【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】
文房具をこよなく愛す、放送作家の古川耕氏による連載。「手書き」をテーマとし、デジタル時代の今だからこそ見直される“手書きツール”を、1点ずつピックアップしている。第25回となる今回は?
第25話
サンスター文具
メタシル
900円(税抜)
黒鉛を含んだ特殊合金の芯と、アルミボディを組み合わせた八角形のメタルペンシル。黒鉛と合金の粒子が摩擦で紙に付着することで筆跡になる。削らずに16km書き続けられ、水や水性マーカーなどで筆跡がにじまないのも魅力。
使い道に悩むのも楽しい“難しいペン”
このペンは難しい。
筆記具にこんな感想を持ったのは初めてですが、手にしてから日毎に募る気持ちはそうとしか言えず。今日も漫然と筆先を滑らせながら、このペンの理想の居場所を考え続けています。
サンスター文具が今年6月に発売した新製品メタシル。いわゆる金属鉛筆と言われるもので、合金製の粒子を紙に擦り付けて書く筆記具。摩耗が少なく、とても長い距離を書けるのが特徴ですが、黒鉛を混ぜていないぶん発色が薄く、そのためこれまで実用に耐えうる製品はほぼありませんでした。
しかし今回のメタシルは、黒鉛の量を調整して鉛筆2H相当の濃さを実現(しかも消しゴムで消せる!)。見た目も込みで完全に実用品としての雰囲気を纏っており、その物珍しさも手伝ってか、ネットで発表されるやいなや注文が殺到。発売を2か月遅らせるほどの注目を集めました。
書いてみると、金属軸の固いペン先から紙の上にいつもの鉛筆の線が浮き上がってきます。いつまで経っても芯が太らず、なのにペン先が紙を擦る音は、紛れもなく鉛筆のそれ。脳がバグる。
とは言えやはり、薄いっちゃ薄い。罫線すら邪魔になる薄さで、これは小さな手帳やノートには不向きでしょう。逆に、無地の白紙ならほかにない無類の心地良さが楽しめます。これはスケッチ用、それともアイデア帳向け? なんていろいろ悩むのが楽しい、“難しいペン”なのです。
【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】バックナンバー
【第1話~第23話】https://getnavi.jp/tag/furukawakoh-handwriting/
【第24話】ドイツ発の「ラミー サファリ」が漢字に特化! ペン先をチューニングした話題の限定モデルの書き味は?
https://getnavi.jp/stationery/775853/