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2018/12/22 18:00

これだけ多彩な魅力が潜む路線も珍しい — 祝SL復活!乗って見て遊ぶ「秩父再発見」の旅

【秩父再発見の旅5】影森駅を過ぎるとさらに山中へ電車は進む

荒川橋梁を越えると秩父も近い。秩父本線では、秩父駅が秩父市の中心駅となるが、乗り換え客で賑わうのは、次の御花畑駅だ。西武秩父線の西武秩父駅と秩父鉄道の御花畑駅がやや離れているのが難だ(徒歩5分程度)。ちなみに西武鉄道から秩父鉄道へ直通列車は、御花畑駅の専用ホームへ直接、乗り入れ、三峰口駅へ、また長瀞駅へ向かう。

 

御花畑駅から終点の三峰口駅までは、あと5駅しかない。ところが次の影森駅止まりの電車が多いので注意したい。影森駅〜三峰口駅間は、平日の場合は、ほぼ1時間に1本と列車本数が減る。ただし土曜・休日は本数が増え、お昼前後の時間帯を除き15分〜30分間隔と便利になる。

 

影森駅を過ぎると電車は右へ、左へカーブを切りつつ、登り勾配を走る。その途中、秩父本線に途中まで寄り添い、山中に消えるように走る謎の引込線の線路が見えるのだが、同引込線の話は後ほど。

 

山の中の小さな駅を停車しつつ終点の三峰口駅へ向かう。三峰口駅は四方に山々が望める静かな駅。駅前からは三峰神社方面へのバスも出発している。

↑「SLパレオエクスプレス」の牽引機C58は終点の三峰口駅で小休止。駅に隣接する転車台で向きを変える。転車台の周辺は秩父鉄道車両公園として整備されている。秩父鉄道で活躍した電気機関車や貨車が数多く静態保存されている

 

 

【秩父再発見の旅6】秩父市内で見逃せない観光ポイントがある

ここからは秩父本線のおすすめ観光ポイントをいくつかあげておこう。全線に渡り、見どころは多いのだが、ここでは秩父に絞って見逃せないポイントを紹介したい。

↑秩父市はかつて交通の要衝として栄えた。そんな繁栄の名残が市街に残る。御花畑駅近くの番場通りには大正から昭和初期に建てられた建物が、ちょうど十字路を取り巻くように残り登録有形文化財に指定される。御花畑駅で電車を待つ間、気軽に立ち寄れる

 

↑秩父市街や武甲山の眺望が楽しめる羊山公園(ひつじやまこうえん)。例年、4月中旬から5月上旬にかけて芝桜が見ごろとなる。40万株以上の色とりどり芝桜が咲く様子は見事。最寄り秩父鉄道の御花畑駅から徒歩17分、西武秩父駅からは徒歩12分ほど

 

秩父市内の古い街並みや、羊山公園といった観光ポイント以外に、秩父に点在する34か所のお寺さんを巡る「秩父札所巡り」も近年、人気となっている。

 

秩父の食も見逃せないポイントだ。特に地粉を使った手打ちそば(秋の新そばが美味)に、丼に入り切れないほどの大きさの「わらじカツ丼」。さらに夏ともなれば、天然氷を利用した「かき氷」も、近年、注目の的となっている(長瀞に人気店が多い)。かつて養蚕用に造られていたとされる秩父の天然氷。それが今は名産となって、かき氷に利用されているのがおもしろい。

 

 

【秩父再発見の旅7】秩父鉄道の貨物列車の動きに注目したい

最後に貨物列車の動きを見てみよう。現在、民営鉄道(第三セクター鉄道を除く)で貨物列車の運行する会社は国内で3社のみとなっている。

 

秩父鉄道では古くから武甲山を始め沿線で採掘される石灰石を専用の貨車で運んで来た。ホッパ車と呼ばれる貨車の上部、石灰石が顔を見せるほどに満載した車両を連ね、箱形の電気機関車が牽引する姿が絵になる。そうした貨物列車の動きを、写真で見ていこう。

↑影森駅から分岐した引込線(前述)を利用、同ポイントの先にある秩父太平洋セメント三輪鉱業所で採炭された石灰石を満載した貨物列車が出発する。影森駅構内で時間調整した後に三ヶ尻線が分岐する武川駅へ向けて走り始める

 

↑秩父本線の和銅黒谷駅〜大野原駅間にある武州原谷駅(ぶしゅうはらやえき)。貨物駅で秩父太平洋セメントの秩父工場が隣接する。同駅へは群馬県神流町(かんなまち)にある叶山鉱山で採掘された石灰石がベルトコンベアーを使って運ばれ、貨車に積まれる

 

秩父鉄道の貨物輸送量は平均して年間200万トン前後にもなる。これはJR貨物を除き、岩手県の岩手開発鉄道と並び1〜2位を争う輸送量だ。もちろん運ぶ物品が異なるため、トン数のみの数値では比べにくいが、臨海鉄道としては最大の輸送量を誇る京葉臨海鉄道の輸送トン数をも上回る。

 

それだけ貨物輸送が盛んということが言えるだろう。さらに近年は、どちらかといえば地味目だった電気機関車の車体カラーが、黄色やピンクに塗り替えられ、華やかになって、より目立つようになった。

↑貨物列車を牽く秩父鉄道の電気機関車は現在4種類。写真のデキ500形ほか、デキ100形・デキ300形が主に利用される。主流の機関車は青色塗装だが、一部の機関車は写真のように黄色、また茶色、ピンクとカラフルに塗り替えられ華やかだ

 

↑武川駅構内に停車する石灰石列車。同駅から三ヶ尻線へ入り三ヶ尻駅へ向かう。武川駅には機関車検修設備もあり、常に電気機関車が数両、停められている。右に停車するのはデキ500形504号機。ピンク色に塗られ目立つ

 

↑秩父鉄道では石炭列車も走る。JR貨物の専用列車で熊谷貨物ターミナル駅へ運ばれた後、秩父鉄道へバトンタッチ(写真)され三ヶ尻駅へ、または武州原谷駅へ運ばれる。石炭はセメント製造の中で焼成という過程で熱源、また大切な資源として使われている

 

↑太平洋セメント熊谷工場を望む。太平洋セメントはセメント業界の最大手。前述した秩父太平洋セメントは太平洋セメント傘下の企業だ。工場内に三ヶ尻線の三ヶ尻駅があり、貨車に積まれた石灰石や石炭の積み下ろし用の引込線が設けられる

 

秩父鉄道の貨物輸送は非常に活発で、平日休日とも影森駅〜三ヶ尻駅間を4〜7列車、下りが4〜11列車が走る。ただし、セメント工場がメンテナンス等で休みとなると、貨物輸送もなくなる。また早発、遅発、さらに運休が多いので注意したい。

 

このほか、秩父鉄道では東武鉄道などの電車の甲種輸送も行っている。東武鉄道の東西の線路網が遠く離れているためだ。そのため東武鉄道と線路がつながる羽生駅と寄居駅間で、秩父鉄道の電気機関車が、東武鉄道の電車を牽いた甲種輸送が行われている。

 

秩父鉄道は通勤・通学や観光だけでなく、セメント製造のための石灰石輸送や、東武鉄道の甲種輸送など、欠かせない鉄道路線となっている。さらに新駅誕生で変りつつある秩父鉄道の沿線。これからも注目していきたい。

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