ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、2022年末から日本に導入された、VW(フォルクスワーゲン)が本命と据える新世代EVを取り上げる。
※こちらは「GetNavi」 2023年9月号に掲載された記事を再編集したものです。
【PROFILE】
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。
安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。
【今月のGODカー】
Volkswagen
ID.4
SPEC【Pro】●全長×全幅×全高:4585×1850×1640mm●車両重量:2140kg●パワーユニット:電気モーター●最高出力:204PS(150kW)/4621〜8000rpm●最大トルク:310Nm/0〜4621rpm●一充電走行可能距離:618km
514万2000円〜648万8000円
ヨーロッパでもっとも売れているEV
安ド「殿! 今回はVWのEV、ID.4を取り上げます!」
永福「またEVか」
安ド「え? このコラムでEVを扱うのは久しぶりですよ」
永福「そうだったか。最近ニューモデルの試乗というと、EVばかりなのでな。ところが日本では、EVはまだ全体の4%弱しか売れていない。うち半分近くを日産のサクラと三菱のekクロス EVの軽EVが占めている。その他のEVはほとんどが不人気モデル。元気が出ないのだ」
安ド「そうなんですか!?」
永福「前述の軽EV以外でそこそこ売れているのは、日産のアリアとテスラくらい。富裕層の間では、ポルシェのタイカンなどのチョー速EVが人気だが」
安ド「ID.4は、アリアのライバルですね!」
永福「うむ。世界的に見れば、こういうコンパクトSUVタイプが、EVとして最もスタンダード。ID.4は、ヨーロッパで一番売れているEVなのだ」
安ド「EV販売数世界一のテスラより売れているんですか?」
永福「ヨーロッパではな」
安ド「確かに、すごく普通に乗れる気がしました!」
永福「これぞスタンダードだ」
安ド「でも、シフトスイッチがインパネに付いていたり、適度に個性的な部分もあって、なかなか良いと思います!」
永福「デザインもスタンダード感満点だ」
安ド「グリルが小さいのはEVっぽいですけど、それ以外はすっきりスポーティで、カッコ良いと思います!」
永福「嫌味がないな」
安ド「走りも自然でした!」
永福「まるでガソリン車のように自然、と言われているが、驚いたのは、加速が遅いことだ」
安ド「エッ、これで遅いんですか!?」
永福「EVは、アクセルを踏んだ瞬間に最大トルクが出るので、どのEVも、走り出した瞬間は『ゲッ、速い!』と思うものだが、ID.4はその感覚が一番小さい」
安ド「これでですか!」
永福「テスラのモデル3 パフォーマンスなどは、発進加速で本当にムチ打ちの症状が出た。それに比べると“ものすごく遅い”と言ってもいい」
安ド「僕は十分速いと思いましたけど……」
永福「不必要に速くないと言ったほうがいい。VWは大衆車メーカー。その良識の表れだ」
安ド「なるほど!」
永福「そのわりに、電費が特に良くはないのが残念だ。ヒーターも効率の悪いタイプなので、冬場は電気を食うぞ」
安ド「ウリはなんでしょう?」
永福「VWは、グループのアウディ、ポルシェとともに、独自の専用充電ネットワークを作る。ディーラーに行けば、待たずに90 kWの急速充電ができる確率は高い。なにしろ売れてないからな」
安ド「ガクッ!」
【GOD PARTS 神】床下の厚み
バッテリーを床下搭載したことで走りも安定
ドアを開けると見るからに床下が分厚いですが、これは床下のアンダーボディにリチウムイオンバッテリーが敷き詰められているためです。重量物であるバッテリーが床下にあるため、必然的に重心が低くなり、走りも安定しています。ちなみにクルマの下側を覗いてみると、バッテリーがあるためフラットになっています。
【GOD PARTS 1】ドライバーモニタ
広い視野を生み出す超小型ディスプレイ
運転席前のモニタは薄くて小さいです。小さいので表示される情報も必要最小限ですが、これが意外にも見やすくて、無駄を省くことは大切だと実感させられます。運転席からの広い視界を生み出すことにも役立っています。
【GOD PARTS 2】ウインドウオープナー
後席の窓を開けるならワンステップ必要
4ドア車なのに、窓を電動開閉するスイッチであるオープナーが左右2つしか付いていません。しかし、よく見るとその前方に「REAR」と書かれていて、そこを押すとリアウインドウの操作に切り替わります。これはメリットがよくわかりません(笑)。
【GOD PARTS 3】ドライブモードセレクター
珍しいところに付いているシフト操作レバー
「ドライブモード」という名が付いていますが、いわゆるシフトセレクターです。運転席モニタの右側に一体化していて、グリンと回すことでシフトを選べます。シフトとしてはいままで見たことのない形状ですが、操作感は意外とすぐ慣れてしっくりきます。
【GOD PARTS 4】ラゲッジルーム
広くて使える荷室がアウトドアでも大活躍
SUVスタイルでありながらワゴンのようでもあるID.4。その荷室は前後方向に長く、広くなっています。後席シートを前方へ倒せば1575Lもの大容量となります。スタイリングは都会的ですが、荷室が広いのでアウトドアレジャーにも向いています。
【GOD PARTS 5】センターコンソール
ドリンクも小物もいろいろ入る
フロント左右シート間にはシフトレバーがあることが多いですが、ID.4のシフトは右頁のようにメーター横に設置されています。結果、ドリンクホルダーや小物入れがたくさん設置されています。スペースの有効活用というやつですね!
【GOD PARTS 6】フロントデザイン
EVに大型グリルは必要なし!
エンジン車ほど吸気を必要としないため、EVに大型グリルは必要ありませんが、ID.4もやはりスッキリした顔をしています。しかし、VWの象徴たるゴルフなどは、最近大型グリルを付けてなかったので、違和感がありません。
【GOD PARTS 7】ボンネット下
ありそうでなかった収納
モーターを後輪近くに搭載しているため、ボンネットの下にはきっとポルシェやフェラーリのように収納があるのではと期待したのですが、空調関係の機器などが積まれていました。やはりフロントの収納はあまり使わないからでしょうか。
【GOD PARTS 8】アクセル&ブレーキペダル
VWらしい遊びゴコロ
よく見ると両ペダルに「再生」「停止」のマークが付いています。動画サイト隆盛の時代が生み出した遊びゴコロですね。かつてビートルには一輪挿しを付けたこともありましたが、VWはいつの時代も伊達なブランドなのです。
【GOD PARTS 9】パノラマガラスルーフ
いまどきっぽい操作で類まれなる開放感
Proグレードのみ標準搭載される大型ガラスルーフです。運転席の頭上あたりから後席後ろまで広がっていて、シェードを開けると車内に開放感があふれます。操作は物理スイッチではなく、タッチして指を前後に滑らせて操作するいまどきっぽい形になっています。
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