動物の心拍数は、身体の大きさに関係があると言われ、身体が小さい動物は心拍数が高くなり、身体が大きい動物は小さくなる傾向にあります。では、体長が30メートル近くに達するシロナガスクジラ(英語名: Blue whale)の心拍数はどうなのでしょうか? そんな地球上で最も大きい動物の心拍の計測に、米スタンフォード大学の研究者たちが初めて成功しました。
スタンフォード大学の研究チームが用意したのは、4つの吸盤がついたランチボックスほどの大きさの計測器。クジラの心電図や水深を計測できるこの機器をシロナガスクジラのヒレに装着し、後日回収しました。
そして得られたデータを解析した結果、シロナガスクジラはエサを探すために水深184mまで潜り、16分30秒間も潜水していたのですが、そのときの心拍数は1分間に4~8回で、最も少ないときには1分間に2回の心拍数となったことがわかりました。さらに水面上に出て多く酸素を取り込んでいるときは1分間あたり25~37回の心拍で、水深によって心拍数が大きくことなっていることも明らかとなったのです。
大きければ大きいほど少ない
シロナガスクジラの心拍の計測に成功したのは世界で初めてのことで、最低心拍数も最高心拍数も研究者たちの予想を覆すものでした。
生物学者の本川達雄氏によれば、心周期(心臓が1回打つのにかかる時間)はヒトが1秒、ネズミは0.2秒、ネコは0.3秒、ウマが2秒、ゾウは3秒とのこと。したがって人間の心拍数は安静時に1分間で60回前後で、ネズミは1分間に300回、ハツカネズミの場合は1分間に600~700回となります。さらに人間よりも身体が大きい動物だと、ウマの心拍数は1分間で30回、ゾウは1分間20回と少なくなるんですね。
そして今回、地球上で最も大きな動物と言われるシロナガスクジラの心拍計測に成功したわけですが、データの分析により、シロナガスクジラの心臓は極限状態近くで動いている可能性が伺われたのです。このことは、なぜシロナガスクジラが現在以上の大きさにならなかったのかという問題解決の手がかりになるかもしれません。
現在、個体数が1万~2万5000と推定されているシロナガスクジラは絶滅危惧種に指定されています。今回の計測結果は、シロナガスクジラの絶滅リスクを軽減させるための研究にも役立てられるかもしれないと言われていますが、具体的にどのように応用されていくのか要注目です。