【東北地方のおすすめローカル線】
JR東日本 津軽線(青森駅〜三厩駅55.8km)
最果て感は並みではない、津軽二股駅の現状もおもしろい
津軽半島の東海岸にほぼ沿って青森駅と三厩駅(みんまやえき)を結ぶJR津軽線。同線は2つの異なる顔を持つ。青森駅と蟹田駅(かにたえき)の間は電化され701系電車と、青函トンネルを抜ける貨物列車が走る。電車が走る区間は青森市の近郊区間といった印象が強い。一方、蟹田駅から先は非電化で、キハ40系気動車が走り、よりローカル色が強まる。青森駅〜三厩駅を通して走る列車は1日に1往復で、蟹田駅〜三厩駅間はこの1往復を含めて計5往復しか列車が走らない。
興味深いのは津軽二股駅。この駅は北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅と隣接していて、新幹線から乗換ができる。だが、駅名が異なる。初めて訪れた人は少し面食らうかもしれない。
奥津軽いまべつ駅はJR北海道が管理する駅。津軽二股駅はJR東日本が管理する駅という違いがあるせいなのだろうか。ちなみに北海道新幹線が開業する前に奥津軽いまべつ駅は、津軽今別駅という名前だった。津軽二股駅から先は駅が4つ。途中の3駅は集落に近くに駅が設けられているが、終着駅の三厩駅のみ集落から離れている。駅近くに民家が少なく、最果て感が一層強く感じられる。
津軽鉄道(津軽五所川原駅〜津軽中里駅20.7km)
秀麗な津軽富士を眺めつつ半島を北上する最北私鉄路線
国内最北を走る私鉄(第三セクター路線を除く)で、路線開業の歴史は古く今年の7月で90周年を迎える。列車は五能線の五所川原駅に隣接の津軽五所川原駅(JR駅と同じ構内にある)と津軽中里駅間を走る。列車の運行はほぼ1時間おきで、全線乗ると31分〜45分ほど。
五所川原駅近郊からは岩木山(津軽富士)の美しい眺めが楽しめる。その先、金木駅(かなぎえき)は小説家・太宰治の生家「斜陽館」があり、乗降する人も多い。お隣、芦野公園駅は桜の名所、県立芦野公園の玄関口だ。終着駅の津軽中里駅は私鉄最北の駅で、2017年に転車台が復活された。ちなみに津軽中里駅からは、北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅行きの路線バスが出ている。
津軽鉄道の名物といえばストーブ列車。旧型客車の中にダルマストーブが用意された名物列車で、冬期以外にも8月の五所川原の夏祭りなどイベント開催時に運行される。今年は夏祭りの新型感染症の影響で内容が変更される予定で、同列車の運行も難しくなっているようだ。
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三陸鉄道リアス線(盛駅〜久慈駅163.0km)
秋の台風被害から立ち直り3月20日に再び全線が復旧した
風光明媚な三陸海岸にほぼ沿って走る三陸鉄道リアス線。東日本大震災により不通になっていた旧JR山田線が、昨年の3月23日にようやく復旧した。そして南リアス線、北リアス線と線路が1本につながりリアス線となった。
ところが、台風19号の襲来により、わずか7か月後の10月12日から再び不通となってしまった。その後、工事が続けられ今年の3月20日に、釜石駅〜陸中山田間の営業を再開、全線復旧を果たした。
リアス線は第三セクター鉄道で最長の路線距離を持つ。盛駅から久慈駅まで完乗すると、4時間20分強と、とかなりの乗り応えがある。とはいえ、海景色、山景色とも変化に富み、乗って楽しい路線だ。この5月18日には田老駅(たろうえき)〜摂待駅(せったいえき)間に、新田老駅が誕生する。同駅は宮古市役所田老総合事務所に直結した駅。田老駅の駅前地区が津波の被害にあい、山側に多くの民家が移動した。そうした動きに合わせての新駅開業となった。
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秋田内陸縦貫鉄道 秋田内陸線(鷹巣駅〜角館駅94.2km)
武家屋敷にマタギの里、秋田内陸の魅力が鉄道で満喫できる
盲腸線だった国鉄角館線と阿仁合線。秋田内陸縦貫鉄道は1989(平成元)年4月、鉄道の空白地域だった秋田内陸部に新線を敷き、角館線、阿仁合線と結び開業させた路線だ。会社の名前の通り、秋田県の内陸を南北に縦貫して走る。路線の愛称は2017年に「スマイルレール秋田内陸線」となった。
沿線には見どころが多い。秋田新幹線と接続する角館駅と言えば、近くの武家屋敷が有名、桧木内川(ひのきないがわ)の桜も良く知られる。路線の途中、北秋田市の阿仁一帯は「マタギの里」としても知られる。マタギとは狩猟を生業としてきた人たちのこと。夏期は農耕、冬期は山での猟を行った。路線にも阿仁マタギ駅という名称の駅もある。
もちろん四季を通じて、車窓から秋田内陸部の美しい景色が楽しめる。ちなみに起点は奥羽本線と接続する鷹巣駅(たかのすえき)。JRの駅は鷹ノ巣駅と「ノ」が入り、秋田内陸縦貫鉄道の駅は「ノ」が入らない。駅の表記は微妙に違い、改札口も異なるが、駅は同じ構内にある。
普通列車に混じって全線を1往復、急行列車が走っている。同列車を利用すれば約2時間で全線を完乗できる。
JR東日本 磐越西線(郡山駅〜新津駅175.6km)
福島県と新潟県で山景色&川景色の両方が楽しめる
この路線の歴史は古い。1898(明治31)年に郡山駅〜中山宿駅の開業からその歴史が始まる。その後に東西、両側から延伸が進められ1914(大正3)年に全通した。全通当時の路線名は岩越線(がんえつせん)。明治期に福島県西部を岩代国(いわしろのくに)としたことから、岩代と越後を結ぶ路線ということでこの路線名となった。しかし岩代という国名は一般化しなかったこともあり、後に磐越西線と変更されている。
この路線は見どころがふんだんにある。郡山駅〜喜多方駅間は電化されていて、おもに電車が走る。途中、猪苗代駅付近から仰ぎ見るのは磐梯山、また南に猪苗代湖が広がる。会津盆地に入れば、会津藩の城下町・会津若松、蔵の町・喜多方といった観光都市が連なる。喜多方駅〜新津駅間は非電化路線で、気動車が走る。この区間、路線はほぼ阿賀野川(福島県内は阿賀川)に沿って敷かれる。飯豊連峰(いいでれんぽう)の山並みも美しい。
新津駅〜会津若松駅間は主に週末に「SLばんえつ物語」が走っている。磐越西線の名物列車で、同SL列車に乗車しようと訪れるファミリー客も多い。
会津鉄道 会津線(西若松駅〜会津高原尾瀬口駅57.4km)
阿賀川上流の眺望と古い宿場町、観光列車が名物に
福島県の会津地方を南北に走る会津鉄道会津線。只見線と接続する西若松駅から野岩鉄道(やがんてつどう)と接続する会津高原尾瀬口駅間を走る。路線は元国鉄会津線で、1987(昭和62)年に第三セクター経営の会津鉄道に引き継がれた。
路線の起点は西若松駅だが、列車は2つ先の会津若松駅からの出発となる。会津田島駅までは非電化で、同駅止まりの列車がある一方で、一部の列車はその先まで運行。東武日光駅まで会津鉄道の気動車を使った快速列車「AIZUマウントエクスプレス」が乗入れている。東武鉄道浅草駅から、特急「リバティ会津」が会津田島駅まで走っていることもあり、都心と直接、行き来できることも、同鉄道線の魅力となっている。
路線は阿賀川(大川)にほぼ沿い、渓流の眺望が楽しめる。さらに観光列車「お座トロ展望列車」も走り人気となっている。会津西街道の宿場「大内宿」や塔のへつり、芦ノ牧温泉と人気観光地も沿線に点在している。