【DMV導入へ②】3色のDMVのお披露目イベントが開かれる
2016年5月26日、「第一回 阿佐東線DMV導入協議会」が開かれ、DMV導入に向けた取組みが開始された。2019年3月9日に、まず1台目の車両が誕生し、公開された。そして10月5日に、ほか2台も誕生したことから、3台揃ってお披露目された。
お披露目イベントの様子をお届けしよう。
まず、牟岐線の阿波海南駅に近い、阿波海南文化村へ向けて3台のDMVが道路の上を走ってきた。この車両が線路も走ると思うと、ちょっと不思議だ。
駐車場内に赤、青、緑の華やかなDMVが並び、訪れていた人たちの目を引きつける。形は通常のマイクロバスのノーズ部分がやや出た、それこそかつて多くが走っていたボンネットバスの現代版といったスタイルだ。
3台の車両には、一般公募に寄せられたデザインのアイデアが生かされ、さらに愛称が付けられた。緑の車両のデザインは、阿波産の「すだち」と徳島県の鳥「白鷺」、愛称は「すだちの風」と名付けられた。
青い車両は、宍喰駅(ししくいえき)の名物“伊勢えび駅長”がサーフィンに挑戦しているデザインで、愛称は「未来への波乗り」。赤い車両は高知の英雄、坂本龍馬と、南国土佐に降り注ぐ太陽がデザインされ、愛称は「阿佐海岸維新」とされた。
【DMVを導入へ③】JR北海道で開発・導入を目指したが
DMVとはどのような車両なのか、ここで改めて見ていくことにしょう。
DMVを開発、実験を最初に行ったのはJR北海道だった。2004(平成16)年にマイクロバスを改造した第1次試作車により、実験が始められた。その後、開発が進められ、2008年には釧網本線(せんもうほんせん)を利用、試験的な営業運行まで行われ、技術が煮詰められていった。
2008年にはトヨタ自動車も参加して、DMVを開発。2009年には岐阜県の明知鉄道で試験走行が行われている。
JR北海道では2015年の導入を目指すとしていたが、既存の特急車両の事故や、線路トラブルなどが相次いだ。こうしたトラブル解消と、北海道新幹線の開業などに専念するとして、2014年には、DMVの試験運転を凍結してしまった。
JR北海道では導入されなかったものの、国土交通省とJR北海道では事業化に向けて「DMVに関する技術評価委員会の中間とりまとめ」を2015年10月30日にまとめている。阿佐海岸鉄道の取り組みは、このまとめを元にしており、さらにJR北海道のDMV推進センターから技術データの提供を受けた。北の大地で実現しなかった技術が、南の徳島県、高知県で実用化されることになり、始めて実を結んだのである。
さて、マイクロバスがどのように“変身”するのか、見ていこう。
車両の正面、ボンネット部分の中に線路走行用の前輪が隠されている。運転席に付いたスイッチの操作で、この前輪が“ぐわーっ”といった具合に出てくる。その時間は10〜15秒と、あっという間だ。一緒に後輪も出てくる。
かつて実験が始められた当初は、時間もだいぶかかったそうだが、今はあっという間。この時間ならば、実用化にはまったく支障がないと感じた。
「バスモード」の時はこの鉄輪の前輪と後輪は隠された状態で道路を走る。「鉄道モード」へ「モードチェンジ」で、前後の鉄輪が出てくる。後輪は下の写真のような出方で、ゴムタイヤの後輪に比べてやや浮き気味だ。
DMVはゴムタイヤの後輪が駆動輪となっている。いわば後輪駆動車だ。線路上でも、このゴムタイヤが力を線路に伝えることによって車両が動く。この機能は、保線用に使われる鉄道会社の事業用車などと同じ仕組みだ。