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2019/11/6 19:00

「しま模様」にはどんな働きがある? シマウマを巡る長年の論争に決着

牛や馬など、身体の毛が一色である動物がほとんどなのに、なぜシマウマは白と黒の模様がついているのか? この謎は以前から多くの研究者の間で論争が繰り広げられており、そのなかでも有力なのが「アブなどの虫がとまりにくくなるから」という説。今年に入ってからは欧米の研究者がこの説を裏付ける研究結果を発表し、最近では日本でも同様の研究論文が発表されました。

 

虫の目をくらます

シマウマのしま模様の謎は、「体温コントロールのため」「自然界でカモフラージュするため」など、これまでにもさまざまな説が論じられてきました。そのなかで有力な説として出てきたのが「アブなどの害虫から身を守るため」というもの。

 

2019年2月に英ブリストル大学と米カリフォルニア大学デービス校の研究者たちが発表した内容によると、しま模様の布を単色の布を馬にかぶせてアブなどの虫がどのくらいとまるか観察したところ、しま模様の布をかぶったときはとまったアブの数が少なかったというのです。どうやら白と黒のしま模様がアブの目をくらませて、体表にとまりにくくさせているようなのです。

 

アブなどは牛や馬、シマウマの身体にとまって血液を吸う虫で、感染症をひきおこす原因ともなります。だからアブなどの虫を介した感染症にかかるリスクを減らすことは、動物たちにとって自然界で生き残っていくために大切なことであり、そのためにしま模様が進化していった可能性も考えられるわけですね。つまり、この研究内容は「シマウマのしま模様は害虫から身を守るため」という説を裏付けることとなったのです。

 

そして、このしま模様の効果をさらに証明することになったのが、2019年10月に発表された愛知県農業総合試験場の研究論文*。この試験場では、牛にシマウマと同じようにシマウマ模様を塗り、アブなどの虫のとまり方についてその効果を検証することにしたのです。

© 2019 Kojima et al.

 

実験では、黒い体表の黒毛和種に白色のしま模様をつけた「白しま牛」(a)、黒色のしま模様をつけた「黒しま牛」(b)、しま模様をつけない「しま無し牛」(c)の3種類を用いて(上の画像参照)、それぞれの虫の行動を比較しました。その結果、「黒しま牛」と「しま無し牛」は30分間で110回以上も虫に刺されたのに、「白しま牛」は60回未満と約半分となったのです。さらに、虫を追い払おうとする行動も「白しま牛」は25%少なくなり、牛のストレスも軽減させているのかもしれません。

↑近寄る吸血昆虫が減った白しま牛。© 2019 Kojima et al.

 

牛がハエやアブに刺されると、食事や睡眠が妨げられたりストレスを感じたりするなど生産性に影響をもたらします。そのため今回のシマウマ効果の研究がさらに進めば、畜産農家が牛にシマウマ模様をつけるなど、新しいシマウマ模様の利用方法が進められていくことになるかもしれません。

 

*Kojima T, Oishi K, Matsubara Y, Uchiyama Y, Fukushima Y, Aoki N, et al. (2019) Cows painted with zebra-like striping can avoid biting fly attack. PLoS ONE 14(10): e0223447. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0223447

 

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