進化するスマホやSNSを使ったコミュニケーションに対して、改めて見直される手書きの世界。特に鉛筆での手書きは独特の風合いがあり、書いて消せるという機能性で、再評価されています。その鉛筆の分野で最高峰を誇るのが三菱鉛筆uni。発売から今年で60年を迎えるという幅広い層に親しまれた鉛筆です。
しかし、なぜuniが最高峰なのか、通常の鉛筆と何がどう違うのかまでを知っている人は少ないかもしれません。今回はそんなuniに隠された秘密に迫ります。
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【秘密その1】uniは当初プロユース商品だった!?
――日本製鉛筆の最高峰と言われるuniですが、最初に発売された当初は、一般向けではなかったそうですね。
中村圭佑さん(以下:中村) uniが最初に発売されたのは1958年、ちょうど60年前のことです。当時はまだコンピュータは一般的でなく、プロアマ問わず何かを書くときは鉛筆が基本でした。
開発のきっかけは、昭和28年(1953年)に当時の技術部長が欧米を視察した際、日本の鉛筆への評価が意外に低くドイツ製品の模倣と揶揄されたことでした。他社にない独自の製品を作るために原材料から見直し、芯はこれまでにない黒くなめらかな芯、塗り色、商品名にもこだわった商品を開発し昭和33年(1958年)に発売しました。
当時の標準的な鉛筆が1本10円ほど、最も高級なもので1本30円でした。uniは50円(※)と高級品だったため仕事で製図をするような限られた専門家が使うことを予測して、プロユースとして「高級製図用鉛筆」と銘打って発売したわけです。当時は、サラリーマンの初任給が約1万5000円の時代で、当時のコーヒー1杯分の価格と同等という高級商品でした。
※:今の大卒の初任給から換算すると1本700円
【秘密その2】鉛筆の、プラスチックケースでのダース販売は、uniが初めて行った!
――そのuniが一般に浸透していったのはなぜですか?
中村 発売してみると、プロユース向けの製図用という位置づけでしたが、店頭ディスプレイ用に飾った小学校前の文房具店などでも売れて、予想をはるかに上回る売れ行きだったそうです。当時の小学生にとって憧れの鉛筆だったとおっしゃるる方がいまも多くいらっしゃいます。
――uniと言えばプラスチックケースがあって、これも格式高い印象です。
中村 そうですね。uniのダース販売の際、プラスチックケースを採用したことも憧れの商品となった要因の一つだったようです。それまではダースは紙箱が主流で、当時はプラスチックという素材自体も最先端でした。さらにこのプラスチックケースというものは筆箱のように使うことも出来ました。こういうところも学生の憧れの的になったようです。
――そのプラスチックケースには当初、鉛筆の芯を整えるための削り器も付いていたとか。
中村 プラスチックケースはこの60年の間に3回のリニューアルがあり、現在は4代目なので、初代ケースの最初期のものには削り器が付いていました。その後、削り器から消しゴムへと変わりいまも消しゴムがセットされています。
【秘密3】約160色の候補から選ばれた独自開発の色で塗装!
――そして、uniのイメージカラーです。この和風とも洋風とも言えない独特のカラーリングも、かなり格式高い印象ですね。
中村 海外ではメーカーごとに代表製品の鉛筆のカラーリングに特徴があり、色だけを見ても「どこそこのメーカーの鉛筆だ」という風に認識できます。uni以前の日本製鉛筆は、塗り色や商品名など伝統的に欧米のメーカーの影響を受けていたので、いざ海外に持っていくと、「ヨーロッパの鉛筆の真似だな」と思われがちな面があったようです。
こういった点でもuniはオリジナリティを持って開発しました。えび茶色とワインレッドを組み合わせた独自の色で、実際に160色くらいの色を軸に塗り、徐々に絞り込んでこの色になりました。
【秘密その4】「Hi-uni」は世界最多の22硬度をラインナップ!
――uniが浸透するにつれ、様々なシリーズ商品も展開されました。特にHi-uniはハイスペックの位置にあるようですね。
中村 Hi-uniが発売されたのは、最初のuniが発売されてから8年後の1966年です。さらに品質の良いものとして開発され、通常のuniが現在1本90円のところを、Hi-uniは1本140円と、約1.5倍の価格帯となっています。
Hi-uniは2008年にuni発売50周年を記念し、世界最多の22硬度をラインナップしました。硬いほうが10Hで、柔らかいほうが10Bまで。様々な分野で書き分けて使っていただけるように展開しています。
【秘密その5】uniはスマホ用ガラスフィルムなどの引っかき硬度試験にも使われている!
――さらにuniはJISの試験基準に採用されているとのことですが。
中村 JIS規格の試験方法に「鉛筆による塗膜性能の引っかき硬度試験」というものがあります。例えば、スマートフォンのガラスフィルム商品。「4H」、「9H」などの該当の硬度がパッケージなどに記載されており、「この商品は鉛筆の4Hで引っ掻いても傷がつきません」という意味に。そして、この試験で使われる鉛筆の例として当社のuniが挙げられております。これは、変わらぬ品質を評価いただいているからこそ、と捉えています。
【秘密その6】10月1日はuniの日として記念日として制定されている!
――これだけ長きにわたり、高品質を保ちつつ、幅広い世代に愛され続けるuniですが、将来はどんな展開を考えていますか?
中村 uniはこれまでも大きなデザイン変更はありませんでした。変わったことと言えば、バーコードが入るようになったという程度で、時代の進化に合わせて必要な項目を少し変えてきたというだけなんですね。当社にとってuniは非常にシンボリックな商品ですので、この格式と商品の信頼が薄まらぬよう、これからもuniブランドを守り続けたいと思っています。
――今年は60周年ですが、何かアニバーサリー的な試みは予定されていますか?
中村 10月1日は「uniの日」で「uni」が発売60周年を迎えます。……いまのところはまだ決まっていませんが、今年は何かやれれば良いなと思っています。
uniのダース、改めて欲しくなりますね。特に今年は誕生から60年というこの記念の年、その最高品質と格式高い鉛筆に、改めて触れられてみてはいかがでしょうか?
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