文房具
2025/6/9 20:15

大人の学び直しや資格試験の勉強をサポート! 文房具のプロが教えるリスキング文房具8選

AIやデジタル技術の急速な進化により、つねにスキルのアップデートが求められ、さらに健康寿命が延びたことで、第二のキャリアを見据える人も増加。加えて、政府が補助金を出すなど支援に力を入れていることもあり、いまや「リスキリング」は多くの人にとって身近なものとなりつつあります。

 

それを受け、いま盛り上がりを見せているのが、大人の学び直しをサポートする文房具です。そこで今回は、文房具の専門家として文房具の魅力を発信するとともに、商品プロデュースも行なっている文具ソムリエールの菅 未里さんに、リスキリング文房具のトレンドと注目商品を教えていただきました。

 

「リスキリング」が定着したのはなぜ?

「リスキリング」「大人の学び直し」といった言葉が、すっかり定着しましたが、この流れはいつ生まれたのでしょうか。文具ソムリーエルの菅 未里さんは、コロナ禍にそのニーズが大きく延びたと話します。

 

「外出自粛により在宅時間が増えたり、日々の通勤がなくなったことで、時間の融通がきく方が増え、資格取得に時間を割けるようになったのが大きいですね。またこのときに、オンラインで学べるサービスもぐんと増えたので、家事や子育ての合間など、場所と時間を選ばずに学べる仕組みが充実しました。学ぶ対象は、資格などのビジネススキルだけでなく、たとえば韓国ドラマにハマって、スマホアプリで韓国語を学び始めるなど、自宅でできる趣味を通じ興味を持った語学を学ぶという方も多く見受けられました」(文具ソムリエール・菅 未里さん、以下同)

さらに菅さんは、大人の学習ニーズが高まった背景には、将来への不安意識の高まりもあると言います。

 

「実は2023年に、100円ショップ市場が1兆円を突破したんです。この背景には物価高の影響があり、食品や電気代などが軒並み値上げされるなか、少しでも出費を抑えられたらと、低価格商品を扱う店へと人が流れているということ。最近は、新卒の初任給が上がったニュースも増えてはいますが、物価の上昇レベルにくらべると、まだまだ賃金は上がりきれていないのが現実。
また、生成AIの登場などデジタル化が進み、将来AIに仕事が奪われるのではと不安を感じている人も増えています。こういった背景から『このままではまずいな』『スキルアップに取り組まないと』というムードが高まり、自身の成長のために時間を割く人が増えているのです」

そして菅さんは、「政府がリスキリングを後押しするなど、公的な支援制度が充実したことで、より注目は高まりました」と続けます。

 

クラウドファンディングで応援購入約3500万円!
活況を見せる大人向けの勉強用文房具市場

そんな世の中の流れを受け、文房具市場にも大人の学習向けアイテムが増えています。その筆頭が、今年の1月から3月までコクヨがクラウドファンディングを行なったIoT文房具「大人のやる気ペン」。集まった支援金はなんと約3500万円。注目度の高さがうかがえます。

 

↑コクヨの「大人のやる気ペン」。普段使っているペンに装着すると、専用アプリに学習時間が記録され、努力が見える化され、モチベーション維持につながります。

 

「文房具というと、今までは主に学生が使うものでした。そのため、リスキリング文房具も、大人向けに作られたというよりも機能やデザイン面で『大人にも使える学生向け文房具』が中心でした。
しかしこれは商品名でも明確に『大人』と謳い、大人の学習に特化させた珍しい商品です。デジタルツールが登場したばかりのころは、“デジタルVSアナログ”という構図で語られシーンが多くみられまたが、10年以上経ち、実際は両者を併用する時代になりました。『大人のやる気ペン』もあくまで“手で書く”ことが前提。記録部分をデジタルが担当するという形の併用型です。また、最近ではあらためて“手で書くこと”の魅力が見直されています

 

デジタル全盛の時代に“手書き”が人気のわけ

InstagramなどSNSを見ても、手書きした手帳やノートの写真がたくさんの「いいね」を集めるなど、手書き人気は根強く続いています。最近は、学習用途においても手書きの効力が見直される研究結果が増えています。

 

そのひとつが、2024年に発表されたコクヨと立命館大学の共同研究です。被験者が21名と少なくはありますが、この研究では、紙のノートを使って学習した場合と、タブレット端末に書き込んで学習した場合では、紙のノートを使って学習したほうが、学習内容が記憶に残りやすいという結果が出ました。また、リラックス度合いとストレス度合いもノートに手書きをして学習したときのほうが優位に働いたそうです。

「記憶に対する効果はもちろん、手書きがリラックスにつながるのは面白いところ。三菱鉛筆が行った、日記アプリを使った場合と手書きで日記を書いた場合の比較研究でも、手書きで日記を書いたほうが睡眠の質が高まるという結果が出ていました。記憶の定着やリラックス効果と、手書きは脳に何かしらいい影響を与えるのだと思います。もちろんデジタルツールを活用した学習もいいですが、これらの調査結果を鑑みると、大人の学び直しにおいても、文房具は効果的なアイテムだと言えます」

 

文房具のプロ注目の大人の学び直し文房具8選

アナログツールである文房具を使って学習することのメリットがわかったところで、おすすめの文房具を教えていただきました。

 

1.モチベーションが下がったときのメンタル管理に最適

ラコニック「スタイルノート think」396円(税込)

「『大人のやる気ペン』もそうですが、勉強においてモチベーション維持、つまりメンタルケアはとても大切。とくに大人の場合、独学の人も多く、学生のように先生がいて相談したり、やる気が出ないときに鼓舞してもらったりといったことがないので、自分でメンタルコントロールをしなくてはなりません。この『スタイルノート think』は、思考の整理に役立つ4種類のテンプレートがまとまったノート。なかでも注目は、書き込むことで目標とそれを実現するステップを細分化できる『マンダラチャート』です。大谷翔平選手が高校時代に使っていた思考ツールとしても話題になりましたよね。
『何のために勉強しているんだっけ?』と立ち止まったり、モチベーションが下がったりしたときに、目的を見直したり軌道修正したりするときのツールとして使えます。ノート自体が薄いので、つねに携帯できるのもポイントですね」

 

2.どんなペンとも相性がよく、オールマイティに使える!

コクヨ「『大人キャンパス』シリーズ」 220円(税込)〜

「学生向けノートのイメージが強い『キャンパスノート』ですが、実は大人向けのシリーズもあって、それが本品です。スーツなどにも合うデザインなので、仕事終わりにカフェなどで勉強する人にもピッタリ。シャープペンに水性・油性・ゲルのボールペン、マーカーなど、日本は海外に比べて筆記具の種類もブランドもかなり豊富ですが、私の経験上、キャンパスノートはインクの裏抜けしないなど、幅広い筆記具と相性がいいんです。ベタな商品ではありますが、あらためてその魅力を堪能していただきたい。とくに100円ショップ登場以降に学生時代を過ごした世代は、安価なートで育ったという方も多いので、『おっ!』と驚くはずですよ」

 

3.上品な見た目と省スペースで使える優れた機能性

マルマン「YOUANCE(ユアンス)」 1430円(税込)〜

「ルーズリーフ派の方におすすめしたい、大人も使いやすいバインダー。ビジネスパーソンが持っていても違和感のない上品なカラーリングが魅力です。実はいまルーズリーフのニーズが高まっていて、ルーズリーフ専門店ができたり、ルーズリーフだけを集めたポップアップイベントが開かれたりしているんです。
学生はB5サイズを使いますが、大人はA5サイズを使う方が多いですね。スケジュールページとノートページを一緒に持ち運ぶのにちょうどいいサイズですし、カバンにも入れやすく、カフェなどの小さなテーブルでも開きやすいのが魅力。サイズが小さいので、周りに人がいる場所で勉強しても、ページを覗き込まれにくいというメリットもあります。ちなみにYOUANCEは、表紙を360°折り返せるので、狭いスペースでも使いやすいですよ」

↑「YOUANCE」とセット使いするルーズリーフのおすすめは、マルマンの「書きやすいルーズリーフ」。くすみカラーのルーズリーフもラインナップし、学習テーマごとに色を使い分け可能。ペンのインクの色を邪魔しない白い方眼罫が採用されています。

 

4.まっすぐきれいに線が引けてサッと乾くからノートが汚れない

パイロット「KIRE-NA(キレーナ)」132円(税込)

「ペン先がしなるタイプのマーカーで、その両サイドに付いたプラスチックのガイドにより筆記が安定し、まっすぐきれいに線を引けるんです。分厚いテキストを開いたとき、ページの中心が曲面になりますが、そういった箇所にも引きやすい。インクも優秀で、コピー用紙なら1秒で乾き擦れにくく、さらに手書き文字の上から線を引いてもにじみにくいんです。
もうひとつ押したいポイントは、淡く発色するペールトーンもラインナップしていること。PCやスマホを見る時間が増え目を酷使している人が多い今、『目にやさしいこと』も最近の文房具トレンドのひとつ。蛍光色だと目がチカチカするという人にピッタリです。ちなみにもっとカラバリが多いものがいい人には、ゼブラの『マイルドライナー』がおすすめです」

↑ゼブラの「マイルドライナー」は、穏やかでやさしい色合いが特徴で、全40色から選べます。「今は手帳のデコレーション用途で人気ですが、元々は事務職の方の蛍光マーカーを使っていると目がチカチカするという声から生まれたマーカーです」と菅さん。

 

5.色の力を借りて集中力アップ! インクルーシブデザインの暗記シート

コクヨ「キャンパス 青色シートで覚える暗記用ペンセット」341円(税込)

「集中に効く色(※)と言われている『青色』を採用した暗記用のシートです。片側がオレンジのマーカー、もう片側が水色の極細ペンになったツインペンが付属していて、オレンジのマーカーでなぞった文字や、水色のペンで書き込んだ文字を隠すことができます。色覚特性で赤シートと緑ペンの組み合わせだと文字が読みにくかったり、隠した文字が見えてしまったりする方にもおすすめですよ」

※:青色の効果は心理評価によるものであり、個人差や環境により効果は異なります

↑青色シートの付属のペンは水性ペンですが、ゲルインキペンで書き込みたいという方にはパイロットの「ジュース ネオンブルー」がおすすめとのこと。「30本以上の青ペンを試したところ、これが最もきれいに隠せました。セットで使うと快適な青シート生活を送れるはず!」と菅さん。

 

6.切って貼るところまで一気にできるから切り抜きが溜まらない

ソニック「オレパwithのり プリントカッターと色消えるのり」495円(税込)

「新聞や雑誌、参考文献のコピーなどをノートに貼って勉強している方におすすめのアイテム。切りたい部分で紙を折って、レターオープナーのようにスライドさせると簡単にカットできます。スティックのりが付いていて、貼るところまで一気に作業ができるので、切り抜きを切ったまま溜めがちな方に、ぜひ使っていただきたいですね」

 

7.残り時間がわかりやすい! ペンケースにも入るコンパクトタイマー

キングジム「ビジュアルバータイマー」2970円(税込)

「集中力アップツールのイチオシが学習用タイマーです。スマホでも時間管理はできますが、メールやSNSの通知で気が散ってしまいがち。本当に集中したいならスマホは手の届かないところに置いて、タイマーに切り替えましょう。学習用タイマーは子供向けのデザインの商品が多いのですが、これは大人も使いやすいですし、スリムなのでペンケースに入れて持ち運べます。また、残り時間がバー表示され残り時間が直感的にわかるので、模擬試験の時間配分を身につける練習にもおすすめ。さらに、例えば25分と5分の計測を交互に繰り返すなど、指定した時間をリピートする機能も備えているので、作業と休憩を交互に繰り返す集中メソッド『ポモドーロ・テクニック』にも使えます」

 

8.音を適度に遮断し集中できる空間を作れる!

ソニック「ハートの集中耳栓 ケース付 シリコンタイプ」(右奥)1320円(税込)
ソニック「お花の集中耳栓 ケース付き シリコンタイプ」(左手前)1320円(税込)

「適度な雑音があったほうが集中できるという方にピッタリなアイテム。音をすべて遮断するのではなく、集中するのにちょうどいい雑音を残して遮音できるんです。この『集中耳栓』シリーズは、ほかにもシンプルなデザインのものや、遮音レベルの異なる商品もある(ハートタイプとお花タイプはともに遮音レベル2)ので、お好みで選んでみてください。自分にぴったりの音環境を作れるはずです」

リスキリングがどれだけ世の中に定着したとしても、仕事や日々の家事をこなしながら、勉強を続けるのはたやすいことではありません。そんな限られた時間のなかで、少しでも効率よく学ぶ方法として、ご紹介した文房具を取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

Profile

文具ソムリエール / 菅 未里

文房具販売・仕入れ担当を経て、文房具の専門家として独立。国内外で商品や売り場の企画・監修、各種メディア出演、メーカーのコンサルティング、執筆などを行っている。日経MJなど連載多数。著書に『私の好きな 文房具の秘密』(エイ出版社)、『仕事を効率化する ビジネス文具』(ポプラ社)、『毎日が楽しくなる きらめき文房具』(KADOKAWA)、『文具に恋して。』(洋泉社)がある。
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