福元氏は「アパレル素材として使われるポリエステルはリサイクルのスキームが整っていることから、シューズでも同じようなリサイクルのループが実現できるのではないかと考えた」ことがきっかけであると話しました。
回収されたシューズのアッパー部分は、新たなシューズに生まれ変わり、ミッドソールとアウトソール部分は玉砕処理後、マットやパネルなどの素材の一部にリサイクルされる予定です。
シューズ回収に参加し、ともにサーキュラーの実現へ
安藤氏は最も重要な点として、「ランナーの皆さまに履き終わったシューズの回収活動に参加していただくことです」と、顧客を巻き込んだ参加型のサステナビリティであることをポイントに挙げました。
足の甲部分にあたるシュータンかシューズボックスに施されたQRコードを読み込むと、回収方法が記載された特設サイトにアクセスできます。オンラインで受付することができ、シューズを回収するスムーズな環境も整っています。
上福元氏は、「特殊な材料を使うなど、どうしても高くなる部分がある」としたうえで、「継続的に販売し、規模を拡大していくことが重要。これまで困難と言われてきた、使用済みシューズを資源に戻すアクションを、お客さまと一緒に始動したい」と語りました。