あらかじめデザインした設計図にもとづいて、細部に模様をつけるなどしながら立体的にモノを作ることができる3Dプリンター。自動車や航空機の部品製造や医療機器など、その活躍の場は大きく広がっていくと期待されていますが、食品業界でも3Dプリンターを活用する動きがあります。その1つとして、スイスの世界的チョコレートメーカーが、3Dプリントしたチョコレート製品の大規模生産に乗り出しました。
2月14日のバレンタインデーに、スイスのチョコレートブランド「バリーカレボー(Barry Callebaut)」が、3Dプリンターを使ったチョコレートの大規模製造に世界で初めて着手したことを発表しました。同社は「モナリザ」と名付けられた3Dチョコレート製造工場を設置し、そこで3Dプリンターを活用しながら個々のオーダーにも対応したチョコレートの製造を行っていくというのです。ちなみに、モナリザの製品は主に西欧や北米にあるバリーカレボーの7つの工場で作られているそう。
例えば、花びらの形や器の形をしたチョコレートなど、立体的にチョコレートの形をデザインするときは、溶かしたチョコレートを型に流し込んでそれを冷やし固めるという工程が必要です。しかしモナリザの施設では、一度に大量の立体的なチョコレートを作り出せるところが大きな特徴。形や大きさなどクライアントが求めるチョコレートの細部を確認しながらデザイナーがサンプルを作り、OKさえ出れば、3Dプリンターを使って大量生産が可能になるシステムです。
こんなチョコも作れるのか!
今回のニュースにあわせてお披露目されたのが「Flor de Cacao(カカオの花)」。世界的に有名なパティシエのジョルディ・ロカ氏をチームに招き、カカオの花からインスパイアされて作られたという作品です。カカオ豆に見立てたチョコレートの上から温かいチョコレートソースを注ぐと、花が咲くように豆が開いていくというもの。レストランのデザートとしてこんなプレゼンテーションを目の前で披露されれば、誰もが感嘆の声をあげるに違いありません。若い人たちなら、この体験をSNSでシェアしたくなるでしょうね。
また、ゲストの名前や店名を立体的にチョコレートで描いたり、チョコレートのなかを空洞のチューブ状にしたりすることも可能。3Dプリントされたチョコレートを見ると、従来の方法では作れなかった新しいチョコレートの形が広がっていくことを実感できます。
モナリザの3Dプリントチョコレートは、まずヨーロッパの国々を中心に、ホテルや飲食業界を対象にサービスを始めるとのこと。まず最初の顧客として、オランダの老舗ホテルVan der Valk(ヴァン・ダー・ヴァーク)が決まっていることが発表されています。食品業界で3Dプリントの技術の活用が広まれば、料理界全体の芸術性やクリエイティビティが上がっていきそうですね。