日本経済をけん引してきた自動車産業。燃費がよく、耐久性に優れ、消費者に寄り添った安定感のある日本の自動車ブランドは、世界でも広く認知されていますよね。
激動の世界経済の荒波にもまれ、ニッポンが誇ってきた家電や半導体メーカーが急激に失速中ですが、先日ミルウォード・ブラウン社が発表したブランド価値が高い自動車メーカーのランキングでは、10位以内に日本の自動車メーカー3社がランクイン!
なかでもトヨタはランキングのトップに輝き、日本の自動車産業の手堅さを証明する結果となっています。
トヨタのブランド力がこれほどまでに高い理由
まずは、ブランド価値が高い自動車メーカーのランキングの1~10位までをご紹介。結果は以下の通り。
1位:トヨタ
2.位:BMW
3位:メルセデス・ベンツ
4位:フォード
5位:ホンダ
6位:日産
7位:アウディ
8位:テスラ
9位:ランドローバー
10位:ポルシェ
華やかでラグジュアリーなブランドイメージを持つ海外メーカーを抑え、なんとトヨタが1位に!
実はトヨタは、過去12年間の同調査でなんと10回もトップに君臨し、圧倒的な強さを誇っています。信頼性や、品質、そして、リコールに真摯に向き合う姿勢などが評価され、高いブランド価値を維持しているようです。
一方で注目すべきは、ドイツのポルシェやスポーツ用途車の老舗ランドローバーを追い抜き、8位に飛躍した電気自動車(EV)メーカーのテスラ。
今回調査を行ったミルウォード・ブラウン社のピーター・ウォールシュ氏によると、テスラの評価は現在販売している自動車に対するものだけでなく、将来への期待値も含まれているとのこと。テスラの自動車を所有していない層にも優れたブランド経験を提供しており、勃興期のAppleやFacebookとの類似性を評価。
この勢いが続けば、テスラがさらなる飛躍を遂げる日がやってくるのかもしれません。
自動車ブランドでは最高でもトータルは30位!
今回、日本のブランドが1位になったからといって、喜んでばかりもいられません。なぜなら、自動車メーカーの中ではトップのブランド価値を誇るトヨタも、トータルの順位は30位だったからです。
総合1位~5位にはGoogle、Apple、Microsoft、Amazon、Facebookといったシリコンバレーを拠点としたIT企業がズラリと並んでいます。さらに、トヨタ以外の日本ブランドは30位以下には皆無というかなり寂しい結果に。
自動車産業は、巨大IT企業と共同で様々な取り組みを行っていますが、それらの取り組みは、IT企業のブランド力として吸収されてしまうという皮肉な結果も想定されます。
自動車に夢とロマンと経済力を投影した時代は、確実に変わりつつあるようですが、海外ユーザーの中には、トップに立ち続けているトヨタや、大幅にブランド価値を上げた新興企業のテスラに複雑な心境を抱いている人も少なくないようです。
どうやら、エコや安定性という評価軸があまりしっくりこないようで、海外掲示板では「トヨタの車は、無難で退屈なんだよな」「90%のユーザーは自動車にその退屈を求めているんだよ」「退屈で何が悪い? 投資家にとって安定性と先見性こそ大きな価値を持つんだ。トヨタは市場の曲がり角を確実におさえている」との書き込みが。
これに応じて、「テスラより販売台数が少ないのに、なぜランキングに入らないんだ?」「ブランド価値ってのは、販売台数じゃない。そのブランドの成長の見込みや先見性を市場が認めているということも重要なファクターだよ」「テスラは、過剰宣伝だと思うな。そこまでのブランド価値はあるかな」などのコメントも……。
どうやら最近パリ協定から離脱を発表したアメリカでは、トヨタの手堅さや、自国メーカーのテスラのエコ性能に価値を見いだせないユーザーが少なからずいる様子。
盛者必衰の自動車業界で、トヨタが長い間トップの地位に立ち続けているのは、たゆまぬ経営努力と開発力の絶妙のバランス感覚があってこそ。
余裕あるふるまいをする白鳥が水面下では足を激しく動かしているように、安定性のために様々な試行錯誤を重ねて続けていることがランキングに反映されているといえそうです。