【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】
文房具をこよなく愛す、放送作家の古川耕氏による連載。「手書き」をテーマとし、デジタル時代の今だからこそ見直される “手書きツール” を、1点ずつピックアップしている。第32回となる今回は?
第32話
三菱鉛筆
KURUTOGA DIVE
5500円(税込)“芯が回ってトガり続ける” シャープペン「クルトガ」シリーズの新モデル。世界初の「自動繰り出し量調整機能」を搭載し、筆記前も筆記中もノック不要で書き続けられる。筆記中の芯の繰り出し量は、筆圧や芯の硬度に合わせて5段階で調整可能だ。
世界的にも珍しい。キャップ式高級シャープ
ボールペンは機能ではなく外見で勝負する「デザインの季節」に入った──とは、この連載で繰り返し書いてきたこと。では、「シャープペンの世界はどうなの?」といえば、例えば学生たちにとってはいまだ「メインの道具」であり続けているように、機能開発競争はいまなお続き、またそれを見た目で分かりやすく打ち出す傾向があるようです。
その結果、「見た目を気にしすぎて、どれも似た外見になる」という矛盾に陥らず、オリジナリティの高いペンが生み出され続けているように見えます。 と、そんな現状をまさに体現する一本が、三菱鉛筆の新製品「KURUTOGA DIVE」。昨年2度にわたって数量限定で発売され、そのたびに入手困難となっていましたが、この3月から継続品として発売されることになりました。世界的にも珍しいキャップ式のシャープペンです。
ノック不要の「自動繰り出し量調整機能」付きで、キャップを外すと同時に自動で芯が繰り出されるという仕組み。もちろんキャップにはデリケートなペン先を保護する意味もあるでしょう。とはいえこのキャップは実用性以上に、オリジナリティを誇示するためのギミックという側面が強いはず。そして、それが支持を受けているのだから何の問題もありません。
プロユースというよりは、オリジナリティを尊ぶ「マニア向け高級シャープペン」というジャンルの誕生です。その第一歩の成功をまずは言祝(ことほ)ぎたいと思います。
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