芸術品のなかには、時には一般人には理解不可能な世界観や美があったりするものですが、壁にバナナを貼り付けただけの作品に約1300万円(12万ドル)もの値がついた出来事が海外で話題になっています。いったいどんな作品なのでしょうか?
約1300万円(12万ドル)の値段がついた作品は、アメリカのマイアミビーチで開かれた美術展「アートバーゼル」に展示されたものです。「コメディアン」と名づけられた作品は、バナナをガムテープで壁に貼り付けただけのもの。しかし、この作品に3人の購入者が現れ、12万ドル(約1300万円)と15万ドル(約1600万円)の価格がついたそう。しかも、使われていたバナナは高価なものでも特別な栽培法で作られたものでもなかったといいます。
これほどの高い金額がついたのは、このアートの作者がイタリア人のアーティスト、マウリツィオ・カテラン氏だったから。同氏はこれまでに18金製の金ピカに光る黄金の便器(「America」という題)や、ミラノ証券取引所の前で中指を突きたてた彫刻など、奇抜な作品を次々と世に送り出し、業界の異端児とも言われる人物。しかも、その多くの作品に、数千万円から1億円以上の高額の値がついており、注目を集めているアーティストなのです。おそらく「マウリツィオ・カテランの作品なら、いくら払っても欲しい」と思うコレクターが世界中にいるのでしょう。
花より団子
そしてこのバナナの作品が話題になったのは、高額の値段がついたことに加え、ある騒動が起きたことも要因となりました。それは、展示されているバナナを取り、その場で食べてしまった人がいたから。パフォーマンスアーティストとして活動するデービッド・ダトゥナ氏は展示中の「コメディアン」に近づくと、テープをはがしその場でバナナの皮をむき、むしゃむしゃと食べ始めたのです。「アーティストパフォーマンスです。空腹のアーティスト(笑)」と、あっけにとられる周囲の人に言い、「おいしい」と言いながらバナナにかぶりついたのです。
デービッド・ダトゥナ氏は職員に別室に連れられる事態となり、すぐに別のバナナが壁に貼り付けられたそうです。こんなちょっとした騒動も手伝って、この作品への注目がますます上がっていったわけです。
ちなみにこの作品のバナナは、「あくまでも概念」として使われていたもの。交換することも想定して作られて作られていたそうです。ただ、バナナを食べられてしまう騒動の影響で、残念ながらアートバーゼルの最終日にはこの展示ははずされてしまったそうです。芸術は奥が深い……。