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2022/11/24 20:30

「ブリザックVRX3」がSUV向けサイズを拡充。氷上での高い能力と一般路での扱いやすさを実感

ブリヂストンのスタットレスタイヤと言えば『BLIZZAK(ブリザック)』。雪国での装着率No.1という超有名ブランドです。特に2021年に発売された「VRX3」は、ブリヂストン曰く『新次元のブリザック、史上最高、史上最強のブリザック』として誕生しました。そして、今シーズンはそのラインナップにSUV専用サイズを新たに追加したのです。今回はその試乗レポートをお伝えします。

↑ブリヂストン「BLIZZAK(ブリザック)VRX3」。スケートリンクでのコーナーリングもしっかりとグリップ感があり安心して走行できた

 

街乗り中心の使い方に最適なスタッドレスタイヤ「ブリザックVRX3」

いまやSUVの人気は世界的に高まっていて、日本も例外ではありません。街には多くのSUVが走るようになり、普通のセダンと同じような使い方をする人も増えています。しかし、SUVは車高が高く車体も重いため、カーブなどではどうしてもタイヤに負荷がかかりやすくなるのも確かです。特に冬用として使うスタッドレスタイヤは、低温下でもしなやかさを保てるよう、トレッド面が気泡を含んだ柔らかい発泡ゴムで作られているため、この影響が受けやすくなります。

 

そこでSUVならではの特性に合わせたスタッドレスタイヤが必要になるわけです。

↑ダントツの氷上性能をSUVユーザーへサイズを拡大したブリザックVRX3

 

実はブリヂストンには、すでにSUV向けスタッドレスタイヤとして『DM-V3』が用意されていて、今回、BLIZZAKがSUV向けタイヤを発売することで、下は225/60R17~上は235/55R20まで12サイズがかぶることになります。もし、このサイズに該当するとしたら、どちらを選べばいいのでしょうか。

 

ブリヂストンによれば、「雪深い山岳路など、スキーをはじめとするレジャーへ出掛ける際はDM-V3をおすすめしたい」とのこと。つまり、DM-V3は積雪を噛み込みながら走破していくのが得意であって、そのためにトレッド面の溝を大きめに割いています。ただ、これによって路面への接地面積は自ずと小さくなるため、これが凍った路面はやや苦手となります。さらに乾いた路面を走れば、ロードノイズが少し大きめに出がちです。

 

そこで、普段使いとして雪深い道路を走ることはあまりなく、「積雪があまりない街乗りでも快適に走れるスタッドレスタイヤが欲しい」という声が多く聞かれるようになりました。SUV向けVRX3が登場した背景にはそんな理由があったのです。

 

発泡ゴムの改良と排水性能向上でブラックアイスバーンにも強い

ただ、これはスタッドレスタイヤとして、グリップ力を抑えたということではありません。実は街乗りでは交差点付近に多いブラックアイスバーン対策が欠かせないのです。ブラックアイスバーンとは昼間は気温が高くなって雪が溶け、夜になると気温が下がって凍結し、この上を信号待ちなどで発進/停止が繰り返することで鏡面状態となった路面を指します。ここは特にスリップしやすい危険な箇所として知られることから、街乗りで使うスタッドレスタイヤにはそんな場所でもしっかりグリップすることが求められるのです。

 

VRX3はそうした状況下に特に注力して開発されました。それだけに氷上での性能は極めて高い! そして、ドライ路面ではスタッドレスタイヤ特有のパターンノイズも抑えて快適なドライブが楽しめる! 加えて、重量の重いSUVに対してもしっかりとした剛性で足元を支える。そんなスタッドレスタイヤがSUV向けのVRX3というわけです。

 

ではVRX3はそれをどうやって実現したのでしょうか。そのポイントは、ブリヂストンが得意としてきた発泡ゴムを進化させたことにあります。前モデル「VRX2」では発泡ゴムの気泡を円形としていましたが、それをVRX3では楕円とする「フレキシブル発泡ゴム」としたのです。これによって、氷にしぶとく食らいつく能力を高めることに成功したのです。

 

その上でトレッドパターンの形状にも変更を加えました。たとえば氷上で滑る原因ともなる氷とタイヤの隙間に生まれる水を徹底して排出するために、サイプの形状を工夫して水の逆流を抑えています。さらにトレッドパターンも溝の幅を狭くすることで接地面積も拡大し、これがパターンノイズの低減にもつながりました。

 

つまり、フレキシブル発泡ゴムとトレッドパターンのデザイン変更による排水能力の向上が、氷上でのグリップ力を高めることの決め手になっているということなのです。

 

氷上でのしっかりとした手応えと一般路での扱いやすさを実感

だけど実際のところはどうなのか。今回の試乗会はそんな疑問に答えるため開催されたのです。試乗は氷上での能力を試すためにスケートリンクと、ドライ路面でのフィーリングを体験するために一般公道に分けて行われました。

↑氷上での試乗体験をするために特設で用意された東京郊外のアイススケート場

 

まずスケートリンクの特設コースで走らせると、そのグリップ力にしっかりとした手応えを感じました。さらにフルブレーキングによる制動能力も試しましたが、車重があるSUVでも不安なく停まることができたのです。ならば、旋回ではどうか。少し意地悪をして速度を上げ気味に走ってみると、前モデルVRX2よりも外側に膨らむ速度域が明らかに高かったのです。

↑ブリザックVRX3は、氷上を旋回しても優れたグリップ力を発揮した

 

VRX3がデビューした際に開かれたセダン系モデルを使った試乗会で、同じようなコースでの体験をしていますが、車重のあるSUVでも明らかな進化を見つけることができました。まさに“史上最高”“史上最強”を謳うVRX3の実力、ここにあり! そんな印象を抱いた次第です。

↑セダン系の試乗も体験。直線コースでのフルブレーキングする体験でもグリップ力の確かさを実感できた

 

次は一般公道での試乗です。走り出してすぐにわかったのが、スタッドレスタイヤにありがちな曖昧さがないということです。スタッドレスタイヤは溝を大きく取っているため、ブロックごとの剛性が一定を超えるとヨレた感じになり、これがハンドルを操舵したときに曖昧さが伝わってくることが多いのです。その感覚がVRX3ではほとんど感じさせなかったのです。

↑ドライ路面での試乗は一般道のほか、「ブリヂストン イノベーション パーク」のテストコース「B-Mobility」でも行われた

 

しかも走行中のパターンノイズはほとんど伝わってきません。乗り心地の収束性も高く、路面の継ぎ目からの振動もきれいにいなしてくれます。もちろん、クルマ側の能力にも依存してる部分も小さくないと思いますが、それでもここまでノーマルとの差を小さくできているのには正直言って驚かずにはいられませんでした。この状態なら同乗者がスタッドレスタイヤであることをまず気付かないでしょうね。

↑スタッドレスタイヤにもかかわらずVRX3は、ドライ路面でのターンノイズも最小限に抑えられていた

 

↑ブリヂストン イノベーション パーク「B-Mobility」では、路面の継ぎ目を走行する体験もできた

 

今まで、冬場になってスタッドレスタイヤに履き替えて走ると、否応なしに“スタッドレスタイヤ”を実感することが常でした。実際は走っているウチにそれも諦めにも変わっていくのですが、VRX3ならそんな諦めは不要なのです。しかもスタッドレスタイヤとしての能力も高く、アイスバーンにも圧倒的な強さを発揮します。まさにスノードライブはシーズン数回程度という都市部在住者にとって、VRX3は最適なスタッドレスタイヤとなるのではないでしょうか。

↑試乗した日は、ブリヂストン イノベーション パークの見学会が実施された。ブリヂストンのコア技術や製品を実際に見て触れることができる

 

 

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