【注目!2020年⑨】熊本地震からまる4年!再開した豊肥本線
ここ数年、自然災害により不通となる路線が目立つ。最後の2テーマは自然災害と鉄道に関して触れていこう。
明と暗、まずは明から。2016年4月に起きた熊本地震の影響で、豊肥本線は大きな被害を受けた。肥後大津駅(ひごおおづえき)〜阿蘇駅間がそれから4年に渡り不通となっていた。復旧工事が順調に進み8月8日に運転を再開した。平行して走る国道57号よりも早い復旧となった。
豊肥本線の復旧区間には立野駅近くの三段式スイッチバックと、登りきったところから見る阿蘇カルデラの広大な眺めが魅力となっている。車内から眺望が楽しめるパノラマシート付き特急「あそぼーい!」も熊本駅〜別府駅間を往復する運転となり、より旅が楽しめる趣向となっている。特急「あそぼーい!」の運行は土・日祝日が中心で、「あそぼーい!」が運行されない日には「九州横断特急」が運行されている。
なお、立野駅で接続する南阿蘇鉄道(立野駅〜中松駅間が不通)も熊本地震により大きな被害を受けた。不通区間の鉄橋およびトンネルを中心に修復が進められ2023年夏までに復旧の予定とされる。
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【注目!2020年⑩】今年も災害の影響で複数の路線が不通に
2020年も災害により、多くの路線が傷ついた。災害による“暗”の部分となるが、全国に今も残る不通区間とともに触れておこう。これも地球温暖化のせいなのだろうか。猛烈な自然災害が日本列島を襲う。とくに九州は例年のように被害にあい深刻だ。
◇JR九州・肥薩線(八代駅〜吉松駅間が不通に)
JR九州の肥薩線。熊本県の八代駅と鹿児島県の隼人駅(はやとえき)を結ぶ。途中、球磨川に沿って走る川線区間と、国見山地を越える山線区間に分けられる。変化に富み観光路線としても人気だった。2020(または令和2)年7月豪雨と名付けられた災害で、三大急流とされた球磨川が氾濫。球磨川に架かる橋りょうの流失など450か所が被害を受けた。そのため今も八代駅〜吉松駅間が不通となっている。
10月には赤羽国土交通相が、国が復旧費を負担することも想定していると述べているが、球磨川の治水工事も含めて進める必要があり、路線の復旧は長期にわたると見込まれている。
◇くま川鉄道(全線が運休)
くま川鉄道はJR人吉駅に隣接する人吉温泉駅と湯前駅(ゆのまええき)を結ぶ湯前線24.8kmを運行する。肥薩線と同じく2020年7月豪雨が同路線を襲った。球磨川を渡る球磨川第四橋りょうが流失、さらに保有する5両の車両すべてが水没被害を受けた。
被害を受けた後に、鳥取県を走る若桜鉄道(わかさてつどう)のスタッフが車両の修繕に駆けつけるなど、全国から支援の手が差し伸べられている。被害が比較的、軽微だった肥後西村駅〜湯前駅間19kmは2021年度に再開を目指していることも発表された。残る肥後西村駅〜人吉温泉駅間は第四球磨川橋りょうの修復が必要なこともあり、全線復旧までは長い道のりとなりそうだ。
◇叡山電鉄鞍馬線(市原駅〜鞍馬駅間が不通)
2020年7月豪雨の被害は九州だけでなかった。だいぶ離れた所でも被害をもたらしていた。京都市の北部に叡山本線と鞍馬線の路線を持つ叡山電鉄。京都を訪れる観光客に人気の観光路線である。この鞍馬線の貴船口駅付近で、大規模な土砂崩れが発生し、電車が不通となった。
叡山電鉄の市原駅以北は、険しい区間で、2018年9月にも台風の影響で長期間不通になったことがある。今回の土砂崩れはかなりの大規模で、今もまだ運転再開の期日は発表されていない。同線の名物である「もみじのトンネル」も、この秋は見ることができず、残念なこととなった。
このほか災害によって長期不通となっている路線と区間をまとめた。
◇根室本線・東鹿越駅〜新得駅間 2016年台風10号災害の影響
◇日高本線・鵡川駅(むかわえき)〜様似駅間 2015年1月の高波被害の影響
◇只見線・会津川口駅〜只見駅間 2011年新潟・福島豪雨の影響
◇水郡線 袋田駅〜常陸大子駅間 2019年東日本台風の影響
◇上田電鉄別所線 上田駅〜城下駅間 2019年東日本台風の影響
◇日田彦山線 添田駅〜日田駅間 2017年九州北部豪雨の影響
◇久大本線 豊後森駅〜庄内駅間 2020年7月豪雨の影響
上記の路線には、すでに復旧工事が始められている区間もある。一方で、残念ながらすでに廃線に向けて動き出した路線も出てきている。
毎年のように予想をはるかに越える規模の自然災害が各地の人々を苦しめ、また鉄道網を襲う。“もういい加減にしてほしい”という思いが募る。2021年こそ、静かな一年になることを心の底から祈りたい。