【きだてたく文房具レビュー】悪目立ちしないペンケース
仕事柄、友人知人からの文房具の相談に乗ることが多い。この間も、仕事関係では先輩に当たるライターの方から「なんか使いやすいペンケースってない?」という非常にザックリとした相談を受けた。
「なんか使いやすい」も何も、アンタが今どんなペンケースを使ってて、どこが不満なのか分からない以上は、何も言えねぇよ! という言葉は社会人として飲み込んで、「そうですね、最近は立つペンケース系がすごい流行ってますねえ」と、当たり障りのない回答をすると、あちらが「うーん……」と妙に渋い反応をする。
あれ? 想定外の反応に「どうしたんですか?」と聞くと、「立つペンケース、使ったことあるんだけど、会議とか打ち合わせの時に使うと変に目立ってイヤなんだよね」とのこと。
なるほど。考えたこともなかったが、たしかにテーブルの上に自分のペンケースだけがにょっきり立っている状態を、“悪目立ち”と受け取る人はいるのかも知れない。そして、そういうことならこちらにも解決案がないことはない。
“立つペンケース”系は、立たせて使うことで中の筆記具を取り出しやすい、さらに狭い机でも省スペースで展開できる、という大きなメリットがあるが、今回の先輩ライター氏は、場合によっては立たせたくないこともあるという。
ならぱ、立たせても寝かせても便利なものがあれば良いのだろう。ということでオススメしてみたのが、パイロットの立つペンケース「Tatemo」である。
使用時は、斜めに切られた前面の開口部をファスナーで開けてガバッと展開させる。するとフタと本体がマグネットで固定され、三角のくさびのような形に変形するので、これでペンスタンドのように立たせることができるようになる、というもの。
変形によって底面積は1.5倍ほどに増えるので、使っていてもまず安定して自立する。これならカフェのテーブルなど狭い机で作業をする時も、場所が広くスッキリ使えるというわけである。
Tatemoの面白いところは、この三角のくさび型の状態で立たせるだけでなく、寝かせてペントレーのように平らに使うこともできる、というところ。といっても、さほど特殊な仕掛けがあるわけではない。単に、背面もフラットになっているから寝かせても安定している、というだけの話である。
しかし、実は立つペンケース系の中でこれは意外にレアな特性なのだ。基本的に立たせて使うことを前提としているので、他の製品は寝かせた状態ではペンが取り出しにくかったり、広い開口部がキープできなかったりするものが多い。
対してTatemoは、寝かせたトレー形態でも開口が充分に大きく、ペンが取り出しやすくなっているのがポイントだ。また、ファスナー周りに少しフチが残るようになっているので、トレーとして寝かせた時もザラッと中からペンが出てくる心配もない。
縦・横どちらにしても安定するので、自分の使用環境に合わせて置けば快適に使うことができるだろう。
フタには、立つペンケース系ではすっかり定番になった面ファスナー付きポケットが付いており、消しゴムやふせんなどの小物はここに収納可能。立たせたとき底に沈まないように、という工夫である。
ただ、このポケットは口が狭く、決して使いやすいわけではない。使用頻度の高い消しゴムなどはペン型のものを使うなどして、ここにはボールペンの替えリフィルのような、いざという時の備品を収納するのがベターだろう。
【著者プロフィール】
きだてたく
最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。