文房具
2022/7/14 22:10

個性派ホワイトボードに斬新構造のボールペン…文房具の見本市「ISOT」で見つけた発売前の掘り出しモノ5選

今年も文房具的にアツい夏がやってきた。「国際文具・紙製品展」、通称ISOTが7月6~8日に東京ビッグサイトで開催されたのである。残念ながらコロナ禍などもあって、ここ数年は国内の出展メーカーが減少し、会場もやや寂しい印象となった感は否めないが……それでもちょっと探せば、興味深い新製品がゴロゴロ。

↑東京ビッグサイト東ホールに、最新文房具が集結!

 

↑今年は海外ブース(主に韓国・中国・ベトナム)が復活したのも、嬉しいニュースのひとつ

 

今回は、そんなISOTで見つけた、注目の最新文房具を紹介していこうと思う。ちなみに秋冬以降の新製品を発表する場だから、現時点ではまだ発売されていないものがほとんど。気になる製品があれば、各自発売日などは検索してほしい。

 

日本文具大賞グランプリは、消し心地にこだわるホワイトボード

ISOTの醍醐味のひとつが、会期初日に発表される「日本文具大賞」のグランプリ。31年の歴史を誇るアワードということで、注目度は非常に高い。そして今回、日本文具大賞のデザイン部門でグランプリに輝いたのが、wemo(ウェモ)「paper flip board(ペーパーフリップボード)」である。

↑日本文具大賞デザイン部門でグランプリを獲得した機能性ホワイトボード「paper flip board」

 

↑ボード面の平滑性がかなり高く、書き味はスルスル。その分だけ光の反射も強く、周囲からの映り込みが多いのは少し気になった

 

wemoといえば、腕に巻くバンドタイプのウェアラブル・メモがお馴染みだが、こちらは正方形のフォルムが特徴的なホワイトボード。形状に関しては、オンライン会議において顔と一緒にボードが写り込めるように考えられて、正方形になっているようだ。

 

本体はダンボールの表面に特殊なフィルム加工を施したもので、重量はボード単体で約96g。見た目のサイズと比べてめちゃくちゃ軽い! この軽さなら、ほとんどの人が持った瞬間に「軽っ!」と驚くのではないか。なによりボードが軽いと、筆談やオンライン会議などで手に持ったまま書き消しを続けても負担になりにくい。これは大きなメリットだ。

↑さすがこだわっただけあって、「消し心地」はお見事。軽くティッシュで拭くだけでスルーッと消せた。まる4日放置した筆跡でも同レベルで消せるとか

 

↑ちなみにマーカーを挿しておけるホルダーパーツはウレタンスポンジ製で、イレイザー代わりにも機能する

 

会場で話を聞いたところ、「なによりこだわったのは消し心地です!」とのこと。書いてすぐに拭ってスルリと消えるのはもちろんのこと、長時間放置した筆跡もきれいに消せる消字性能は、なかなかに優秀だ。

 

ホワイトボードマーカーは、書いたあと時間が経過するほどにインクが盤面に定着して消しにくくなる。実際、ほとんどの競合製品が96時間以上経過したものが消せなくなっているのに対して、「paper flip board」は軽く拭くだけできれいに消せていた。

 

クラファン発のホワイトボードは、ザシュッと一発クリアが爽快

今回のISOTは妙にホワイトボード系の出展が多かったので、もうひとつ紹介しておこう。第一合成の「WIPE(ワイプ)」は、2021年末にクラウドファンディングサイトmakuakeにおいて達成率1000%超えを果たした、A4(よりちょっと小さい)サイズのホワイトボードである。

↑こちらがクラファン発の機能性ホワイトボード「WIPE」

 

↑カバーをめくるとボード面が露出。このように書き込みができる

 

携帯時にボード面を覆い隠すカバーがついているのだが、このカバーこそが「WIPE」最大のポイント。めくって裏面をみると全域がフェルト生地になっているのだが、なんとこれがボードイレイザーとして使えるのだ。

 

たとえばボードに書かれた筆跡をオールクリアしたい場合、カバーをかぶせて全体を一気に拭き取ることで、あっという間にリセットが完了するわけだ。これは非常に手っ取り早い。

↑消す時はカバーをかぶせて全体をこするようにすると……

 

↑カバー裏のフェルト生地によって、一気に全面拭き取りが完了!

 

従来であれば、ボードのオールクリアをするときはペーパータオルやウェットティッシュを使っていたが、それをいちいち用意するのは面倒くさい。そりゃカバーが拭き取り布を兼ねてくれていたほうが、ラクに決まっているだろう。

 

カバー裏にはマーカーの消しカス(粉汚れ)が溜まるが、これは屋外でパンパンと手ではたいたり、卓上クリーナーで吸ったりしてやることでメンテナンスできるようだ。

 

ファンシー文具は昭和レトロが人気

「食品用ラップに書けるマーカー」や「ドットが捺せる蛍光ペン」のように小技の効いた製品を得意とするのが、プラスチック射出成形品メーカーのエポックケミカル。しかし今年の新製品は意外にも、“昭和レトロ”をテーマにしたファンシー文具シリーズである。

↑エポックケミカルの昭和レトロ文房具「タイムスリッぷ」シリーズ。まさにザ・昭和! なデザインだ

 

↑昭和っぽい衣装引き出し型封筒からはみ出している、クマキヨシの便箋

 

「タイムスリッぷ」と名付けられたシリーズは、「トラ ミノル」「クマ キヨシ」「イヌ タダシ」のかわいい動物キャラがメインアイコン。ちなみにこのミノル・キヨシ・タダシという名前も、昭和に多かった男性名ランキングから取っているとのこと。

 

3キャラのメッセージカードは、専用封筒から大幅にはみ出すサイズとなっており、とぼけた雰囲気が非常にキュート。ほかに、いかにも昭和っぽい水性ペンや多色ボールペン、ハート型のロケットチャーム付きシャープペンシル(写真を入れることも可能)、ファイアーキング風のマグカップもラインナップされている。うーん、昭和。

 

↑「カセットテープのケースにカードメモが入ってる」というだけで、昭和世代には刺さりまくり!

 

↑カバーをくるりと回してスタンドに。当時もカセットケースをカードホルダーに転用していた人、多いのではないか?

 

ちなみに、メッセージカードが入ったカセットテープケース風のプラケースは、なんとエポックケミカル社内で錆びて転がっていた、本物のカセットケース用金型(70年代から実際に使われていた)を転用して作ったのだそう。

 

昭和の頃に実際にカセットケースを生産していたという実績が、令和のファンシー文具に活かされるというのも面白い話である。

 

ちなみに、もう金型の耐久度が保たないので、追加生産は難しいらしい。欲しい人は見つけたら即ゲットだ。

 

どこでもくっつくマグサンド、吸盤プラスでパワーアップ

ガラスやアクリル・木板など磁石がくっつかない場所にも、強力なネオジム磁石パーツを裏表から挟み合わせることでくっつけられるのが、磁石メーカー マグエバーの 「マグサンド」。

 

店舗のガラスドアに磁石フックを増設して看板を吊したり……といった用途で、今やかなりの大人気の製品だ。

↑どこにでも磁石フックが増設できて大人気の「マグサンド」(マグエバー)

 

その「マグサンド」に吸盤を組み合わせて耐荷重を大幅にアップさせたのが、新製品の「マグプラス」。なんと1個あたりの耐荷重が4.5kg(マグサンドの約4倍)というから、これはめちゃくちゃ強力。実際に試させてもらったが、体感ではもっと強いように感じられた。

↑新しい「マグプラス」は、ネオジム磁石に吸盤の力もプラスして、超強力に。指1本で引っぱったぐらいではビクともしなかった

 

↑裏面の磁石パーツ(白い円盤)にも吸盤が付いているので、パーツ同士を挟み合わせるのもラクになっている

 

吸盤がついたことによってもうひとつ、設営しやすさも大幅にアップしている。例えば、ガラスドアの屋内側に吸盤で磁石パーツをくっつけておき、それからおもむろに屋外側に回り込んで磁石パーツでサンドする、ということが可能になった。従来なら裏と表でそれぞれに人手が必要だったのが、吸盤があれば1人時間差で設置ができるというわけだ。

↑アウトドア用のLEDランタンも、1/4インチネジでハメ込んでマグプラス化できる

 

しかも本体から生えているフックパーツは、根元が1/4インチネジになっているため、自在に付け替えが可能。1/4インチネジとは照明機材やカメラ、スマホホルダーの据え付けに多用されている規格なので、これらが場所を選ばず固定できるとしたら、応用範囲はかなり広がりそうである。

 

韓国から来た、意外な書きやすさの先曲がりペン

海外ブースからも、1点紹介したい。韓国ゼロジーテクの「ZERO G ball」は、一目見て「んん?」と首をかしげたくなるような、ちょっと変わったフォルムの油性ボールペンだ。

↑海外勢の中で注目度が高かったのが、ゼロジーテクブース

 

本来ならペン軸からまっすぐ円錐状に伸びているはずの口金パーツが、はっきりと傾いているのである。なんだこれ!?

↑先端がクチバシのように曲がった油性ボールペン「ZERO G ball」

 

油性ボールペンは、先端の小さなボールが転がることでインクが紙に出るという仕組みとなっている。なので、ペン軸を寝かせて(紙に対して角度を浅く)握ると、口金のフチにひっかかってボールの転がり不良が起きやすくなるのだ。

 

ところが「ZERO G ball」はペン軸に対して口金が立ち上がっているため、多少浅い角度で握ったとしても、ボールが転がりやすい角度をキープしてくれるという構造のようだ。

↑軸に対して角度が付いて飛び出したペン先によって、筆記角を深く取る構造。寝かせ筆記でも書きやすい

 

実際に書いてみるとなるほど、見た目からの印象よりはずっと違和感なく書ける。それでいて、普通なら確実に転がり不良でかすれるような角度で握って書いても、スルスルとペン先が走ってくれるのは面白い。寝かせ書きの握り癖がある人にとっては、ありがたいのではないだろうか。

 

ちなみに発想としては、古くから「YORO PEN」など同様のものは存在している。が、こちらの方がデザインは従来のボールペンに近いため、変態っぽさは薄まっている(なので、使いやすい)ように思う。

 

ISOTの時点ではまだ代理店は未定とのことだが、国内販売が始まるのが楽しみだ。