長い間、人類は鳥のように大空を自由に飛ぶことを夢見てきましたが、人間が鳥に近づきつつあるようです。最近、BMWが時速300キロ以上で長い航続距離を飛行することができる電動ウイングスーツを発表しました。ムササビのような姿で空を舞うウイングスーツはどんなものなのでしょうか?
電気自動車の技術を結集
ウイングスーツとは、スカイダイビングのように高い崖から飛び降りて滑空する「ベースジャンプ」のジャンパーたちが着用するスーツのこと。手と足の間に特殊な布が貼られていて、これによってムササビのように上空に滞在することができます。
このウイングスーツの電動タイプを世界で初めて発表したのが、ドイツの高級自動車メーカーのBMW。BMWは2013年に電気自動車「BMW i3」を発表して以来、電動機や充電技術などの開発を続けてきています。近年では第5世代のeDriveテクノロジーを使ってクルマを生産していますが、BMWはこれらの技術を結集し、3年をかけてウイングスーツを開発しました。
ウイングスーツの開発には、スカイダイバーとベースジャンパーのプロとして活躍するオーストラリアのピーター・ザルツマン氏が協力。スーツにはBMWデザインワークスがコラボレーションし、カーボン製のプロペラ2つが付いた電動ドライブシステムを身体の全面部分に装着します。プロペラは約2万5000rpmの回転速度で、それぞれの出力は7.5kW、2つ合わせて15kWの出力を備えています。
従来のスカイダイビングやベースジャンプでは、ジャンパーは崖やヘリコプターから上空に飛び出した後、時速100キロ以上のスピードで地上に向かって下降していきます。しかし、このBMWのウイングスーツの電動ドライブシステムを着用していると、まるで小型飛行機が空を自由に飛ぶように、ときには上昇しながら上空を旋回することが可能。最高時速はおよそ時速300キロにも到達するそうです。
オーストラリアで行われたテスト飛行では、上空3000メートルからザルツマン氏が2人のジャンパーとともに上空へ飛び出し、電動ドライブシステムのおかげで正面に迫る崖を見事に高速でよけ、ジャンプを楽しんだのでした。地上から撮影された動画を見ると、ジャンパーが通過した後には飛行機雲ができています。その様子はまるで人間が飛行機になったかのようですが、大事なことは人間が鳥のように空を飛ぶことができるようになりつつあるということでしょう。
ベースジャンプはとても危険なスポーツですが、世界中のジャンパーたちが止めないのは、空を飛ぶというロマンに魅了されているからなのでしょう。そんな彼らが、電動自動車の技術力を活用して、これまで以上に自由に大空を舞う日が近づいているのかもしれません。