人間というのは贅沢なもので、一度でもラクすることを憶えてしまうと、際限なく快適な方に流れてしまい、元には戻れない。なんの話かというと、接着する“テープのり”の話である。
筆者のようなフリーランスの場合、月末に近くなると各クライアント様に請求書を発送する必要があるのだが、その発送用の封筒を封かんするため、月に一度テープのりを使った“のり付けワーク大会”が発生する。この封筒を一通とじるたびにギャランティがチャリンといただけるワケで、もちろん心弾む作業ではある。が、一枚一枚貼っていくのがどうにも面倒くさい。
で、筆者と同様に請求書発送が面倒だというフリーランスや、一度に大量の封かん作業を行う事務職の知人に訊ねたところ、どうやら封筒貼りにはいくつかの「面倒くさいポイント」があることが見えてきた。
そこで今回は、封かん作業に焦点をあてて、面倒くさいポイント別・ラクができる快適テープのりを紹介したいと思う。これを使うと、もう普通のテープのりには戻れなくなるはずだ。
①狙ったところからのり付けできない
封筒の口の上にあるフラップにテープを貼る場合、できるだけフラップのふちギリギリまで貼りたい。封筒とフラップの接合面に貼れてない隙間があると、そこから剥がれてきそうで怖いのだ。ところが、テープのりは狙った位置からのり付けするのが意外と難しい。ヘッドの先端から位置を合わせて引いたはずなのに、狙いよりもだいぶズレてのりがついてしまう、ということがよくあるのだ。
トンボ
PIT POWER-D
実売価格:432円
そこで便利なのが、狙ったフチからのりが付く、トンボ「PIT POWER-D」。ヘッドが上下に動く“ピタシステム”機構で、常にテープを送り出すヘッドの先端からのりが付き始めるという優れものである。
まず、普段通りヘッドを紙に当ててテープを引くと、ヘッドがガチャッと沈み込むように動く。で、引き終わりに持ち上げると、ヘッドが元の位置に戻る。この時、ヘッドと一緒にテープが少しだけ先送りされるのだ。
普通のテープのりが狙った位置からテープが引けないのは、前回に使ったあと、ヘッドの位置にのりが残っていないのが原因。そこで、使い終わりにテープを少し先送りしてやれば、次回は必ずヘッド先端からのりが始まる。
狙った位置からテープが引けるのは、封筒貼りじゃなくてもいろいろと使い勝手がよい。また、厚手の封筒をがっちり接着できる強力タイプなのも、汎用性が高い。ただ、テープ引き終わりにヘッドが動くのは、慣れないと少し気持ち悪いかもしれない。しかし、テープ自体は切れが非常に良いので、使い慣れればスパッとテープを引ききれるはずだ。
②貼るまでの動作が面倒くさい
あまりにもザックリした不満だが、これが意外と多かった。つまり、封筒を机の上に置いて、フラップを片手で押さえながら、もう片手でテープのり本体を引いて……という一連の動作が面倒なのである。
もちろん水のりでもスティックのりでも、接着するなら同じ動作が必要だし、面倒は変わらない。しかし、進化したのりを名乗るなら、そういうところもきっちり進化しとけ、という。無茶苦茶な話ではあるが、なんと、そういう無茶にもちゃんと対応できるテープのりが存在するのだ。
コクヨ
ドットライナーホールド
実売価格:540円
コクヨ「ドットライナーホールド」は、封筒の封かん専用という独自進化を果たしたテープのりだ。まず、見た目が普通のテープのりとは明らかに違う。どちらかというと形状はホッチキスに近い。
使い方は簡単で、テープヘッドとグレーの土台の隙間に封筒のフラップを挟み込み、そのまま横にスライドさせる。それで、テープが斜行することもなくフラップの端まで一直線にテープが引けるのだ。
封筒を手に持ったままサッと挟んで無造作にシャッとスライド。ヘッドの位置を合わせる必要もないので、とにかく作業がサクサク進む。大量の封かん作業には、これがベストチョイスだろう。
一応、土台を折り返すと普通のテープのりとしても使えるが、ヘッドと手元が見えないため使いにくい。やはり封かん専用のツールとして使うのが良いだろう。
③接着力が不安なので二重貼りしてしまう
テープのりの幅は、だいたい6㎜から8㎜ほど。対して、一般的によく使われる長3封筒(A4紙を3つ折りにして入れる細長い封筒)のフラップ幅は26㎜。A4がそのまま入る角2封筒になるとフラップ幅は39㎜と、かなり幅広になる。そこに接着幅がわずか8㎜では、ちゃんと接着できるか不安になるのは当然だ。そこで、強く接着するため、フラップにテープを2列にわたって引くことがある。もちろん手間は倍になるし、それだけ面倒くさい。
コクヨ
ドットライナーワイド
実売価格:702円
ならば“最初からテープ幅を広くしてしまえばいい”という強引な発想を製品化したのが、今月に発売されたばかりの最新テープのり・コクヨ「ドットライナーワイド」だ。
幅はなんと20㎜と、一般的なテープのりの倍以上。真横から見たのでは分かりにくいが、こうやって並べてみればワイドさは一目瞭然。かなりクレイジーなサイズ感である。
テープ幅がフラップ幅ほぼいっぱいということで、一度貼ってしまえば輸送中に剥がれる心配は皆無。接着の表現としてはおかしいが、「どっしり貼れる」と言いたくなるような安心感である。
また、この幅広さは細かいのり付けにも意外と便利なのだ。例えば、そのままテープを引けないような細いのりしろや隙間などにのり付けする場合、ヘッドを横にして、テープの幅分だけチョンチョンとのりを付けることがある。
これも、幅が20㎜あれば一気に長距離ののり付けができる。夏休みに子供の紙工作を手伝う時など、ちょっとした効率化につながるかもしれない。