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2020/5/24 17:00

フォルクスワーゲンの「T-Cross」を分析。激戦の小型SUV市場で生き残れるのか?

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回取り上げるのは、フォルクスワーゲンの新型SUV。

 

【登場人物】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。

 

安ド

元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。

 

【今月のクルマ】フォルクスワーゲン/Tクロス

SPEC【TSI 1st Plus】●全長×全幅×全高:4115×1760×1580㎜●車両重量:1270㎏●パワーユニット:999cc直列3気筒+ターボ●最高出力:116PS(85kW)/5000〜5500rpm●最大トルク:200Nm/2000〜3500rpm●WLTCモード燃費:16.9㎞/L

299万9000円〜335万9000

 

「すべてにおいて合理的」

永福「安ドの愛車は三菱パジェロであるな」

安ド「はい! デカいクルマが好きで、昨年、中古で買いました!」

永福「パジェロオーナーから見て、このTクロスはどうだ?」

安ド「シートに座ってビックリしました。SUVなのに着座位置がとっても低いです!」

永福「普通のクルマよりは高いぞ」

安ド「それはそうですが、これではSUVの利点である“上から見下ろす感”があまり味わえません!」

永福「そのぶん重心が低く、コーナリングは実に安定していて気持ちいいぞ」

安ド「それと、SUVにしてはボディがスゴくコンパクトです!」

永福「ベースはポロだからな」

安ド「パッと見はわりと大きく見えるんですけど、運転したら、取り回しがあまりにもラクでビックリしました。この大きさなら、どんな細い道でもスムーズに走れそうです!」

永福「最小回転半径は5.1m。実はトヨタのヤリスと同じ(※)だ」

※:グレードにより数値は異なる

安ド「ヤリスと同じですかぁ! なのに室内スペースは結構広いんですよね。ファミリーカーとしてもこれで十分かもと思ってしまいました」

永福「もしかするとパジェロより広いかもしれぬ」

安ド「まさか……」

永福「パジェロのようにムダなスペースがないからな。FFだし」

安ド「えっ、SUVなのにFFしかないんですか!?」

永福「FFしかない」

安ド「ホントに4WDの設定がないのですか!?」

永福「ナシだ」

安ド「フォルクスワーゲンって、4WD車を色々と出してますよね。なのにFFだけですか!?」

永福「FFだけだ」

安ド「それは少しイヤだな〜」

永福「なぜだ。お前もパジェロを4WDに切り替えることはほとんどないと言っていたではないか」

安ド「ほとんどありません!」

永福「愛車でオフロードを走ったことはないのか?」

安ド「ありません!」

永福「そういう人のためのSUVなのだ。最低地上高は180㎜あるので、段差を乗り越えるのは得意のはずだ」

安ド「そうなんですか〜。エンジンも1Lと低排気量なんですよね。何も知らずに乗っていて、後から知ってビックリしました」

永福「ターボのおかげで実にパワフルだろう」

安ド「ええ。もちろん3Lエンジンを積む愛車のパジェロとは比べるべくもないですが……」

永福「いや、お前のパジェロより速いんじゃないか?」

安ド「まさか!」

永福「トルクは2L並みだからビュンビュン加速する。すべてにおいて合理的。便利で軽快な小型SUVということだ」

安ド「納得です!」

永福「見た目はちょっと地味なのが惜しい気もするがな」

 

【注目ポイント1/ドリンクホルダー】サイズと形状は少々特殊

5人乗りですが、カップホルダーは運転席と助手席間に2つしか設置されていません。しかも形状不変の八角形になっているので、置くものによっては入らないこともあると予想されます。ちなみに写真のペットボトルは多少力強くねじ込めばしっかり入りました。

 

【注目ポイント2/ルーフレール】ルーフレールはレスオプションがあっても良い?

日本仕様では、いかにもSUVらしいルーフレールが装着されています。これがあればキャリアやルーフボックスなどが設置できて便利ですが、全高は1580㎜となり、入れない立体駐車場があります。レスオプションの設定があればいいのにと思いました。

 

【注目ポイント3/アクセントカラー】外観を華やかにみせるスペシャルカラー

ボディカラーは全8色が設定されていますが、「デザインパッケージ」というパッケージオプションを選べば、ホイールやドアミラーなどにオレンジ色のアクセントカラーが配置されて華やかになります。グリーンとブラックもあり、ボディカラーに組み合わせて選べます。

 

【注目ポイント4/スマートキー】ドアノブには隠された穴がある

いちいち取り出さなくても解錠・施錠ができ、エンジンスタートもスイッチを押すだけのスマートキーですが、本体に折りたたみ式の差し込みキーが付いているのはなぜか。実はドアノブの一部が取り外せて、そこにキーの差し込み穴があるのです。

 

【注目ポイント5/ルーフアンテナ】可動式ではなくて着脱式

最近は可動式のアンテナを採用する車種が多くなってきたなか、Tクロスは旧来の固定式アンテナを採用しています。洗車するときはわざわざ外さなければならず、すこし古臭い感もありますが、レトロな雰囲気でいいかもしれません。

 

【注目ポイント6/バンパーデザイン】フロントに付けられたタイヤの跡?

全体的にコンサバな印象のスタイリングですが、「デザインパッケージ」に加えて、バンパーの独特な模様のように細かな部分でデザイン性を打ち出そうとしています。この模様、なんだかタイヤの跡っぽくてカーマニアからすれば好印象です。

 

【注目ポイント7/ラゲッジルーム】高さが十分あって床下にもスペース出現

荷室の床板をめくると、スペアタイヤ用の大きなスペースがあります。パンク修理キットが置いてあるだけなので、普段は使わないモノを収納できそうです。荷室自体はSUVらしく高さが約700㎜あり、背の高いモノでも積載できます。

 

【注目ポイント8/インパネ】アクセントカラーがインテリアを華やかに

エクステリア同様、「デザインパッケージ」を選ぶと、インパネやシートにもオレンジやグリーンの差し色が使われます。これがあるだけで、車内が華やかでポップな雰囲気となり、デザイン性を高めてくれます。逆に、これがないとかなり地味です。

 

【注目ポイント9/リアシート前後スライド】後席へのアクセスが良くなり荷室も広がる

リアシートは前方に最大140㎜スライドさせることが可能です。これは後席に取り付けたチャイルドシートに前席から手が届くというメリットがあります。荷室は、床面が伸びないので後席背もたれとの間に溝ができてしまいますが、スペースは広くなります。

 

【これぞ感動の細部だ!/1L TSIエンジン】低排気量ならではの好フィーリング

輸入車のトレンドに沿って、1ℓ直列3気筒の低排気量ターボエンジンが搭載されています。コンパクトサイズのTクロスには必要十分な116馬力を発揮し、よほど飛ばさないかぎり不足感のない動力性能が与えられています。軽快なフィーリングは、低回転域でゆっくり走ってもある程度ブン回しても楽しめるものです。

 

撮影/我妻慶一