〜〜希少な国鉄形電車の世界その8 JR西日本の「115系」〜〜
日本国有鉄道の直流近郊形電車を代表する115系。登場してからすでに60年近くになる。残る115系は1980年前後に製造された車両が多くを占めるものの、それでも40年近くとご長寿車両となりつつある。
115系が最も多く残るのがJR西日本だ。多くの115系が残存しつつも、後継車両との入換えの波が徐々に迫りつつあるようだ。
【はじめに】JR西日本には計590両の115系が引き継がれた
115系は1963(昭和38)年に製造が開始され、合計1921両が製造された。国鉄からJRに移行した1987(昭和62)年当時にも、計1875両がJR東日本、JR東海、JR西日本へ引き継がれている。この3社の中で引き継いだ車両数が多かったのがJR東日本とJR西日本で、JR東日本へ1186両、JR西日本へ590両が引き継がれた。このうちJR東日本ではすでに21両まで減ってしまっている。
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さて一方の西日本に残る115系は、あと何両となっているのだろう。
◆岡山と山口を中心に251両が活動中!とはいうものの
車両を長く大事に使う傾向があるJR西日本とあって、今も115系は251両が走り続けている。内訳は次の通りだ。
○岡山電車区:165両(4月1日以降に微減しているとの情報もあり)
○下関総合車両所運用検修センター:84両(2020年4月1日現在のJR西日本発表の車両数)
○福知山電車区:2両(2020年4月1日現在のJR西日本発表の車両数)
この車両数を見る限り大所帯である。とはいえ安心はできない。JR移行後、中国地方を走る直流電化区間では、多くの115系や113系が使われてきた。特に山陽エリアでは115系の“天下”だった。
◆大変動が起った2015年から2016年にかけて
広島地区を走る電車が配置されるのが下関総合車両所広島支所。ここには2014年4月1日まで115系が88両、また113系が68両も配置されていた。この年までは計181両という大所帯だったのである。ところが、2015年春以降にJR西日本では「広島シティネットワーク」の一新に取り組み、新型227系の導入を進めていった。山陽本線はもちろん、呉線、可部線に新造車両が導入され、113系、115系、105系といった車両が徐々に消えていった。配置車両数の推移をみると良く分かる。
○下関総合車両所広島支所の113系・115系の車両数
113系 | 115系 | |
2015年4月1日 | 68両 | 88両 |
2016年4月1日 | 2両 | 0両 |
2015年に88両配置されていた115系は翌年には0両になってしまったのである。この車両数の変化には裏があった。下関総合車両所広島支所の115系36両が、下関総合車両所運用検修センターに大移動、同検修センターの115系は180両からこの年に216両に増えていた。つまり、227系を導入、115系との入換えにあたり、引き継ぎをスムーズに進めるためにも、配置箇所を一時的に変更するなどをして対応していたわけだ。
大変動があった2015年から2016年にかけてのJR西日本の115系だが、2015年当時の115系の車両数が計443両だったのに対して、2020年には251両まで減少した。この5年の間に半分近くの車両が引退となっていたわけだ。
JR西日本として今後は、京都地区を走る113系の入換えを先に進めるとしている。だが、227系を導入したその入換えのスピードを見ると、中国地方の115系に関しての入換え計画はまだ未知数というものの、決して安泰とは言い切れないのである。
【115系が残る路線①】岡山地区を走る115系の特徴
ここからはJR西日本に残る115系を注目してみよう。中国地方を走る115系は1000番台、1500番台、3000番台がメインとなっている。岡山地区には1000番台と1500番台、山口地区には3000番台の配置が多い。
このうち、中国地方向けに製造されたのが115系1000番台だった。1000番台は1982(昭和57)年7月に伯備線と、山陰本線の伯耆大山駅(ほうきだいせんえき)〜西出雲駅(当時は知井宮駅)間の電化に合わせて投入された電車だ。中国山地を越えることもあり耐雪耐寒設備を備えている。
一方、1500番台は編成数を増やすために、1000番台の車両に運転台ユニットを付け先頭車両化、3両など短い編成での運行が可能なように生まれた番台である。
さらに、3000番台は観光向けを考慮した車両で、3扉を2扉化、さらにメインの座席を転換クロスシートとした電車だ。こうした大まかな区分けがあるのだが、JR西日本の車両は、体質改善工事と、編成変更をするにあたり、さまざまな形の115系を生み出している。このあたりの車両の形の違いも、鉄道ファンとしては興味深いところである。
◆車両の現状1:岡山地区の電化区間を幅広く走る115系
岡山地区を走る115系は、岡山駅を中心に山陽本線の姫路駅〜三原駅間、宇野線、瀬戸大橋線の茶屋町駅〜児島駅間、さらに赤穂線(あこうせん)の東岡山駅〜播州赤穂駅間を走る。また福塩線の福山駅〜府中駅間も列車本数は少ないながらも入線している。さらに耐雪耐寒仕様が生かされ、伯備線の全区間と、山陰本線の伯耆大山駅〜西出雲駅間を走る。
車両の多くは中国地域色の黄色塗装だ。そんな中、希少な塗装車両も走り、鉄道ファンから注目を浴びている
◆車両の現状2: 黄色に交じり湘南色の115系が2編成走る
岡山地区で注目されているのが湘南色の115系だ。2017年4月のJR西日本のニュースリリースでも、3両2編成は「湘南色と呼ばれるオレンジとグリーンのツートンカラーのデザインで運行しております」と紹介。実は黄色に変更予定だったが、利用者からの要望が多かったことから、湘南色で再塗装されることが、この時に発表されていた。
湘南色で再塗装された編成は岡山電車区では珍しい115系の300番台だ。この300番台は国鉄時代最後のダイヤ改正となった1986(昭和61)年11月を期に東京の三鷹電車区から岡山電車区へ移動した車両でもある。
移動した当時はクリーム色と紺色の横須賀色だったが、その後に湘南色に塗り替えられた。現在、D26編成とD27編成が湘南色で山陽本線を中心に走り続けている。体質改善工事未施工の車両で、外観はオリジナルの姿を残していて、湘南色が良く似合う。
【115系が残る路線②】山口県内の黄色い115系の特徴は?
中国地方の中で広島地区は全車が227系に置き換えられている。この広島地区を飛び、山口県に入ると、再び115系が主役となる。山陽本線の岩国駅〜下関駅間では、宇部線から入線する列車をのぞき大半が115系となる。
◆車両の現状1:2扉の3000番台が主力となって走る
現在、下関総合車両所運用検修センターには4両×19編成と、2両×4本の計84両が配置されている。4両編成の115系は3000番台(中間車に3500番台連結の編成もあり)で、すべて2扉車両となっている。
3000番台は1982(昭和57)年に広島地区用に造られた115系だ。通勤・通学利用よりも観光利用を重視、乗降扉を前後2つとし、大半の座席を転換クロスシートにした珍しい115系である。中間車のモハ114形には2つのパンタグラフが付いているのが特徴だ。こちらは製造時にパンタグラフ1つとしようとしたところ、乗務員から故障を心配する声があがった。そのため2つにしたという逸話が残る。
さて2扉4両編成の車両だが、やや異なる編成も混じる。パンタグラフが1つのみ編成があるのだ。この編成はさて?
◆車両の現状2:中間の2両だけ3500番台という編成も走る
中間車2両が3500番台という編成が含まれるのだ。こちらは元117系の中間車を利用した編成で、117系を6両から4両に短縮するにあたって、余剰車を115系編成用に転用した車両だ。改造してモハ115形・モハ114形の3500番台とした。こちらはモハ115形にパンタグラフが1つ付く。このパンタグラフの数の違いで3000番台と3500番台と番台数が異なっている。
【115系が残る路線③】岡山と山口には大胆な改造先頭車が走る
JR西日本の115系だが、ユニークな改造編成も走っている。3タイプあるが、写真とともに、ユニークなスタイルを見ておこう。全車とも、中間車を改造した車両で、先頭改造車は115系らしい丸みが消え、切妻面をそのまま使った平面的な“顔だち”となっている。まずは岡山地区を走る改造車両から。
◆改造車の現状1:非貫通タイプ横一列の正面窓が特徴の改造1000番台
伯備線用に2001(平成13)年度に改造され、岡山電車区に配置された1000番台の車両だ。2両編成で、うち中間電動車だった車両を先頭車として改造した。
丸い115系の正面スタイルとは異なる、真っ平らの正面で、非貫通タイプ。運転席のガラス窓が広く横に開けられ、途中に支柱がない。改造された同車はパンタグラフを2つもつ。先頭車がパンタグラフを2つ上げて走る姿が迫力満点だ。この改造車の形式名はクモハ114形で、1098、1102、1117、1118、1173、1178、1194、1196の計8両が在籍している。
◆改造車の現状2:中央に貫通扉、窓が3枚のユニーク顔の1600番台
1000番台改造車と同じ岡山電車区にもう1タイプ、ユニークな改造車が配置されている。2004(平成16)年度に改造された1600番台だ。こちらは岡山地区のローカル線の輸送力増強のために設けられた改造車で、3両編成のうち片側先頭車が改造されている。
運転席のガラス窓は3枚で中央に貫通扉が付く。この改造車も丸みのない平面そのまま。いかにも“中間車を改造しました”という姿を持つ。座席も転換クロスシートに改造されている。車両番台は改造に合わせて、1000番台から1600番台に変更、形式はクモハ115形で、1653、1659、1663、1711の4両がその車両番号だ。山陽本線、瀬戸大橋線などの普通列車として利用されている。
◆改造車の現状3:元は舞鶴線用改造車として生まれた2両編成の115系
もう1タイプの115系改造車が走っている。山口地区を走る2両編成の115系だ。山口地区では2扉3両編成の3000番台が主力車両として走るが、こちらは3扉2両編成なので、見分けがつきやすい。
現在は山口地区を走る115系改造車だが、舞鶴線用に生まれた車両だった。1999(平成11)年10月の舞鶴線の電化に合わせて改造が施された。舞鶴線で活躍した後に、下関総合車両所検修センターに移動している。
改造車は中央に貫通扉を設け、運転席のガラス窓は3枚となっている。岡山地区を走る1600番台と構成は同じだが、こちらの車両は運転台が高い位置にあり、また正面のガラス窓が、角張っているせいか、より重々しい顔立ちとなっている。
実は福知山電車区に同タイプがわずかに2両残っている。ちなみに福知山電車区に残る115系は6000番台の車両番号が付く(クモハ114形6123+クモハ115形6510の編成)。山口地区へ移動した車両も元は6000番台だったのだが、下関総合車両所検修センターへの配置の後に6000番台から元の1000番台に戻された。現在の形式名はクモハ114形で1106、1621、1625、1627の4両が山陽本線を走っている。
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こうして見てきたように、JR西日本に残る115系は、実にさまざま。こうした残る115系の姿を眺めつつ旅するのもおすすめである。