ワールド
2020/12/2 6:00

「マスク着用」でも運動のパフォーマンスは落ちないことが判明! でも呼吸が……

新型コロナウイルスの感染予防のため、たとえ運動中であってもマスクの着用が求められる時代となりました。でも気になるのは、マスクを着用して運動をすると身体にはどんな影響が出るのか? この問題についてカナダのサスカチュワン大学が研究し、最近その結果を発表しました。

↑マスクをしてもパフォーマンスは下がらない

 

たとえコロナ禍であっても、健康を維持するためには運動が大切。そして感染予防のためには、スポーツジムでのトレーニング中や自宅周辺のランニングの最中でも、マスクの着用が必要です。しかしマスクをつけながら激しい運動をしていると、十分な酸素を吸えないうえ、二酸化炭素を過剰に摂取してしまうなど、不安が生じるかもしれません。そこでサスカチュワン大学の研究者は次のような実験を実施しました。

 

健康な男女各7名が室内でエアロバイクをこぎ、一定のペダルの速さになるまで6~12分間運動を継続します。研究者たちは運動中の血中酸素濃度や筋肉の酸素レベルを測定し、この作業を外科の医療用マスクを着用した場合、3層の布製マスクを着用した場合、何もつけない場合の3パターンで行いました。

 

その結果、医療用マスクと布用マスクを着用していた場合は、マスクを着用しなかった場合に比べて血液中と筋肉中の酸素量は若干少なくなったものの、その影響は最小限に抑えられていることが判明しました。マスクを着用しても、運動中のパフォーマンスに悪い影響を与えるエビデンスは見つからなかったというわけです。

 

パフォーマンスは落ちないが、心肺への負担は上がる

しかし、実際には多くの人たちがマスクをつけながら運動すると息苦しさを覚えて、マスクをつけていないときに比べると疲れやすくなると感じていることでしょう。ある別の実験では、ランナー10人がマスクをした状態とマスクをしない状態でトレッドミルを走ったところ、マスクを着用すると、着用しなかったときに比べて1分間に肺を出入りする空気量が24%減少し、酸素摂取量も13%減少することがわかりました。酸素摂取量では大きな変化が見られませんでしたが、マスクを着用すると呼吸の回数が増加して、酸素の摂取を補っていると考えられます。つまり、マスクを着用して運動する場合、運動強度が上がるほど心肺への負担は増加すると言えるでしょう。

 

これら2つの実験結果は相容れないように見えます。さらなる研究が必要でしょう。しかし運動中にマスクを着用すると、新型コロナウイルスの感染を防ぐことに役立つと考えられる一方で、少なからず呼吸にも影響が出るようです。このような長所と短所をどう捉えるかは人によって異なるかもしれませんが、科学的な知識だけでなく、身体の声を聴くことも大切でしょう。