初代モデルが大ヒットしたホンダ「ヴェゼル」だったが、2021年に登場した新型モデルは、デザインイメージを一新。ライバルとは一線を画するシンプル&クリーンなデザインで、コンパクトSUV市場でも目立った存在となっている。本稿ではそのデザインや装備に隠された魅力を深堀りする。
■今回紹介するクルマ
ホンダ/ヴェゼル
※試乗グレード:e:HEV PLaY
価格:227万9200円~329万8900円(税込)
新型ヴェゼル、他車との違いはデザインの妙にある
コンパクトSUV市場はここ数年ずっと活気に満ちている。なかでもホンダのヴェゼルは、2013年に登場した先代型がブランニューモデルであったにも関わらずヒット作となり、2014年から3年連続で新車販売クラスナンバーワンに輝いた。手頃なサイズと価格、そしてアクのないデザイン、室内の広さなどが人気を博した要因だ。
そんなヴェゼルが新型へフルモデルチェンジしたのは2021年だが、現在のコンパクトSUV市場にライバルは多く、トヨタの「ヤリスクロス」や「C-HR」、日産「キックス」などが存在している。では、この市場で新型ヴェゼルが打ち出した違いが何かといえば、それはデザインの妙だ。
切れ長のヘッドライトというのは現代SUVのトレンドでもあるが、ボディ同色グリルは新型ヴェゼルの真骨頂である。まるでグリルが存在しないように見えて、無機質な感じで無印良品っぽいというか、シンプルでクリーンなイメージだ。初めは違和感を覚える人もいるかもしれないが、見慣れてくると、品がよく、知的に見えてくる。
一方で、やはりクルマには目立つグリルがあってこそ、みたいなユーザーも一定数存在する。その証拠に、オプションパーツでは、ボディ色と異なるブラックのグリルが人気らしい。ないものねだりという人もいるだろうが、これはつまり、ボディ同色グリル以外の部分でもヴェゼルのデザインが優れていることの証明にほかならない。
ボディサイドには、水平基調でまっすぐなウエストラインがフロントからリアまで伸びている。しかもこれが結構高い位置に設定されていて、車両全体の重心が高いように感じられる。しかし、スポーツカーでは重心が高く見えるとカッコ悪いが、ヴェゼルのようなSUVでは問題ない。むしろ重厚さが感じられて、乗員の安心感にもつながる。
さらに、サイドラインからつながるように高い位置に配置された、左右につながった形状のテールランプも特徴的だ。ランプ内はサイバーなデザインが施されていて、リアのアクセントになっている。また、その上のリアウインドウはかなり傾斜がつけられていて、クーペライクなスタイリングになっている。横から見るとクルマが前傾姿勢をとっているようにも見えるが、このアンバランスさがヴェゼルのおしゃれさを引き立てている。
全体的に見てみると、ライバル車と比べて、端正なラインで、シンプルかつ品のある雰囲気にまとめられている。清潔感がありすぎて毒が足りないという人もいるようだが、他に似てない独自性という意味では頭ひとつ抜け出しているようにも感じる。