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2020/1/8 18:30

ドイツで「イースクーター」が大流行中! 人気加速の理由は?

前後に2個の車輪が付き、モーターで走る電動キックボード「イースクーター」。近年欧米を中心にエコで手軽な新しい乗り物として利用が広がりつつあります。アメリカの電動キックボード会社のLimeは日本市場への進出を目指しており、この乗り物に関心を寄せている読者の方もいるでしょう。

 

筆者が暮らすドイツでも、これまで見かけることが多かったセグウェイの代わりに、急激な勢いでイースクーターが浸透しています。その存在感は古い街並みと最新テクノロジーの融合を感じさせますが、なぜイースクーターがドイツで急拡大しているのでしょうか? ドイツ在住の筆者がレポートします。

ドイツではイースクーターを利用できる場所が多く、観光客もその土地の住民も日常的に活用しています。指定地域内ならどこでも乗り降りができ、使い方も簡単。

 

まずスマートフォンにアプリをダウンロードし、そこにクレジットカードを登録します。各車体にはQRコードが登録されており、そこにダウンロードしたスマホのアプリを同期させるだけ。すると、その時点から使用時間、場所、距離などの情報がイースクーター会社のシステムに収集されます。

 

イースクーターの電気を充電するのは、同社と提携している地元住民たち。家で充電するといくらか代金をもらえるという手軽なアルバイトができるんですね。このように、使い勝手の良さに加えて、排気ガスの心配もなく、最新テクノロジーを地域コミュニティの役に立っていることが、ドイツ人に好意的に受け入れられた理由として挙げられます。

 

安心して乗り捨て

ドイツでは自転車が盗まれることが多く、停める場合は頑丈な鎖をつけるのは当たり前。それに対してこのイースクーターは、道端や住宅街などに、鎖なしで適当に乗り捨てられているのです。イースクーターは盗まれないのだろうか、と不思議に思う人もいるかもしれませんが、その心配がないのは、内蔵されているコンピューターテクノロジーのお陰。イースクーターは、利用者の携帯電話と(イースクーター会社の)アプリを連動させない限りは作動しない自動ロック機能が備わっており、安心して乗り捨てできるのです。また、どのイースクーターがいつどこで誰に使われているのか、すべてネット上で把握されているため、デジタル上での監視が常に行なわれているのです。

 

近場での利用であれば、イースクーターはお手ごろな料金で使うことが可能。例えば、ベルリンでは、どのレンタル会社でも1ユーロから始まり、その後は1分あたり15~25セント程度加算されていきます。ドイツのバスの料金が1~2ユーロ程なので、そのような料金設定であれば、イースクーターのほうが、なかなか捕まらないタクシーや遅延の多いバス・電車を待っているよりも早く移動できます。

またイースクーターはコンパクトで、乗り降りも簡単なうえ、操作もラク。細道や裏通りも走行可能で、上り坂だってスイスイ進みます。目的地のすぐ目の前まで行ける利便性の高さも、多くのユーザーに受けている理由の1つですね。

 

ノーヘルで飲酒運転って大丈夫?

このように便利で手軽なイースクーターですが、課題がないわけではありません。1つ目の問題は安全面です。ドイツのイースクーター利用者の飲酒運転は、クルマと同様に血中アルコール濃度が0.5パーミルまで許容範囲ですが、この国ではいまのところヘルメットの着用が義務化されていません(Limeはヘルメットの着用を強く勧めています)。飲酒後にほろ酔い気分かつノーヘルでイースクーターを飛ばす人間が出てくるのではないかと不安は残ります。

 

2つ目の課題は、環境に配慮した施策がもっと必要なこと。確かにイースクーターはクルマやオートバイとは違って排気ガスが出ません。しかし米ノースカロライナ州立大学の調査では、イースクーターは自家用車よりは環境に優しいとはいえ、バス等の公共交通機関を利用したほうがより環境に優しいという結果も出ています。

 

ドイツで急速に広まったイースクーターは利便性を損なわないようにしながら、このような課題を解決することができるのでしょうか? サービス提供業者だけでなくユーザーにも冷静なハンドリングが求められます。